答えが違う?
「そもそもだよ? 責任なんて君だけのものじゃない。君の呼びかけ、提案、希望なんでもいいんだけれど、それらに従ったからといってだ。その成否の全てを君が背負おうなんてこと自体が間違いなのさ。なぜならば、君に従うという選択をした時点で、選んだ側にも責任が発生するからだ。君の口癖じゃなかったかい? 自分で選んだことだ」
「それで納得する奴は――」
「居ないかもね? 親兄弟、配偶者に友人。その他、権力者から関係のない誰かまで。生きているだけの者達は、君に責任を押し付けるのかもしれない。けどね? 私達はそうじゃない。決して、君だけの責任なんかにはしない。己の不甲斐なさを恥じ、君に謝ることはあっても。絶対に君のせいだなんて糾弾したりしやしない。君のことを信じ、大切に思っているからだ」
「だったとしても。そこで俺が死んじまってたら、そのあおりを受けるのは生き残った人間だ」
「君に伴侶はいない。当然、子孫も居ない・・・居ないでいいんだよね?」
「ああ・・・だから、被害を受けるとすりゃぁ」
「君の兄。グラン辺境伯になるだろうけど、君の兄は。君の選択を糾弾すると思うかい?」
「しないだろうな。だからこそ――」
「迷惑を掛けたくない? ハッキリ言おう。余計なお世話だよ・・・それは。家督を継いで爵位を持つ身になれば、非難の1つや2つは常にまとわりつく。そこにたった1つ増えたって大して変わらない。もっと言えば、迷惑ぐらい掛けられたって構わないと思っているさ」
「なんでそんなことがお前にわかる?」
「わかるとも! なんていったって、それこそが繋がりというものだからね。頼られたいのさ。他の誰でもない、君に。ただ君に惹かれるだけの私でさえそうなんだ。実の兄ともなれば尚更だ。ずっと、待っていたに違いないね」
「・・・・・・・・・」
「信じられないかい? けれど、事実さ。頼りっぱなしの人間は、いつも頼っている相手に必要とされたくなるんだ。一方的でいたくないというエゴだけれど、そのための準備ばかりしていたりするのさ」
「頼られた覚えはねぇが・・・」
「何も必要としない人間に求められたいと思うのも、同じ原理だよ。君にだって覚えがあるんじゃないのかい? 何の不自由があるんだと思うような相手から求められた時の昂揚に」
皇族であるクライフから冒険者として、一緒に旅へ出ようと誘われた時のことを行ってるのか。
確かに俺から見ても。アイツは有り余るぐらいのもんを持ってはいたが、別に全てを持て余していたわけじゃねぇ。
足りないものがあることも、それを俺が持っていることも知ってた。
だから嬉しくはあったが、必然でもあった。
アイツには他に方法が――、
「なかったと思うかい? 本当に?」
「・・・あったってのか?」
「気になるなら本人に聞いてみるといい。聞き覚えのある足音だろう?」
言われて。振り返るより早く、
「そんな大きい声で、いったい誰の話をしてるんだ?」
扉の音を伴った親友の声が届く。




