約束の大芝居
「あとは任せます」
「そっちこそ、任せたからなぁ!」
「お前らも教官・・・ギルドマスターに従うように」
「はい!」
「わかりました」
それだけ言ってジェイド達を引き連れて皇都に戻る。
皇都の中へ入るや否やメッセージカードを取り出して確認する。
そこには、
《ズダーク伯爵邸に詰問に行くようだ。出来ればここで仕掛けたい。確認したら至急連絡を入れてくれ》
とあったので、
『今戻った。これから伯爵邸に向かう。可能なら連絡しろ』
手短に書き込む。
すると、
《了解》
瞬く間に返事が来た。
「どうしたんですか?」
それを確認していた俺をジェイド達が訝しんでいる。
当然と言えば当然だ。
元々、連れ出した時の口実が・・・無事に帰るまでがピクニックっていうだろ? だからな。
救護対象だったお前らは現場の片づけなんざいいから、無事の報告をギルドに届けるぞ。と言って引っ張ってきたんだ。ギルドマスターすら現場にいるのに、だ。それでさっさとギルドにも向かわずに、どこぞと連絡してりゃぁ不審にも思うだろう。
だから、
「いやなに・・・お前らのやったことの後始末をつけに来いってだけの話だ」
真実そのままを伝える。
「どういう意味です⁉」
ジェイドが吠えるが・・・答えるよりも見た方が早い。
何も言わずズダーク伯爵邸を目指した。
「だから・・・どういうつもりなのか、と聞いているだろう⁉」
「わからない人ですね、あなたも。今回の事件の主犯はジェイド・P・ズダークあなたの末息子です。なので・・・ズダーク伯爵! あなたにも、事情聴取の為に我々の詰め所に来ていただくと、そう言っているのです‼」
「それについて、私は先ほどから言っているだろう⁉ 事件と言われるようなことはなかった! だからなにも話すことはない!」
「それはあなただけの意見でしょう! 皇国軍ではこの件を危険視しています‼ もし、皇都までモンスターが押し寄せてきていればどうなっていたか⁉ それに・・・そもそもなぜあんな場所に、本来いるはずのないモンスターがいたのか? そしてなぜ、あなたの息子がわざわざそんな場所に向かったのか? それは調べなければならないでしょう?」
「そんなことを私が知るはずないだろう‼ 現に、たいした被害は出ていないと聞き及んでいる! 全ては偶然に過ぎない‼」
と、ズダーク伯爵邸に近づくにつれ、そんな声がどんどん大きく聞こえてくる。
俺達が伯爵邸に着いた時。すでに多くの兵士たちが伯爵を取り囲み、今にも取り押さえられそうな状態だった。
囲まれながらも弁明しているのが、呼ばれ方からしてズダーク伯爵本人で間違いないんだろう。
それなりに荒げた声が聞こえてくるが・・・兵士の垣根が厚く、ここから見えるのはその末息子の苦虫を噛んだような顔ぐらいだ。
もう少し待って、伯爵を連行しようとするところをとがめてもいいんだが・・・こんなのでも教え子だというんだ。そんな顔のまま放っておくわけにもいかない。
「退け」
兵士の壁を割って進む。
特に抵抗もなく、程なくして中心までの道が出来た。
それらしいカッチリとした服を着ているのがズダーク伯爵か。そして、それに詰め寄る二人の兵士は、どっかで見たような気がしなくもないんだが・・・今はいいか。
「これはいったいなんの騒ぎでしょう?」
「何者だ貴様は⁉」
横から急に殴られたかのような反応で兵士が振り向く。
つられてズダーク伯爵もこちらを向き、
「君は・・・? ッ‼ ジェイド! 無事だったのか⁉」
ついてきていたジェイドに気付いた。
「父上・・・俺は・・・」
「なにがあったんだ⁉ なにをしていた⁉ ・・・いや、いい。無事でなによりだ。他の3人も。お前たちになにかあったらと気が気でなかったぞ! 彼女らの親にどう説明をすればいいかと・・・。だが、無事でよかった」
意外だな? ジェイドのことなんざほとんど知らないが、俺様していると聞いてた割に・・・家族仲はよさそうだ。
てっきり、勘当だ‼ とかそういう展開になるかと思ってたんだが・・・まぁそれならそれでやりやすい。説得する手間が省けるんだしな。
「まさか、犯人が自ら現れるとは。しかし、その態度‼ やはり本当は計画でもあったのだろう? 続きは詰め所でやってもらおうか!」
一人でよくしゃべる兵士がズダーク伯爵へ手を伸ばす。
「痛⁉ 何者だ貴様‼ さっきから‼」
その手を適当に叩き落す。
「お前こそ何様のつもりだ? 伯爵閣下に取っていい態度じゃねぇよな?」
「それはこちらの台詞だ‼ 貴様こそ‼ どこの馬の骨とも知らないその身で、我が手を叩き落すなど‼ どういうことかわかっているのか⁉」
それを見ていたズダーク伯爵が驚いたように聞いてくる。
「君は・・・?」
「申し遅れました! 私の名はゼネス! ギルドの指導員で、閣下の御子息であるジェイド率いるパーティーの教育係でもあります!」
俺はわざわざ、遠くまで聞こえるように名乗りを上げる。
「そのような分際で我が手を⁉ ふざけているのか⁉」
反射的に反応した兵士とは違い、今の言葉をズダーク伯爵はよく理解してくれたようだ。俺の名前に聞き覚えでもあるのかもしれない。一度、二度と頷いてから言う。
「君には聞きたいことがある。なぜこのようなことが起こってしまったのか。この責任をどうするのか。しかし、今はただ感謝しよう。ありがとう」
「いえ。偏に我が非力が故に、謝辞などとは・・・」
「無視はいい度胸だ‼ 捕らえろ‼」
やり取りから省かれた兵士が憤慨し、隣に立っていたもう一人の兵士に命令する。
命令されたもう一人の兵士が、さらに後ろの兵士たちに合図をして、行くぞ! というタイミングで、
「待て‼」
都合よく制止がかかる。
ざわつく兵士たちの壁を割って、覚えのある顔が現れる。
「これはいったいどういうことだ? こんなところで、なにをしている?」
周りに語りかけるようなその言葉は・・・なるほど、そういうことか。
そのド派手なマントも使いよう、か。
似合ってはねぇけどな?




