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退治4

 水の温度が上がると水蒸気になることは知ってる。

 サウナ風呂なんてもんのおかげだ。

 だから蓋はした。


 白と黒の二重強化結界。

 フェリシアが作った本体を中央に、周囲8マスを混合結界――安い複製品みたいな魔法で引き延ばし、それで前後左右と上下の六方を固める。

 外側は隙間を埋める分さらに大きくなったが、それもご愛嬌だろう。


 エリックが出した水の牢獄がドラゴンを窮屈にしてなきゃ、もっとデカくする必要があったかもしれねぇ。

 そんな、くだらねぇことを考えながら、安易に疑似太陽を水の中へ。

 ――瞬間。


 ジュッ‼‼ という音は、確かに聞こえた気がした。

 だが、それを上回る音が響く。


 ボンッ‼‼‼


「あッ‼‼ つッ‼‼‼」

 転がるように退避してきたクライフの悲鳴。


 辺り一面は煮え滾る水蒸気に包まれていた。

 二重の強化結界は跡形もなく消し飛び、沸き立つ白い霧と飛び散る飛沫が場の支配者となった。


 慌ててクライフの回復をしながら、氷の板を作り温度を一気に引き下げる。

 出来た薄い氷の板は次々に、あっという間に溶けて水になる。

 沈黙のまま1分ほど。

 霧状になっていた熱の塊は床に広がる水の大陸へと姿を変え、そこで漸く声が上がった。


「ゼネス! 危ないだろう! なにをしたんだ‼」

「・・・・・・さぁなぁ?」

「結界が見えてたぞ‼ お前の仕業以外に、なにがあるって言うんだ‼‼」

「奇跡でも起きたんだろ?」

「だとしたら神の怒りだぞ‼ アレは‼‼ 正直に言え‼ こっちは茹で上がるところだったんだからな‼‼」


「落ち着けよクライフ。茹で上がって真っ赤になってるぞ」

「だから誰のせいだ‼‼」

 真正面で被害を受けたという非難が詰め寄る。

 実際には顔色なんざ見えちゃいねぇが、たぶん顔は真っ赤で間違いない。


「それで、君は一体何をしたんだい?」

「・・・茹でドラゴンにでもしようかと思ってな。覆ってる水温度を上げただけだ」

「なるほど、拷問のつもりだったと。熱源には何を使ったんだい? 青い炎の残りかい?」

「・・・いや、天井の疑似太陽を」

 一応、指差してはみるが。光源を失い暗くなったせいで目が利かねぇ。


 それでもジーナは天井を見上げ、

「君って奴は・・・・・・稀に想像を遥かに飛び越したことをしでかすね」

 すぐに俯き、掌で額を支えるようにしてペチと音を立てる。


「いいかい? 水は温めると水蒸気になるんだ」

「知ってるさ。だから結界で蓋をしたんだろ? 熱が漏れねぇように」

「それが爆発の原因だね。水と水蒸気では体積が大きく違うんだよ。それを小さな空間に閉じ込めて、水蒸気の逃げ場を失くしてしまったせいで結界が風船のように破裂してしまったわけだ」


 軽い拷問のつもりだったんだが、まさか強化結界が弾け飛ぶとはな。

 混合結界みたいな安い複製品じゃなく、きちんとフェリシアに頼めばいけたか?


「ゼネス! なにを考えてるかわかるぞ‼ でも、そうじゃない‼‼ まずは俺に謝るが先じゃないか⁉⁉」

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