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しょうたい

 融合強化。

 元々イーター用に使っていたが掛け直す。

 効果切れが怖かったってのもあるが、イーターの移動速度が異常だったせいでもある。


 イーターの移動法は生物の中でも異端。

 回転することで前進するドリルのような機構で移動する。

 その際に鋭い歯で地中を掘り進み、口に入った物質をすり潰して摂取する。

 だからこそ、移動の速さはそのまま、回転の多さに繋がる。


 岩なんかならともかく、人体で高速回転に当たろうものならどうなるか―――なんざ考えたいとは思わねぇ。

 だから強めの強化に掛け直した。


 幸い・・・っつーべきか、その直後に1匹のイーターが飛びついてくる。

 グワッ‼ って感じの光景が、無音で繰り広げられたおかげか。

 回転するイーターの動きが事細かく、鮮明に、そして緩慢と見て取れた。


 不思議なほどに恐れはない。

 大きく開いたイーターの口には、鋭い歯が幾重にも輪を成して並ぶ。

 しかし、1つ1つが独立して見えるまではいかず、半端に白い線がブレる。それはイーターの体が相当な速度で回転していることを雄弁と物語っていた。


 だってのに、湧き上がる感情はなく。

 ただ漠然と受け入れていた。


 光が消え去り、闇に包まれるまでは一瞬で。

 それでも、切り刻まれるような痛みが襲ってくることは終ぞなかった。


 飛びついてきたのは1匹。

 よっぽどのことが無けりゃ全員が1匹の体内に飲み込まれたはず。

 だが、それを確認する手立てがなかった。


 腹の中に光はなく、音は聞こえず、手は埋まったままだ。

 そういう意味じゃエリックとフェリシアは確実に居るな。


 さて、なにを考えるにしても・・・このとんでもねぇほどに不愉快な感覚、振り回されてるような回転感とでも言うべきソレをどうにかしねぇと。

 放っておくと目が回って嘔吐合戦になっちまう。

 そんなことを考えた矢先、結界が張られる感覚があり、続くように小さな炎が灯ると同時、結界内に気流が生まれ、押し出されるように身体が浮かぶ。


 なるほど、イーター内部と物理的な接触を断つことで回転の干渉を防ぐか。

 風を生み出すのに得意な炎の魔法を使うことで気流の安定と、ついでに光で視界まで確保するとは、中々の芸当だ。しかも、お互いに提案やら相談も無しにこの連携。成長を感じずにはいられねぇな。

 ま、すぐに止めさせるんだが・・・。


 俺は急いで両手を離し、エリックの頭を叩いてから、呼吸ができなくなると身振り手振りで伝える。

 イーターは口を閉じねぇものの、それがゆえに空気は鼻から常時吸い込む生態をしている。

 つまり食道と気道が完全に分かれているため、俺達が取り込まれただろう胃袋には空気がそれほど入ってこねぇ。

 0じゃねぇが、燃やして足りる保証がねぇ。


 エリックもすぐに気付き、炎を消す。

 一応、全員の姿が確認できた分、無意味だったわけじゃねぇ。

 しかし炎を消した影響か、気流の制御が乱れる。


『図らずも、多くの情報が手に入ったね?』

 どうしたもんかと思案するより早く、ジーナが引き継いだのか、気流安定と競うように脳内に声が響く。

 これは龍王との連絡に使った魔法か。


『折角だし、それらを整理しながら、少し考えてみようじゃないか』

 真っ暗な中、俺達はその声を確かに聴いていた。

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