鎧達
「なぁ? これどうする?」
「うーん・・・どうしようか?」
とある街道のど真ん中。
そこに座り込む重装の鎧。
辺りには背嚢とその中身らしきものが散らばっている。
明らかに通行の邪魔になっているが、
「おい! なにやってんだ? こんなところで!」
「・・・」
重苦しい鎧をゆすってみるが反応はない。
代わりに、
「うぉわ‼ 酒臭っ‼」
むせ返るようなアルコール臭が広がった。
今は昼だぞ?
クライフと目を合わせて考えるが・・・、
「ほっとくか」
「ダメだろ⁉」
面倒だから関わり合いになりたくないんだが・・・。
クライフ的には放ってはおけないらしい。
「クッソ‼ なんでこんなに重いんだよ‼」
俺は鎧を引きずって端に避け、クライフは散らばっていた荷物を集めて、その隣に置いた。
「つーか、なんで俺が鎧側なんだよ‼ お前がほっとけねぇっつったんだからお前が運べよ‼ 楽すんな‼」
「俺は強化魔法がまだ使えないのに運べるわけないだろ! わかってて言うなよ‼」
「だったら出来ねぇことを言うんじゃねぇよ‼ てめぇで出来ることをやれ! 教官がいつも言ってんだろ‼」
「俺達はパーティーだ‼ 2人でなら出来たじゃないか‼ 面倒だからって出来ることから逃げるな! これだって教官の言葉だぞ‼」
いがみ合う俺達に水を差したのは、
「いかんなぁ? 酔ってる人間の側で騒ぐのはいかんぞぉ? なんてったってぇ・・・」
酒臭い鎧だ。
元凶がしゃべりだしたことで俺達は黙り、ヘタに溜めた言葉を待ったが、
「吐くからなぁ?」
碌なもんじゃなかった。
「で? こんなところでなにしてやがったんだ? 邪魔だろ?」
「・・・・・・」
「なにかあったんですか?」
「いやぁ・・・なに。頼まれごとでこの近くに用があったんだが、報酬がまたうまい酒でなぁ! だっはっは! 飲み明かした後、どうなったんだったか?」
「つまり、なにもなかったんじゃねぇか‼ ふざけやがって!」
ただ酒飲んで道端で寝てただけかよ‼
「まぁいいじゃないか。なにもなかったんなら」
「そうだぞ? 厄介ごとなんてのぁないに限る! だぁっはっは!」
「てめぇがその厄介ごとなんだよ‼」
「落ち着けって・・・。それで、荷物の中身が散らばっていたんですけど、なくなったものとかないですか?」
「あぁ! 大丈夫だろぉ! たいしたものは持ってなかったしなぁ‼」
せっかくのクライフの言葉にも適当に答えるだけだ。
「せめて確認ぐらいしろよ! 目ぇついてんだろ⁉」
「・・・・・・・・・」
「聞いてんのか⁉」
「・・・・・・・・・・・・」
「おい、もうこいつ無視でよくねぇか?」
そっちがその気なら、こっちだって相手にしてやるいわれはねぇ。
だが、
「でも・・・ここで放り出して、その後になにかあったら嫌じゃないか」
「そこまでしてやる義理もねぇと思うがな」
「そぉいうなよぉ。合縁奇縁、絶つも手繰るも己次第。ってよく言うだろぉ? がっはっは!」
「聞いたことねぇよ‼」
「あ~あ~・・・さっきっから隣でキンキン言いやがってぇ・・・さっきも言ったが、吐くぞ?」
「うるせぇんだよ! 寄るな‼」
クソみてぇな脅しをかけながら、もたれかかってくる。
しかもその状況で、
「うっぷ・・・」
とか、ふざけるのも大概にしろってんだ。
「お・も・てぇ・し! 寄るなっつってんだろ‼」
だから、覆いかぶさろうってところを全力で蹴り上げても許されるはずだ。
顎を狙った一撃だったが、兜のせいでどこに当たったかは定かじゃねぇ。
それでも、全身鎧はそのまま後ろに倒れて、仰向けに寝っ転がりながら、
「おおう? あぁ~いい蹴りだっはっはっは!」
などと、まるで効いてないと言わんばかりだ。
「そうか? だったらもっとくれてやるよ‼」
「もういいだろ⁉ やりすぎだぞ‼」
クライフが止めても、ムキになって鎧を踏み続けていたら、
「貴様ら! そこでなにをしている‼」
後からやってきた別の鎧に見咎められた。




