対峙8
結果から言うべきなんだろう。
他者の魔力を使用しての空間転移は・・・成功した。
成功してしまった。
なんの問題もなく、いとも簡単に、あまりにもあっけなく。
実験はクライフの位置を移動させる形で試した。
ジーナは何かとブーたれて被験体になろうとしたが、付き合い一番長い奴が一番使いやすいのは、あえて言う必要もねぇはずだ。
アンナと同様に引き寄せる形で、その背中を呼んだ。
姿勢の違いか、勢いの違いか、その背中にぶつかることはなく。
久方ぶりに間近で見るその背中は、記憶にあるそれよりも随分と大きく、頼りになるものへと成長していたことをこんな形で実感するとは。
急に視界がおかしくなったからだろうが、驚いて周りを見る時の表情は昔と変わらず、なぜだか無性に笑えたが・・・。
敵からすりゃぁ不快極まりなかったんだろう。
斬り付けられるような空気と眼力が爆ぜるように見開かれていた。
勝敗を決定付ける事象。
この後に待っているのは勝負でも、戦闘でもない。
蹂躙だ。
どこから来るか、それどころじゃねぇ。
来るか来ないかすらわからねぇのに、警戒だけはしなきゃならねぇ。
そんな状態で戦いになるか?
それを悟ったからこその表情だった。
噴火のため、溜めに溜めていた怒りの感情が、引き潮の様に流れ去り――代わりに、湧き上がる怨恨の情念が満ち潮の様に押し寄せる。
悲壮、後悔、不満、諦観。
入り乱れ、混ぜ合わさり、納まりきらない感情の波が渦となっている。
ぽっかり開けられた口は暗く、なにもかもを吸い込んでしまいそうなほど、ただただ茫然と待ち続けていた。
垂れ流される情報は相互を破壊する。
ドラゴンの情緒以外になにを破壊したのか?
それはもう、
「素晴らしい‼‼ やはりっ! やはり君は私にとって・・・ッ‼‼ ああ、かけがえのない存在だ‼‼」
変態の興味を、あるいはその壁に違いない。
「さあ! さあ、試してみようじゃないか‼ なにが、どこまでできるのか‼ 君の限界を‼‼ そして、その先には何があるのかを‼‼」
狂気に満ちた目をしていた。
対峙しているのがドラゴンだということも忘れ、標的に丁度いい耐久性の高い的として認識した目をしていた。
命であることも、思考の対立も、意識の有無さえ。
それら全てを踏みにじる略奪者の目を・・・・・・していた。
確かに結末は決まった。
おだてられて、調子に乗ったみたいになるのは不服だが、やらないなんて選択肢は存在しねぇ。
それならいっそ。
突き抜けた終わりを目指そう。
神だとか、世界だとか、そんなつまらねぇもんのために奪われたすべてがなんだったのか。
圧倒的に捻じ伏せ、理解させた上で終わらせよう。
納得なんざ出来ねぇだろうことを嘲笑って、蔑んで終わりにしよう。
疲れたって感想だけを抱けるように。
微塵の感情も残らねぇように。
跡形もなく、消してしまおう。




