探し出して決せよ3
「寄せ付けるなぁああ‼‼」
「押し返せぇ‼‼」
「クッソ⁉ 離れろよ‼‼」
「まだ来るぞ‼‼」
一丸となって戦っていた兵達。
しかしその成果は芳しくない。
練度が低いから・・・じゃぁねぇ。
士気が下がるだけの、戦果を上げたくなくなるだけの理由があるからだ。
「そうです‼‼ 教祖様に逆らう異教徒に生きる価値などありません‼‼ それだけならまだしも! 彼の者らは聖域さえ破壊した‼‼ 許してはなりません‼‼」
「――――――・・・・・・ッ‼‼」
ガタガタとぬかすのはただ1人。
襲ってくるのは声さえ上げられない人形のようになってしまった人間達。
さらに言えば、その人形のようになってしまった人間達は皆、女や子供か老人だ。宗教らしくて反吐が出る。
そして、ここに集まる兵達は。
自分が守るべき女や子供のために、故郷を捨ててきた者達。
女子供の敵を見れば、自分の家族を思いも出すし。迫りくる老人を見れば、故郷を捨てた理由や瞬間を思い出すだろう。
戦意も鈍るってもんだ。
罪の意識もある。
操られてるだけの人間を斬って捨ててもいいのか? ――ってな。
男の兵士ならまだしも。女や子供の姿じゃぁ難しい。
手に持った武器も、振れなきゃただの棒きれだ。
それが後手を招き、戦力の消費を引き起こす。
人形のような信者達に武器はないが、それでも噛みつかれでもすれば怪我ぐらいする。掴み倒され、踏まれ続ければ死ぬこともある。
それだけは回避しようと、いつの間にか必死で抵抗しているのは兵達の方だった。
数が足りねぇことを考慮して、前列には剣を後列には槍を持たせたことも。こうなっちゃぁ意味がねぇ・・・っつーか、武器も取り捨てての掴み合いになってきてる。戦列さえ機能しなくなるぞ。
だからって、”殺せ”なんて言葉だけで解決するなら困っちゃいねぇ。
取り敢えず脱落者が出ても面倒なんで、怪我人を魔法で回復させながら、戦線を維持する。
敵の数が増えてねぇか、自分達の位置や距離に変化がねぇかを見回すついでに、ジェイド達の無事も確認しておく。
すると、無事どころか。
こっちよりもよっぽどうまく戦って、積もるほどの戦果を挙げていた。
っつーのも、だ。ヨハンには経験があった。
操られただけの人間との――いや、正確には言いなりになった子供とのか。
どちらにせよ、相手を傷付けずに拘束する術とその算段に覚えがあった。
完全に真似るだけじゃぁ無理だが、その程度の工夫を思いつかないはずもねぇ。
ジェイド達4人には足止めを頼み、敵を魔法で拘束。
更にはリミアと協力し、動けなくした敵を波で押し流すことで脚を奪い、その隙に連続して拘束。また押し流すの繰り返しで敵を寄せ付けねぇところまで。
拘束された敵が土留めのように積み上がる様は無双の一言。
流石にこのままじゃ立つ瀬がねぇなと意気込む。
この数の敵を殺さずに無力化するには、全員を手足の如く完璧に操る必要がある。
それこそ、どこぞの教祖のように―――・・・。




