表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/945

特別依頼と・・・

「それで、俺に依頼だったか?」

「はい! 是非ともゼネス様のお力添えを頂きたく思うのですが、よろしいでしょうか?」

 はっきり言えばよろしくないが、背に腹は代えられねぇ。

「依頼内容は聖女認定試験時の護衛で間違いないな?」

「はい! 試験の内容は毎回変わるらしいのですが、トラップなどが仕掛けられた遺跡にゲートを開き、指定された課題をクリアするのが通例となっているのだとか」

「依頼達成までの期限はあるのか?」

「どういう意味でしょうか?」

「この日までに試験を終わらせたいとかそういうことだ」

「いえ。そういったことはありません。ゼネス様のご都合がよろしい時にお声掛け頂ければと思います」


 急いでないのか? 爺さんには別に考えがあってのことか? だが、こっちのタイミングでいいなら都合はいいが・・・、

「もちろん。報酬は後払いだぞ?」

 心でも読んだかのように爺さんが付け加えてくる。

 いや、当たり前といえばそうなんだけどな。


「・・・なら、特別依頼として受けるから、適当な紙にでも今の内容を書き出してくれ」

「特別依頼、ですか?」

「あぁ。ギルドを通さない個人間の依頼で、そのまま個人依頼とも言うな。契約書なんかはギルドにある書類を使った方が楽だが、契約内容が書かれてて形式があってりゃ別に構わねぇから気軽に書いてくれ」

「気軽に・・・?」

「要は保険になればいいんだ。なにかあった時に、ギルドとは関係ありませんよってな」

「なにかというのは・・・依頼が失敗した時のことですか?」

「それも含めてだが・・・・・・この間の件は知ってるか? 蟻の話だ」

「えぇ、はい。聞き及んでいます」

「あれはギルド主体だったが・・・もし個人依頼で、さらには討伐に失敗して皇都や周りの町に被害が出ていたら、ギルドは依頼書を公表して我々は関与してませんと言うわけだ」

 まぁ、あの規模でそんなことになったら、知らぬ存ぜぬは通用しないかもしれないが。


「それはあんまりではありませんか⁉」

「そうかもな。その代わり、ギルドは報酬を取らないし依頼内容にも口を出さない。その依頼を受けている間は緊急招集からも外されるし、一部ペナルティも免除される。だから、結局はその冒険者の腕次第だ」

 そういう仕組みをちゃんと知っていれば冒険者にとっても悪いものではない。むしろ、悪用する輩もいるぐらいだからな。

 当然、悪用はバレた時点で制裁されるが。

「それならば大丈夫ですね! ゼネス様なら心配ありません!」

 なぜそこまで俺に自信を持てるのかはわからないが、何か見えてんのか? ・・・とっくに冒険者も引退してるんだが、言うとめんどくせぇか。

 本来ならこういう時、はしごを外したら・・・って笑えてくるんだがな。

 いそいそと紙に筆を走らせる娘は、静かな方がまだ可愛気があった。



 書き上げられた依頼書を受け取って部屋を出た。

 見送りと称してついてきたのは爺だけ。

「どういうことだ?」

「ギフトのことか?」

「それもだが・・・そうじゃねぇ、試験のことだ。孫の方が受けたがってるって話だったとおもうんだがな?」

「嘘はついとらんさ。ユノも受ける気だったろう?」

「そうだな。いつか、にな」

「それは憧れのお主が来たからだろう。そうでなければ、きちんと日付まで決めたろうよ」

 ここまでしてはぐらかす理由はなんだ?

 口調を変えて、猫を被って、印象操作してまで地盤固めに走り・・・今度は孫娘を重役に添えたい理由・・・。


「あの憧れはアンタが植え付けたんだろう?」

「まさか! 両親のおらんあの子を思って話相手になっとった時に、フェリシアからの手紙を見られてしもうたんだ。それで、あの子が聞きたがってな」

 両親がいない。

 この爺さんの家族について聞いたのは20年以上前。

 その時も確かにそりが合わないとかで側にいないってのは言っていたが・・・今は孫がいる。15歳の。

 15年前っつーと、俺達が学園を卒業した辺りだが、孫が生まれたなんて話を聞いた覚えがねぇ。

 その頃は丁度・・・そうだ! この爺さんを教皇にした頃だ‼

「どうした?」

 なにかおかしなことでもあったか? とでも言いたげな笑い顔には随分としわが増えた。

 優しい顔だ。

 だが、それは・・・、

「なんでギフトのことを教えた?」

「たまたまだ。話していた時につい口を滑らせてしまってな」

「そいつは嘘だ」

「なぜそう思う?」

 英雄譚や冒険譚はこの世界ではありふれた娯楽だ。

 数多くの者達を魅了するが、その熱がどこまで続くかは人次第。

 サンパダのように、冒険者に憧れながらも成れなかったが故に好み続ける者もいれば、俺やクライフのように冒険者になったが故に人の自慢話など、と遠ざける者もいる。

 だが、始まりの頃はそう変わらない。

 だいたいは学園に通うようになる6歳の頃。

 あの娘がこの爺さんの下にいつ来たのか、なぜ来たのかは知らないが・・・6歳当時は9年前だ。

 9年前といえば、俺達は19か20の時。

 その当時、俺達のパーティーには大きな出来事があった。


 それは・・・、

「フェリシアのことだ」

 新しい仲間の加入。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ