教会からの手紙
二章開始!
手紙が来てから一週間。
俺は教会本部の敷地内、とある部屋で人を待っていた。
「待たせたみたいだのぅ?」
奥の扉から爺さんが飄々と姿を見せる。
「・・・・・・ふざけてんのか?」
そんなことはないと思うが・・・確認は重要だ。
「まさか!」
「だったら、そっちのが問題じゃねぇかよ!」
「イメージは重要なファクターなのでな。今はこうしとる」
「どっから拾ってきた知識だか・・・」
話し方からなにから、ずいぶん変わっちまった知り合いを見るのは・・・言葉に出来ないものがある。
信頼していた相手ならなおさらだろう。
「これでうまく行っとるんでのぅ・・・」
ホッホッホ。と爺むさい笑い方で答えるのは現教皇グレアムその人だ。
冒険者として旅をしていた時に、フェリシア経由で見せられていた手紙からもそういう節があったのは見て取れてはいたが・・・。
「こうして実際目にするとな・・・」
それこそイメージってやつだ。
当時の俺にすれば恩人でありカッコイイ大人だったのが、道化のように爺を演出しているんだからなぁ。
「そういうでない。おかげで地盤固めも楽になったんだからのぅ」
「野心的に見えないってのはわかるんだけどな」
「元が元だったからのぅ。初めは心配の方が多かったくらいでな」
「だろうな」
俺の口調が荒いのはこの人と教官のせいだからな。
「で? たまには顔を見せに来いってのはどういうことだ?」
「なに。昔、贔屓にしとった小僧が久しぶりに近所へ帰ってきたのだ。顔くらい見たくもなるであろうとは思わんか?」
「世話になった分は教皇にすることで返してやっただろ・・・まだ欲しがるってのか?」
「うちの秘蔵っ子を持って行ったではないか!」
「フェリシアのことか? ありゃ押し付けられたっていうんだよ!」
「旅立ちには最上級の魔法鞄もくれてやったであろう!」
「そいつなら今はフェリシアが使ってるよ!」
「なに⁉ 持って帰ってこんかったのか⁉」
「もういらねぇだろ?」
「・・・つまらんのぅ」
顔を背け拗ねたように唇を尖らせる爺さんを見て、なにを思うのが正解だ?
そう思っていると。フッっと笑って、
「冗談だ・・・」
と、いつぞやの影をのぞかせながら言う。
「ただ話がしたかった・・・ではいかんか?」
「それなら最初からそう言えよ・・・」
「誰かと同じでなかなか素直になれんでのぅ」
「話ってのは?」
乗らなかった俺にフン。と一息漏らして、
「単刀直入に言うが、教会にこんか?」
「断る。どうなるかわかりきってんだろ?」
「まぁ・・・そうよな。そのつもりがあるなら真っ先に来ているはずだな」
神にされるつもりはない。
というか、アンタは俺のギフトを知ってるだろうに。
「なにかあったのか?」
「どうなのだろうな? 勘といえばよいか? 目に見えて何かあるわけではないのだが・・・無性に不安になる瞬間があるのだ。だから地盤固めといいながら結束を強めようとしとるんだが・・・」
不安が消えない、と。
幼少期の俺に声をかけるぐらいだから、勘がいいのは確かだと思うが、
「それだけじゃな・・・」
なにもわからないんだからなにもしてやれることはない。
「仕方あるまい。他はというと・・・この間の件か」
「苦情でも出たのか?」
「いいや。回復薬の注文がどっさり入ったおかげで嬉しい悲鳴が出とるくらいだ」
マンサ商会が掃けた分を注文したか?
・・・・・・・・・・。
「それ、俺が作ってもいいか?」
「どうした? いきなり・・・」
「干上がるってほどじゃないが、懐が寂しいんだよ」
「あれだけのモンスターを倒してといてか?」
「一時的にギルドの金を肩代わりしてんだよ。本部からの補填と報酬はすぐには来ねぇからな」
「それにしたって、いい歳した大人が爺に小遣いせびるかね?」
「表で稼ぐわけにもいかねぇだろ?」
指導員も所属ギルドでなら依頼は受けれる。だが、それは当然現役の仕事を奪うことになるし、ギルド内の仕事では追加報酬は出ない。それに、今の支部には職員の給料を出せるだけの金があるかすら怪しい。
だからといって、夏はどこも書き入れ時だからと大手を振って他所で稼ぐってのも、冒険者ならいざ知らず職員がやるのは流石にまずい。
その点、薬作りは表に出ないし品質も、良くなることはあっても悪くなることはない。教会にとっても悪い話じゃないはずだ。
「孫みたいなもんだろ?」
「孫ならもう間に合っとる・・・・・・?」
否定的な態度の爺さんだったが、しばらく考えた後、
「一つ、条件がある!」
と言い出した。




