本当は?
「では、実際にはどうだったんですか?」
などと、言い出したのはユノだ。
「噂は正しくないのですよね? だとしたら、本当はどうだったのか・・・私、気なります!」
その言葉にあてられたのか、周りからも同じような視線にさらされる。
「噂みたいに面白くはねぇぞ?」
そう断ってみても、ただ頷くだけだった。
「じゃぁ・・・どっから話すか・・・?」
「初めからでいいんじゃないか? 冒険者になるところから」
間髪入れずにサンが答える。
初めから、ね。
「そうだな・・・。初めは、俺とクライフが冒険者になった。貴族学園の幼少部を卒業してすぐのことだ。俺自身も辺境伯家の人間だってことで反対されたが、それ以上に皇族のクライフが冒険者になるなんて・・・とまぁ、えらく反対されたが、色んな人の助けもあって結果的には冒険者に成れたのが始まりだな」
それを聞いた全員が驚く。
俺としてはそっちの方が新鮮なリアクションだが、そうか・・・クライフのことを知らないぐらいには時間が過ぎてたんだな。
第4皇子と第6皇子のことは、貴族なら知ってて当然。ぐらいに思ってたんだが、そうでもなかったらしい。
「先生って辺境伯家の人間だったんですか⁉」
思ってたのとは違うところで驚いているヨハン。
と同じように、なぜ言わなかったのか・・・とでも言いたげな目で見るリミアがいた。
そういえば、この2人には名乗ってなかったな。
「まぁ、そうだ。貴族の息子2人じゃねぇ、正しくは皇子と上級貴族の息子が冒険者になった。これが始まりだ」
「そうか・・・だから伝説なのか」
「そういうことだろうな。上級貴族の出自ってのもおかしいだろうが、皇子が冒険者なんてのは冗談の類だからな」
呟くサンを肯定しておく。
実際、お戯れ呼ばわりだったしな。
「次は怪力モンスターだったか? それはたぶん、C級昇級試験の話の内容がごっちゃになったんだろう。試験は3人で受けた。その3人目のギフトが怪力で、試験中に武器をぶっ壊して、最終的に素手でモンスターを殴り倒したってのがねじ曲がって伝わったんだろう」
「それは怪力モンスターで間違いないんじゃないか・・・?」
「本人に言ってみろ。ものすげぇ速度で分厚い鉄板が飛んでくるぞ?」
アンナの嫌味に皮肉で返したら、結構な頻度でそれに見舞われた。
全力の強振。
避けなきゃ死んでたぞ。
当てる気はなかったんだろうが、寸止めなんざ一回もなかったしな。
全員がすごい顔をしているが、構わず次だ。
「天才魔法使いってのは間違いじゃねぇが、さっきも言った通り戦ったりはしてねぇ。あいつも貴族学園に通ってたんだが、いじめにあっててな。だったら一緒に来ねぇか? って言って連れ出しただけだ」
「いじめ、か。それは確かにそのままってわけにも・・・」
「それがなんで戦ったことになってるのかは、わからねぇな」
エリック自身も俺達の提案に、このまま学園に居続けても状況は変わらないと思うし、爵位を継ぐわけでもないから。と、迷わず乗ってきただけだ。
問題は表沙汰にしたから、それで前向きになったのか、それともただ逃げたかっただけなのかは本人にしかわからないが、すんなり話は進んだ。
少なくとも、エリック参入に勝った負けたはなかった。
「唯一戦ったワンダーゴーレムだが、戦ったのはA級になった後だ。パーティーも5人いた」
ワンダーゴーレムと戦ったのは、フェリシアを預かった後にA級昇格を果たした・・・さらに後の出来事だ。
パーティー全員の加護レベルが高くても怪しまれないように、と修道の旅を行っていた時に出会った。
後にも先にもあれより強いモンスターにも、苦戦させられたモンスターにも、覚えがないぐらいの化け物だった。
「本当に倒したんだな? あのワンダーゴーレムを・・・」
「俺の装備にはだいたいあいつの素材を使ってる。この籠手なんざ、ほとんどがそうだ」
適当に手を出して見せる。が、いまいちピンと来てなさそうだ。
まぁ、本物を見てなきゃ素材なんかはわからなくても無理はないか。
わかる奴が見ればわかる。
それぐらい、この籠手はまんま素材を使ってる。
伝説だとか、聞こえるように囁かれるになったのはこの頃からだ。
出自と功績。
所以としては十分だったのかもな。
皆が皆、不思議そうに見つめる籠手を引っ込めて。
「その後、南の霊峰に行ったのは確かだが、札消しは狙ってねぇよ。何体かとたまたま出くわして、他のパーティーと協力しながら討伐したってだけの話だ。俺達だけで勝てた相手はいなかったよ」
「札消しってなんでしょう?」
この場で一人、冒険者ではないユノが聞く。
「札消しってのは賞金を懸けられたモンスターを討伐することだ。賞金を懸ける理由は色々だが、強い、厄介、邪魔が多いな。稀に復讐ってこともある。賞金が懸けられたモンスターは絵と特徴や出現場所、目撃証言を書かれた紙が掲示板や討伐依頼板に貼られる。冒険者はそいつを札って呼んでるんだ」
へぇ~・・・と声が重なる。
ユノ以外は知ってなきゃおかしいはずなんだが・・・?
「ではやっぱり、伝説は嘘ではなったということですね⁉」
俺の疑問もどこへやら。
目を輝かせるユノが見ているのは、冒険者への憧れか、あるいは神の御業か。
これをどうにかしなきゃいけないわけなんだが・・・、
「あ、あの・・・!」
意を決したように、
「わ、私にも聞きたいことがあ、あるんですが・・・・!」
ケイトが割って入ってきた。




