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一人ということ

「この間の魔法・・・あ、あれって回想再現(リコール)、ですよね?」

 この間の魔法。というのはケイトの足を治したあれのことか。

 名前なんてどうでもいいが、確かにそんな呼ばれ方をしていたはずだ。

「それがどうした?」

「じ、じゃぁ・・・なんで引退したんですか?」

 ジェイド達には話したことなかったか?

 だとしたら、引退の理由を聞きたいってのは将来への不安からだろうし、減るもんでもないからいいけどな。


「パーティーにいても、俺に出来ることがなくなったからだ」

「回想再現を使えるのに、ですか⁉」

「よっぽどのことでもなけりゃ、普通に治癒・回復・再生の魔法で十分だろ? それこそ致命傷なんざ受けるようなら、すぐに引退した方が身のためだ」

「それは・・・そうかもしれませんが。で、でも回想再現は一番調子のいい状態に出来るから、体調も良くなるし魔力も回復しますよね?」

「それはそうだが、だからって戦闘中に気軽に使える魔法でもないだろ? 俺の魔力じゃ2回が限度だしな」

 2回つっても最大で、だしな。もし、他に1回でも魔法を使ってりゃ、2回も撃てないだろう。

「に、2回も⁉ それだけの魔力量があるなら攻撃魔法だって使えるんじゃ・・・?」

「何を勘違いしてるのかは知らねぇが、俺の魔力量はBにも届かねぇよ」

「さ、流石に騙されませんよ‼ 時空魔法は魔力消費が大きいのは常識ですから‼」

「そんなくだらねぇ嘘なんざつかねぇよ。俺の引退した理由は魔力量の少なさに起因する火力不足だ」

 今さら誰かに見栄を張る必要もねぇのに、嘘ついてどうすんだよ。


「待ってくれ。確かにパーティーではサポート役だったと聞いた。けど、魔力量が少ないっていうのは俺も信じられない。現に、俺はゼネスさんの融合強化(フュージョンブースト)を受けたし、使用回数だって少なくなかった。火力だって超弩級(ギガント)を倒せるほどなのに、それが引退の理由だなんて・・・」

 サンからすればそうなるのか?

 いや、確かにとっておきは見せたけどな。

 けど、だ。

「そもそも、魔法だって使ってりゃ慣れてくるんだよ。特に強化魔法なんざ自分に使うわけだからな。無駄なところはすぐにわかる。そういうのを削ぎ落としていけば、消費魔力も少なくなるもんなんだ」

 どんなことでも、繰り返し行えば見えてくるものがある。気付けるものがある。

  こればっかりは年季の差かもしれないが、それでも。

「冒険者になって15年。魔法を知ってからなら25年。やれることはやってきた。魔力量はどうにもならなかったわけだがな」

「それはそうかもしれない・・・。だけどあの時、うちのスイが人の魔法を奪うなんて、と言っていたんだ。融合強化の後にそれだけのことをやって、魔力が少ないなんてことは・・・」

「そ、そうです‼ あの時確かに魔法を奪っていました! 魔法を奪うには相手の魔法にう、打ち勝つ魔力が必要なはず! それに、回想再現はさらにその後に使ったんですから、少ないはずが・・・!」

 ヨハンやリミアの時にも感じたが、認識の差がありすぎる。

 なんでだろうな?


「他人の魔法を利用するのに魔力はそんなに必要ねぇんだよ。相手より魔力が必要になるのは、真正面から撃ち合うからだ。利用するだけなら薄い魔力障壁で覆えばいい。そうすりゃ外側から干渉するのは自分の魔力だけだ」

 あの時は降ってくる大岩の下に、布のような魔力障壁を置いておくことで、落下してきた岩をそのまま包んで横から叩いだだけだ。

 魔力の消費量は初級魔法と大差ない。

「だから、相手に利用されたくないような大魔法はデカい上に複雑になるんだよ。サポートにしても、単純な強化以外は数や範囲で押すだろ?」

「なら、超弩級を倒したアレは? 火力としては申し分ないじゃないか!」

「アレはこの籠手で俺の全魔力を撃ち出す・・・裏技みたいなもんだ。全魔力消費ってのは残量じゃなく総量だから、撃つためには一回魔力を空にして丸薬を砕くか、最初から一切魔力を使わないかを選ばなきゃならねぇし、当然だが、加減も出来ねぇ。連射なんてもっての外だ」


 アレは魔法というより魔力弾だ。

 マジックボルトだとか、マナブリッツだとか言われるが、結局は魔力をそのまま放出しているだけで魔法として成立しているとは言えない。

 魔力は純粋なエネルギーである分、そのまま使うのが一番威力が高い。

 だが、それが簡単にできれば苦労はしない。

 取り扱いが難しいからこそ、属性という型にはめて扱いやすくしたのが魔法で、それが普通なんだ。

 それでも、俺には威力が必要だった。

 だからこそ作った技だったが、その使い勝手の悪さを考えればアレを戦力に計上できない理由がわかるはずだ。

 能力で劣る人間が、人に勝るモンスター相手に魔法を縛って戦えるわけもなく、回復前提で撃とうにも加減が出来ないんだから、仲間や壁、地面に当たらないように、空目掛けて撃つしかねぇ。もちろん、外すなんざ論外だ。

 そうなりゃ、使える相手は必然的に超弩級のような巨大モンスターだけ。

 しかも、それでも戦闘が続くようなら、また回復だ。

 魔力酔いまで計算に入れて、使える場面なんざそうはない。


「サン。お前のところのスイはステータスレベルが低いよな? それでも戦えてるのはなんでだ?」

「それは・・・・・・。魔法が強いから・・・」

「つまりはそういうことだ。能力不足を補える火力があるからパーティーにいるんだ。それがなきゃパーティーから弾かれる。そうならないようにパーティーを組むと、自然と歳も近くなる。年齢的にステータスが上がらないうちは最前線にも近寄らねぇ。逆に、南の霊峰まで行ってパーティーから弾かれるってのは・・・そういうことだ。そんな奴を拾おうなんてのはいねぇから、引退するんだ」

「そ、そんなにシビアなんですか?」

「無理だと思ったんならその時点でやめればいい。誰かに気を使ってまで続けることじゃねぇからな」

 まぁ性格的に、あるいは家柄で断れないとかもあるだろうから何とも言えねぇが。

「ただ、お前らはお互いのステータスは知ってるのか?」

 ジェイド達4人が頷く。

「その中であからさまにステータスが劣ってる奴は?」

 お互いを見合わせてから、全員が首を振る。

「それなら一人だけ弾かれるなんてことはねぇだろ。相当な年齢差でもなけりゃ、本来はそんな気にすることでもねぇからな」

 それを聞いたら少しは安心したようだ。

 パーティー自体が弱くて思った冒険が出来ない。ってことはあるだろうが、それでも一人で放り出されるよりはマシか。


「それではゼネス様が弱い・・・ということになりませんか?」

 ここまで聞いていたユノが疑問の声を上げる。

 どうやら話を正しく理解してくれたようだ。

 俺が引退しているということ。

 引退した理由。

 で、あれば当然の疑問。

 丁度いいだろう。

 予定通り、本当のことを教えてやろう。

 個人依頼が取り下げになるかもしれないが、それはそれで悪い事じゃない。

 孫から言い出したんなら、爺さんも諦めるだろうしな。

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