同じ場所で
「ひどいじゃないか、私だけ除け者にしようだなんて」
抗議するのはもちろんジーナだ。
「仕方ねぇだろ。部外者なんだから」
「今からでも、私を誘ってもいいんだよ?」
「断る」
「クライフ君。君からもなんとか言ってくれたまえ」
「それは無理だ。ゼネスから誘った相手はいないからな」
「そうだったのかい? 私はてっきり・・・」
言いながらジーナは視線をアンナ達へ移す。
「なによ」
「ゼネスが実力を見て選んだメンバーなのかと思っていたのだけれど――」
「悪かったわね! そうじゃなくて! っていうかね‼ あの頃の私は10歳とかそこらよ⁉ 実力なんてあるわけないでしょ‼ こいつらだってC級だった・・・いや、あの時にはもうB級になってたんだっけ?」
「そんな子供をクライフ君が? 皇族としては趣味が悪いね?」
「昔っからだけど、アンタ失礼よね。ただ私が勝手について行ってたのよ‼ 私のママは下町のドンって呼ばれてるぐらい顔が効くから、駆け出し冒険者なんかは無碍にできないの‼ それをいいことに私が付いて回った結果が、なし崩しでの仲間ってだけ‼」
「はは! 懐かしいな。俺達も身分に頼らないと強がってたせいもあって、何かとお世話になったんだよな」
「アンタ達、強いじゃない! 認めてあげるわ! だから私も連れて行きなさいよ‼ だったか? なに言ってんだと思ったよな。いつの間にか一緒に依頼先にまで付いてくるようになって」
「うっさいわね! でもよかったでしょ⁉ 今までこうやってやってこれたんだし・・・まあ? ちょっとは足を引っ張っちゃったかもしれないけど! ホントにちょっとだから‼」
フン! と腕を組んで視線も外すが、怒っているわけじゃねぇ。
ただちょっと恥ずかしがってるだけだ。
「ならなんで私はダメなんだ? 押しの強さは負けてないはずだが・・・」
ブツブツと首をかしげるジーナがさらにエリックへ訊く。
「僕ですか? 僕も似たようなものですよ。あ、でも。アレは一応誘ってもらったってことになるんですかね? 学園が全部じゃない。見たい景色ぐらい自分で決めていいんだぞって」
「だからって、冒険者に成れっつった覚えもねぇけどな」
「不安定な職で、先行きが不透明なのは今も変わらずだしね。優秀が故に、標的とされていた将来有望な若者をそんな道に引き込む程、俺達は悪い大人じゃなかったはずさ」
「学園では大暴れでしたけどね」
「主に無関係だったはずの奴がな」
「しかも素の怪力で」
「しょうがないじゃない。ムカついたんだから」
「いいとこだけ持っていきましたよね。おかげで、なんにもしてないのにスッキリしちゃって・・・」
「スッキリしたんならよかったじゃない! そうでしょ‼」
必死で話を流そうとするアンナの横から、フェリシアが。
「なし崩し度で言うのならば、私が一番でしょうね」
なぜかは知らねぇが胸を張って言う。
「なぜなら私は仲間になる予定すらありませんでしたから」
「急に手紙一つ持たされて送り出されたんならそうだろうよ」
「あれには驚いたね! 事情を聴いて理解はできたけど、教皇様からそんなお願いをされるとは、夢にも思っていなかったから」
「現象としてはエリックさんと同じで、二番煎じになるのでしょうけど」
「僕よりひどいよ。修道学校って寝る時まで一緒なんでしょ? 僕は教室と授業中くらいだったから」
「爺さんも手は尽くしてたらしいんだがな。つっても、息子の件もあって、どうしようもできなかったんだと。送られてくる手紙に毎回、謝罪を載せるぐらいには心を痛めてたはずだ。本気かは知らねぇがな」
今でも浮かぶのは小憎たらしい笑い顔だ。
してやったりを言葉にしなくともわかる表情。
そんなだから、嘘か本当かわからなくなるんだ。




