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退治5

 クライフの被害者然とした叫びが、現状の認識を強くする。


「そういえば、当事者の方はどうなっているんだい?」

 ジーナの言葉で視線は一箇所へ。


「・・・・・・・・・・・・」

 誰も声を発さねぇまま、段々と暗さに慣れて輪郭を捉え始める目が、事象を観測する。


『・・・ぜぇ、ひゅー・・・ぜぇ、ひゅー・・・』


 それは声じゃなく、喉から出る音だった。

 鱗という鎧を以ってしても、防げるものには限度があって、今回のソレはどうやら限度を大きく超えていたようだ。

 明るくねぇから詳しくはわからねぇが、鱗の色がさっきまでより鮮やかになってる気がする。茹でドラゴンにっつー目的は達せられたのかもしれねぇ。


「流石に頑丈だね。改めて生物としての違いを目の当たりにした気分だよ」

「一歩間違えば俺もこうなってたかもしれないんだぞ、ゼネス!」

「あぁ、悪かったよ。ただまぁ、いい光景が見れただろ?」

「僕はその・・・すみません。あまり実感が湧かなくて」


「皆さんは教皇様とは縁遠かったですからね。私は胸がスッとする思いです。ですがそれよりも、結界が破裂してしまったことの方が悔しいですね。折角ゼネスさんに頼って貰えたというのに・・・」

「折角って言うなら、結界を使ってもうちょっと戦わせてくれても良かったのに! ってくらいかしら? こんな幕切れじゃ付いて来た意味があんまりないでしょ? 活躍したって、錯覚でも思わせてほしかったわね!」

 各々が感想を口にしながら、取り囲むようにドラゴンの周りへ集まる。


「で、どうするのよ? アンタが満足するならアタシは別にいいけど、回復でもさせてもう一回殴る?」

「ええ⁉ ゼネスさんはそんなことしませんよ! ねぇ⁉」

「エリック。それはアンタが知らないだけよ。ゼネスの拷問は回復させての繰り返しが基本なんだから。一緒に旅をしてた時だってしょっちゅうやってたんだから」

「そうなんですか⁉⁉ なんでそんなことを⁉⁉」


「そんなの気晴らしに決まってるでしょ。卑怯な奴はどこにだっているし、改心させようなんて時間の無駄なんだから。痛めつけて情報をいただいて、報復をさせなければそれでいいのよ」

 で、どうするの? と繰り返しにならねぇよう目だけで聞いてくるアンナ。


「帰りと後始末まで考えりゃぁ回復してまでってのは、利益にはならねぇな。結界も半分以下・・・いや、地面の下までは貫通してねぇから、半分はあるのか。まぁ誤差だが」

「結界ならまだ私が――‼」

「それも含めての勘定だ。万が一・・・なんてのは御免だからな」


 五感の消失や精神の乗っ取りは対策できたわけじゃない。

 色々と偶然や助けがあって、一時的に克服したに過ぎねぇ。

 それも俺だけの話。


 回復した結果、冷静さを取り戻して仲間を人質にでもされりゃどうなるか。

 あっけねぇ幕引きだったとしても、ここらを落としどころにした方がいい。


「冥途の土産だ。恨み言ぐらいは聴いてやる」

 荒い呼吸の不透明な方ではなく、一見では外傷のない半透明な方へ訊く。


「・・・なぜ、なぜ我ばかりが、このような・・・・・・・・・」

「最初に教えてやっただろ。ここには復讐に来たって。テメェがやったことのつけが回って来たんだよ。自業自得とも言うな」

「我は・・・間違ってッ、など! おらんッ‼ 神はッ救い給う者もの‼ ただ与え、それだけで・・・見て見ぬふりをする、そんな! ありえぬ‼」


「だからお前は救えねぇんだよ。自分さえもな。そんな神がいるか?」

「だ、まれ‼ アレを認識できぬ、人間風情が! 知ったような、ことを」

「知らねぇからいいんだよ。神なんてのは責任を投げつけるだけの存在なんだからな」

 他の誰かのことは知らねぇが、少なくとも。俺は今でも、そう思っている。

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