盾付き
「父上が嘘をついてたっていうのかよ?」
「さぁな? そんなことを言えるほど、俺は伯爵閣下のことなんざ知らねぇよ。ただ、閣下も貴族社会に生きてるんだ。嘘も建前も、世辞だって使い分けてるだろうよ」
貴族社会ほど嘘吐きの多い場所などない。
そこでただ1人。嘘もつかず、真っ直ぐにやっていられるか? と言えば、限りなく不可能に近いだろう。
だからと言って、絶対に嘘をついてるとは言わないが、
「まともな親なら、子供の憧れをむやみに壊しはしねぇだろうし・・・なにより、謁見の間で見たんなら、その時は本当に立派に見えたのかもしれねぇ」
状況や立場によって人の態度は変わる。
救国の英雄が、敵国では悪辣な殺人鬼だと言われるようなもんだ。
「これを着なけりゃ、アンタは俺を冒険者とは認めないんだったな?」
「別にそれじゃなくても構わねぇよ。ここのおっさんが持ってきた一押しが、それだったってだけだからな。まぁ、他に選択肢があるとも思わないがな」
ジェイドを見て選んできた鎧だ。
当てつけでもなければ、性能面では一番のはず。
体が成長しても、調節だけで着用し続けられる作りだから、でもあるだろうが。
「・・・・・・・・・・いいさ。着てやるよ」
しばらく黙っていたジェイドが呟く。
「けど、諦めるわけじゃない‼ 俺は、俺が望んだ冒険者になる‼ そのために! アンタをまず黙らせる‼ それだけだ‼」
「なんでもいいさ」
奥で待機していたおっさんに顎で指す。
くだらない昔話の間にある程度の調節を終えていたのだろう。
手早くジェイドにバリアントアーマーを着せていく。
残りのパーティーメンバーが感心してそれを見ている間に、俺は入り口付近に並べられていた商品の一つを手にして、戻る。
「どうだ? 着心地は?」
「最悪に決まってる・・・」
ブスッとした態度で返しているが、見ている分にはジャストフィットって感じだ。
「真面目な話だ」
「・・・悪くはない」
「そうか。そんならいいんだ」
おっさんが満足げに頷く。
「これも持ってみろ」
「おいおい勝手に・・・」
「試着だ。別に構わねぇだろ?」
「そりゃぁそぉだが、デカすぎねぇか? そいつはよぉ」
鎧を着たジェイドの前に持って行ったのはタワーシールドだ。
「バランスとってんだよ。軽い鎧に軽い盾じゃぁ、盾役にならねぇだろ?」
「それにしたって限度があらぁな? 身体がスッポリ隠れちまうじゃねぇか・・・どうやって持ち運ばせるつもりだ?」
「背負うなりなんなりあるだろ。専用の魔法鞄を作るでもいいし、そこはどうでもいいんだよ」
「そんなこと言ったって・・・なぁ? オメーそれどうすんだよ?」
おっさんとの口論から一転、急に聞かれたジェイドだったが、
「どうって・・・これ・・・」
「そぉだよなぁ? タワーシールドっても、他にも色々置いてあんだ! わざわざこんな分厚い鉄板みてぇなもんじゃなくても・・・」
「理由もなく選んでねぇよ。ある程度重量があって、下が平らならそれでよかったんだ。ただ、品揃えの悪いこの店には、これ以外はなかったってだけだ」
「そぉいわれりゃぁそぉだがよぉ・・・。それでも重量10㎏越えはやりすぎだろぉ?」
「あの鎧を・・・っつーか、いつか重鎧を着るための筋トレだとでも思えばいいだろ」
ジェイドが着ていた鎧はあいつの体に合ってないだけで、重鎧ではない。
本当に自由騎士に憧れていて、いつかそういう鎧を着たいと思っているなら、これぐらいはやってくれるだろう。




