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「――精神系魔法で操作されてるってのか⁉」

「その可能性が高い・・・という話だ」


 精神系魔法。

 その名の通り精神に作用する魔法であり、私的に人へ対して使用することは国際的に禁止されている魔法だ。

 使用してもいいのは診療所を開いている特別な資格を持つ医者のみ。


「そうかッ‼ 診療所ッ‼ そのためのか‼」

「本来であれば診療所の開設には大きな後ろ盾が必要になる。信用がものをいう仕事であるからな。しかしだ」

「連中は、その後ろ盾を精神操作で手に入れた。入れることができた・・・後は診療所を使って様々な人間に接触し、精神魔法をかけていく―――そうすりゃぁ」

「自分達にとって、都合のいい信徒が生れ続けるというわけだな。心水という薬にも、似たような仕掛けがあると儂らは睨んでおる」


 該当の魔法使いが資格を持っているかは知らねぇが、精神魔法を使え、それに効果がありさえすれば、それらは難しいことじゃねぇ。

 要はバレなきゃいいだけだ。


「つっても、おかしなことはあるよな?」

「そうだのぅ。お主の父親は仮にも英雄とまで呼ばれた武闘派だ。幾ら歳をとったと言えども、それほどあっけなく精神魔法の餌食になどならんはず」


 なにより、精神を操作する魔法っつったって、なんでもかんでも自由自在に操れるわけじゃねぇ。

 ガンと決めた精神を揺るがすことは出来ねぇ。

 故に、嫌悪を催すような行動や言動は出来ないはずなんだ・・・。

 だとすれば逆に。


「御父上は教会の教えを疎ましく思っていた?」

「あるいはそこまでいかずとも、疑問視していたという可能性はあるな」

「そして、それを身近な誰かに話していた・・・・・・」

「精神魔法は余程でなければ、見ず知らずの他人からでは干渉など不可能だからのぅ。心当たりは?」


「母上ぐらいだな」

「お主の母上は精神魔法を使えるのか?」

「聞いたことはねぇな。ただ御父上が弱音を吐くような相手がいるとすりゃ、母上ぐらいだってだけの話だ」

「ふむ。それほど厳格であるということだな」

「俺が知る限りは―――だけどな。バロンはどうだ? 御父上、お前のお爺様は誰になら小言を零すと思う?」


 俺が御父上と行った会話は2回だけ。

 それで分かるのは上っ面も上っ面だけだろう。

 だから、丁度良く近くにいた同じ血縁の甥たるバロンへ聞いてみる。


「お爺様が⁉ ・・・・・・うーん。ゴルドラッセに、なら・・・?」

「ゴルドラッセか・・・だが、奴は皇都にゃ来てねぇだろ」

「たぶん。領地でお父様の補佐をしてるはずだよ」

「だよな。他にあるとすりゃぁ―――」


 一つ。

 思いつく人物がいた。

 自然と視線がライザードへと向く。


「なんでしょう?」

「いや、御父上は皇王陛下と親密な関係を築いてたなと思っただけだ」


 そう。

 ダンデ・L・グラーニンが辺境伯領なんつー破格の爵位と、敵から奪い返した故郷を守る権利を授けてくれた人物。

 それが皇王陛下。

 更には、大昔過ぎて記憶がハッキリしねぇが、皇王陛下へ謁見のため、確か年に数度、御父上は皇都まで出張っていたはず。


「まさか、それだけの理由で皇王陛下が犯人だなんて、言いませんよね? 陛下が精神魔法を使えるなんて、聞いたこともありませんよ?」

「別に陛下本人じゃなくてもいいだろ? 陛下の周りには確実に、その手の魔法が使える従者も居たはずだ」

「だからって‼ お爺様がそんなことをするはずがないでしょう‼」


 疑う俺に不敬だとライザードが声を荒らげるが、

「皇王陛下さえ利用されているとしたら?」

 誰も、黒幕が陛下自身だなんて言っちゃいねぇ。


「どういうことです?」

「陛下の体調不良も精神魔法による被害かもしれねぇってことだ」


 陛下を操って国教へ据えようと考えていた望福教。

 しかし、陛下は加護を厚く信仰していたとすれば・・・?


 陛下をそのまま操る事ができなかった。

 だから、地位や役職を持つ人間の中で、教会に対して信仰の薄い人間を探した。

 結果として、引っかかったのが御父上だった可能性は?


「ですが、宮廷魔法師がそのようなことをするとは思えませんが?」


 確かに、そこは問題だな。

 陛下を操ろうなんてのは、言ってしまえば国家の転覆を狙った行為。

 公になればどんな処罰が待っているかなんざ言うまでもねぇこと。


 そんな大事を引き起こそうってんなら、それだけの不満でも抱えてなきゃ可笑しい。

 だが、宮廷に仕える身であれば、給金や待遇については保証されているはず。

 それほどの不満を抱える要素がない。


「その人こそが操られてた・・・とかはどうなの?」

 バロンが思い付きを口にするが、

「精神系の魔法を使えるものは皆一様に、そういった魔法へ強い耐性を持つと聞く。あまり現実的ではないかもしれんのぅ」

 素早く教皇の爺さんグレアムが否定する。


「そいつらを操ろうってんなら、精神魔法なんかじゃなく、人質でも取る方が早いだろうな」

「そうだのぅ。家族などを操ってしまえば、間接的には動かせるかもしれん。例えば、行方不明にでもすれば不安を煽ることもできるのではないか?」


「いや、そんなまさか・・・―――」

 あり得るのか?


「ライザード。宮仕えしてる魔法使い達の名前はわかるか?」

「全員はわかるわけがないでしょう。その精神魔法が使える人物というのも見たことはありません。ただ後宮の中にでしたら、名鑑もあるでしょう」

「手に入れられるか?」

「難しいですね。貴方が言ったように、この僕の声に答えてくれるような従者はいませんので」


 なら取り敢えず、行方不明者の名簿から当たるか?

 そっちは軍にあるはず・・・ベルが無事なら手に入るか?

 なにはなくともまず行動だ。

 すぐさま連絡だけは入れて、次へ進む。

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