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あくなき善心

「ゼネス様・・・一度、止まってはいただけませんか?」

 肩に担いだユノの声が背中越しに届く。


「気分でも悪くなったか?」

「そうではありません・・・いいえ、気分のことでしたら担がれた瞬間から悪くなる一方なのですけれど、それは自分の責任と思うことにいたしましたのでそうではなく、地上の様子を確認していただきたいのです」


 新しい抗議のやり方かと流すつもりだったが、一旦足を止め地上を眺める。

 つっても、大通りからは外れた場所を通っている都合上、見えるのは脇道。狭い路地や家屋の隙間に出来た小さな広場がほとんど。


 しかし、それにしてもだ。

「この区画に入ってから、人の気配が・・・・・・」

 ユノの言わんとしている通り。


「・・・1人も居ねぇのは流石におかしい―――か」

「はい。途中までは狭い道にも数人の人影がありました。ですけれど、この区画に入ってからはまだ1人も」


「この付近にあるのは確か・・・」

 俺が思い出すより早く、リミアが答えてくれる。


「教会です。さらに奥へ進むと軍事施設の近くに出るはずですが」

「その割に手薄なのが気になるな」

「それほど私達をとり逃がしたくないんでしょうか?」

「もしくは自信の表れかもしれないよ? 虚勢の可能性もあるけど・・・」

 リミアとヨハンが続けざまに思い付きを口にする。


「どっちか、あるいはその両方ならまだいいが・・・想定外の理由だと面倒だな。今は逃げるだけだが、どちらにせよ教祖を叩くには進攻する他ない。その時、不安要素になられるのは勘弁なんだが・・・」

「ッ‼ もしかしたら―――っ!」

 ユノが何かに気付いたところで。


 ヒュッ! と風を切る音が。

 咄嗟に顔を上げると、拳台の石が眼前を突き抜け空へ。そのうち弧を描き地上へ帰っていく。

 いやにゆっくりとした時間が流れた後、次々と石が飛んでくる。


「走るぞ!」

 ヨハンとリミアに呼びかけ、駆け出す。

 融合強化は使っている。石ころ程度で死にゃしないだろうが、当たりたいもんでもねぇだろ。


 一応、頭部だけは守るように伝えつつ、建物間の飛び移りに合わせて足元を見下ろせば、さっきまでとは打って変わって、ぞろぞろと人が集まっては石ころをぶん投げて来る。

 しかもご丁寧に縄や魔法まで使って威力や精度を上げてくる始末。

 走る足場の不安定さだったり、飛び移る先の高さの違いだったりに手間取りながらも、先へ先へと急いだ。


 途中、担いだユノの『きゃぁあああああ⁉⁉』という絹を裂くような叫び声を聞いたような気もするが、低い屋根から高い屋根へ壁を駆け上がってる最中だったから、多分それでだろう。

 いつの間にか手に持っている石ころは関係ないと思いたい。

 ついでに、その石ころを両手でしっかり掴みながら『やっぱり――』とか言ってるが、今は聞こえてねぇってことにしておく。


 それより、問題はこの先だ。

「そろそろ軍事施設の近くに出ます! 気を付けてください‼」

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