聞いただけ
「まぁ・・・このおっさんが作った鎧の方がマシだってことだ」
「結局呼ばんのか‼ なんのために聞きやがったんだ⁉」
なんつーか、こう・・・ノリ? だ。
言ったら負け、みたいな。
「いいじゃねぇか、別に。んなことより、適当に見繕ってくれよ」
「よかねぇっての! 装備は用意してやるがぁな!」
ぶつくさ文句をたれながら引っ込むおっさん。
数少ねぇ客にそんな態度だからうらぶれてんじゃねぇのか? この店。
なんてな。
「どうしてもっつーんなら、その装備は売らなくてもいい。だが最低限、今の装備は買っておけ。じゃなかったら依頼になんざ連れてけねぇからな」
「・・・・・・・・・」
ジェイドは黙ったまま。
キューティーはジェイドを気にしつつも近くで心配そうに見ているだけ。
ケイトは気まずいのはわかっているが、あえて口に出すこともないのか、遠めで様子をうかがっている。
そんな場の空気に耐えられなかったのか、エイラが沈黙を破る。
「それで、なぜ装備なんですか? いや、必要なのはわかるんですけど・・・」
それは、足りないものはなにか? で、ここに来たことの意味を聞いてるんだろう。
「バランスだ」
「バランス・・・ですか?」
「昨日、俺がケイトを狙った時のことどれぐらい覚えてる?」
「一部始終、覚えていると思いますけど・・・?」
「他はどうだ?」
「わ、私は魔法に集中していたので、そんなには・・・」
「私は途中で転ぶところまでは覚えていますわよ! 起き上がる前に勝負が終わってしまいましたので、残念ながら決着の瞬間というのは目撃していませんわ!」
「・・・・・・・・・」
ジェイドは変わらず黙ったままだが、顔だけはわずかに苦々し気だ。
それは醜態をさらしたからか。それとも、体勢を崩しているうちに終わったせいで碌に記憶がないからか。
「それなりに覚えてるなら・・・なんで俺を止められなかったか、わかるか?」
「それは・・・実力の差じゃないんですか?」
「それはそうだが・・・。そんなこと言ったら、お前らは弱い者いじめしかしないのか? ってことになるだろう?」
それは最近の俺だが・・・俺はもう冒険者じゃないしな。
冒険をしていなくても問題はない。
だが、これから冒険者になろうって奴らが、実力の差があるから勝てませんでした。で終わらせてちゃ話にならねぇ。
モンスターと人間の差なんざ歴然だしな。
それこそ桁違いだ。
それを覆すために必要なのは、
「どうすればよかったのか。自分達に出来たはずのことを考えてみろ。まず、なにがあった?」
「最初に私が前に出ましたわ! そこであっさり抜けられてしまったのですけれど・・・」
「なんでそうなった?」
「それはあなたが‼ 急に増えたからですわよ! なにをされたのかはわかっています! ですが・・・やっぱり目の前でああいったことが起こるとビックリしてしまいますの」
「もう一度、同じ状況になったらどうする?」
「今度は両方切って差し上げますわ!」
「それも一つの手だな。そうすりゃ一瞬とはいえ時間を稼げただろう。だが、昨日の場面はそれでいいのか?」
「どういうことですの?」
「その一瞬があれば勝てたと思うか?」
「それは・・・。では、どうすればよかったと?」
「それを考えるのが今だろう?」
「答えを聞いているのですから、教えてくれてもいいじゃありませんの‼」
プリプリ怒るキューティーに、それをしたら困るのはお前らだって、言ってやろうかと思ったが、
「1人で飛び出さなければよかった。ですよね?」
エイラが一つの答えを出す。
「そうだな。それが一番わかりやすいだろう。お前らは4人いて俺は1人だったんだ。折角数の有利があるのに、それを捨てるのはもったいねぇ。時間を掛ければ、他に仲間もいたんだ。どうなってたかはわからねぇよな?」
「ということは・・・バランスっていうのは連携のことですか?」
「半分はな」
「半分?」
「もう半分は役割だ」
「役割・・・」
ピンときていないのか、もしかして自分が何か悪かったんじゃ? と考え始めたようだが、そうじゃない。
「お前らのパーティーは前衛2人、後衛2人でバランスがいいように見えるが、役割で見るとそうでもない。前衛2人が攻撃、後衛2人が補助・攻撃。明らかに攻撃によりすぎてる。こんな編成じゃ電撃戦ぐらいしか出来ねぇよ」
ここでいう電撃戦は急襲戦や強襲戦のような奇襲戦法のことで、ケイトが雷系統の魔法を使うからとかではない。
「だから、ジェイド。お前には盾役になってもらう」
その言葉に呼応するように、
「よぉし。こいつを着てみろ!」
裏からバルシムが戻ってきた。




