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探し出して決せよ12

「リミア! リミアッ‼ 聞こえてるか⁉」

 名前を呼んで、肩を叩き、揺さぶってようやく。

「えっ・・・? はい、なんでしょうか?」

 1歩も2歩も遅れた反応が返す。


「これから何をするのか・・・わかってるか?」

「それは――ですから、あの空間をどうにか・・・」

 その答えを聞いて、1人取り残されていたことを周囲が知る。


「魔力酔いだな。潜入、脱出、侵攻、逃走、迎撃、戦闘。リミアはその全部に参加して魔法を使い続けた。故郷が相手ってことで緊張もあっただろうし、何により出力を絞ってなかったからな」

「そっか・・・そうよね。身近な相手が敵になるなんて言われたら緊張もするわよね。力んでもおかしくないし、そうでなくても頼り過ぎたんだわ」

「リミアの魔力量はそれなりに多いからな。本人の性格からいっても、下手に遠ざけると余計にこじらせる可能性もあった以上、誰が悪いとは言わねぇけど、魔力酔いで意識の断絶を起こしてるなら作戦に組み込むのは不可能だ。途中で動けなくなったら終わりだからな」

「流石に反論はできないわね。他のやり方を考えないと・・・」


「いえ! 私ならまだ――」

 ハッとして必死に言葉を紡ごうとするリミアを、

「違うのよ。ごめんなさい。私達のせい。リミア、あなたのせいじゃないの。私達がもっとしっかりしていれば――・・・ううん、私がもっと魔法が得意だったらよかったのよ」

 エイラが慰めるようにして有無を言わせない。


 駄々を超える子供をあやすように。目線を合わせて、肩に手を置きながら、次第に抱きしめて制す。

 手慣れた母親の風格さえ感じさせる。

 そこまでされちまったらリミアとて言葉を紡げない。元より、状況が呑み込めていない状況で、殊更に情報を追加されれば仕方もないだろう。


 何を否定すればいいのかもわからなくなったまま、魔力酔いに苛まれれば意識など保ち続けらるはずもなく。

 リミアは立ったまま眠るように沈黙する。


「恐ろしいほど手馴れてるな」

「そりゃあ頑固な子の相手は昔からしてたもの」

 人に歴史ありとは言うが、この年齢でそれを感じさせるとは。

 しかし、自信の表れていた薄い笑みは、向きを変える頃には苦労の表情へと移っていた。


 考えていた案が使えなくなった現実に。

 それと、多分・・・もっと魔法が得意だったらよかったという本音に。

 歪められてしまった。


「ケイト! 空間の調査・・1人で出来ないかしら? 2つの魔法を使えるように訓練してたでしょ? それも相性がいいからって水の魔法で」

「魔法を使うだけなら、出来る。でも、繊細な感覚までは探れない。反応を調べる所まで1人でなんて、今の私じゃ無理。それに魔力も足りなくなる」

「そう・・・よね。リミアが魔力酔いになったんだから、ケイや私達だって――でも、それじゃあ・・・・・・」

「落ち着いて、エイラ。きっとまだ方法はある。それにエイラだけのせいでもない。私やジェイドだって、ヨハン君も。自分の責任だと思ってる」


「あの、ケイト? 私の名前がありませんけれど、どういうことですの?」

「キューティーはそういうこと気にしないでしょ?」

「失礼じゃありませんの? 私だって! もっと私を頼っていただければ‼ と思っておりましてよ⁉」

「感じてるそれは責任じゃなくて不満だと思う」

「そんなはずありませんわ‼‼ そんなはずありませんわ‼‼」


 すかさず忍び寄ったキューティーをぞんざいに扱うケイト。

 それを見て、表情を険しくしていたはずのエイラでさえ笑ってしまう。

 空気を変える力ってのも、案外重要だと思い知らされる。


「――ッ! ヨハン‼ お前はまだ大丈夫なんだな?」

「え⁉ はい! 僕はまだ―――」


 一瞬リミアの方を見るヨハンは言葉に迷うが、それでも平気だと声にする。

 これ以上の罪悪感を抱えないためにか、いつの間にか俺も。

 欲張った案の続きを考えていた。

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