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side-栄光ある騎士団 ジェイド

 どうしてこうなった⁉

「エイラ回復しろ‼」

「無茶言わないで‼ ケイトを治しながらなんて出来るわけないでしょ‼」

「俺が崩れたら終わりなんだよ‼ わかってんだろ⁉」

「わ、私は大丈夫・・・ですから・・・」

「でも⁉ 血だけでも止めておかないと‼」

「ジェイド様‼ 来ます‼」

「クソッ‼ 俺様に勝てるわけねぇだろ‼ 虫風情がぁあああああ‼‼」

 辺り一面を埋め尽くす蟻に吠える。

 群れなきゃなにもできない分際で、どこから湧いてきやがる⁉

 対策はしてた。

 ギルドでこの依頼を見つけ時に”これだ”と思った。

 俺様をバカにした、あのゼネスとかいう教育係に俺様の強さを見せつけるのにちょうどいい獲物だと、そう思った。


 調査依頼ならあの教育係を帯同しなくても問題にならない。

 その上で、この辺りに生息しないモンスターの調査および討伐。推奨C級パーティー以上。

 モンスターの特徴は蟻型4匹。

 余裕だ。

 どこから流れてきたかは知らないが、こんなところに女王がいるはずがない。それでいて、蟻型は最低でも討伐推奨等級が単独C級以上。

 確実に勝てる。

 その上で、推奨個人C級以上のモンスターの討伐だ。これならあの偉そうな教育係を黙らせられる。

 俺様に個人C級の実力もないと侮っていたようだが・・・これを見てどうだ? ってな。


 だから準備した。

 敵がわかっていたからな。徹底的に調べて、金にものを言わせて装備も集めた。

 そのかいもあり、あっけなく終わった。

 アスクレについて馬車から降り、通路を回った。

 そして、蟻は探すまでもなく見つけた。

 入り口広場からすぐのところにいたからだ。

 情報通り4匹。

 2匹は不意打ちで殺せた。

 残りの2匹も大して手こずらなかった。

 ただ、最後の1匹には時間がかかった。

 逃げ回られたからだ。

 見逃してもよかった。いや、見逃すべきだった。

 最後の1匹を殺して油断していた。


 だから――ケイトが攻撃されるまで、他に蟻がいることに気が付かなったんだ。


 そこからは最悪だった。

 ケイトは足をやられ、俺様たちは通路に追い込まれた。

 不意打ちを受けたケイトの傷は深い。そのせいで逃げることもままならない。かといって、この状況で置いていくことも出来ない。にもかかわらず、蟻だけがどんどん増え続ける。

 俺様とキューティーで牽制して接近を制限するのが限界だった。

 キューティーは盾を持たないから受けれない。

 エイラの結界で防いでいるが、結界維持と回復を並行しているせいで回復が足りない。

 ケイトも痛みに耐えながら魔法を撃っているものの、一向に蟻の数は減らない。

 イラついた。

 思い通りにならないことに、今のこの状況に!

 その瞬間、顔面目掛けて一匹の蟻が飛んできた。

 乱れた集中ながら、どうにか避ける。



 だが、

「どうだ? 仲間を殺す気分は?」

 声が聞こえた気がした。



 急いで振り返っても、そこには誰もいない。

 代わりに、避けた蟻が背後にある結界にぶつかりバチィ‼ という音で弾かれた後、地面に落ちたところをキューティーの追撃によって倒される。

 そうして目にした全員の顔は疲弊していて、少なからず絶望の空気を漂わせていた。

「・・・・・・・・・チッ‼」

 収まらないイラ立ちを必死に抑えつけた。

 あの時に言われたことを思い出してイラついた。その声に、その態度にイラついた。そして、この通りの状況になっていることにイラついた。


 なにより、一瞬でも期待した自分にイラついた。


「エイラ! 結界は緩めるなよ‼」

「それはいいけど! どうするのよ⁉」

「ここで耐える!」

「本気ですか⁉ ジェイド様‼」

「・・・あぁ。だからキューティー! お前も前に出過ぎるなよ!」

「は、はい! ですけど・・・」

「無理はするな‼ それでも怪我したらちゃんと治せよ‼ エイラ!」

「ちゃんとやるに決まってるでしょ‼ でも、急にどうしちゃったのよ!」

「そうです! らしくないですわ‼」

「うるさいぞ⁉ お前ら‼」

「で、でも・・・確かに時間をかければギルドが気付くかも・・・?」

「そうなったらいいですわね!」

「どうかな・・・だったらこんな依頼、残ってないはずじゃない?」

「どっちにしろ、他に出来ることがねぇんだよ‼ わかったな⁉」

 そう言うと、さっきまでよりは幾らかマシな雰囲気で返事が返ってくる。

 そうだ。ここでこのまま死んだらどうなる? 死なせたらどうなる? おそらくは一生笑われ続けることになるだろう。それは、それだけは絶対に認められない‼ だから! 死んでも生き残ってやる‼



 そこからは奇妙な感覚に陥った。

 どう考えても数で押してくると思った蟻が来ない。

 稀に来ても後が続かない。

 様子見のように思えるが、だったら今までのはなんだったんだ⁉

 そうしてしばらく続いた膠着状態。

 このままなら助かるんじゃないか? そんな甘い考えがよぎった瞬間、一瞬引いた黒い波が一気に膨れ上がって雪崩れ込んできた‼

 俺はなにを⁉ と剣を握る手に力を籠めても、もう遅い。


 黒から白へ。


 明滅する光に目を奪われた。

 そして、気付けばそこには偉そうな背中があった。

 俺様ともあろうものが、それを見て安心してしまった。それを恥じ、けれど・・・怖くなった。

 なにを言われるだろう・・・そう思って身構えたが、その背中は振り返ることもなくなにか一言、呟いただけで蟻を蹂躙し始めた。

 こっちへ近づこうとする蟻から順番に殺し続けるその姿は、冒険者というには物騒すぎるのではないか? 敵の首を千切り、武器とする必要があるのか? わざわざ群がる蟻の中に分け入って暴れるのはなんのためだ?

 野蛮で、合理性を感じない戦い方。それでも、いつの間にかこちらに来ようという蟻はいなくなっていた。


 人とは思えない動きで敵を圧倒する。それは強いという言葉だけでは足りない気がした。

 そこへ、なぜか空から岩が降った。

 危ない⁉ 声を出す暇もなかった。なぜならすでに目の前にいたからだ。

 何も言わず、ただ空を見上げて手を挙げていた。その先には誰かがいるらしい。

 視線を戻すころには偉そうな教育係はまた敵の前へ踏み出し、

「あ・・・⁉」

 ここからは開いた口が塞がらなかった。

 死骸の中から飛び出した蟻にも、足元から湧いて出た蟻にも、まるで全て見えていたかのように一瞬で片づけ、空から降り注ぐ大岩さえも、なんでもないもののように戦い続ける。

 それどころか、途中からは笑ってすらいた・・・楽しそうに。

 そんな状況だ。数分もすれば動くものの数も減る。ただ、黒い壁と床が壮絶さだけを物語る。


 そのせいか、ミスが出たんだろう。

 随分手前の、すでに死骸の山と化した場所に大岩が落ちてくる。

 だがまぁ・・・魔力が少し無駄になるだけだ。それにもう戦闘も終わるだろう。俺様たちは助かったんだ。

 しかし現実は違った。この目に見たことを理解できる日が来るだろうか? それはわからないが、ただ一つ。言えることがあるとすれば、俺様はなんにも知らなかったってことだ。

 大岩が地面とぶつかる寸前、目の前には背中があった。

 そして、次の瞬間に大岩は前方へと撃ち出され、地面すれすれを弾丸のように突き抜け、壁に激突し砕け散った。


 俺様は素手で魔法を殴り飛ばせるなんて、考えたこともなかったんだから。

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― 新着の感想 ―
[一言] なるほど、勝手に使われた(//∇//) あるものは使え(//∇//) 真理だね
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