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side――ダンデ・L・グラーニン

「それでは・・・俺はこれで失礼します。なにかあればすぐに呼んでください」


 そう言って一礼し、部屋を後にするノクアッド侯爵家の小倅。

 あれはいい。

 聞き分けがよく、仕事もこなせる使い勝手のいい部下だ。

 この歳になって皇都の守りを担うことになるとは思わなんだし、それに見合う部下に恵まれるとも思わなんだ。


 惜しむらくはあのノクアッド侯爵の小倅という点だが、それぐらいは大目に見るとしよう。

 最近のノクアッド侯爵は外交官としても無理を言わなくなってきたのでな。

 以前は帝国相手に融和だなんだと、一方的にこちらから歩み寄れと提案してきたものだが・・・それも鳴りを潜めて久しい。

 なにがあったのかは知らぬが、北を守る身としてはあの喧しさがなくなるのは有難いことだった。

 今はグランに任せてきたが、それでまた喧しくならないかが心配だな。


 心配といえば、この今の皇都もそうだ。

 軍人が急に姿を消すなど、あってはならんことだ。

 それがよりにもよって皇王陛下のいらっしゃる皇都でなど、なぜそのようなことが起こるのか⁉

 混乱しきりといった具合が見ていられずに介入し、皇都の軍部をこの手中に収めてはみたが・・・その尻尾が掴めんとはな。


 私も老いたということか。

 あるいは、それほどまでに綿密な計画を企てたものが居るか。


 しかしそれより気になったのは、軍属であるはずの部下たちの使えなさでもある。

 命令に違反する不届き者もさることながら、命令の意味すら理解できないものが居ろうとは思わなんだ。

 これほどまでに練度が低い様子を領地に残してきたゴルドラッセが目にしようものならなんというか・・・。


 ふむ。やはり、そういった意味でもノクアッドの小倅は当たりだな。

 名前は確かベルザフォンだったか。

 ゼネスとは学年が同じということだったが・・・アレとは繋がっているのか、そのあたりはまだ不安だな。


 下手に関わられるとこちらとしても面倒なのでな。

 不用意に情報を漏洩させるような奴とも思わんが、注意は必要だろう。

 そういった理由も相まって、皇都から人が失踪する件についての調査も遅々としたものだった。

 つい最近までは―――・・・。


 こんなことを言うのはなんだが、私はこの国で英雄などと呼ばれている。

 その理由は帝国の侵攻を抑え、更には押し返し、故郷を奪い返したからだ。

 その時の功績として、皇王陛下から現在の領地と爵位を賜り、同時に英雄として呼ばれるようになった。


 つまりだ。

 私は書類仕事より、体を動かす方が得意なのだ。

 故に、部下を使いながらも、聞き込みなどにも精を出した結果、一つの鍵となる団体に行きつくこととなった。


 その団体の名は”望福教”。

 どうやらそれは教会に関係するなにかのようだというところまでは突き止めた。


 だから私はこの日。

 仕事が終わった後に、教皇たる人物グレアムと面会する予定だった。

 望福教とはなんなのか、教会とどう関係があるのか。

 それを知るために。


 しかし、

「・・・どうも、お初にお目にかかります。英雄様」

 予定の時間より少し早く、私の部屋に訪れた男に見覚えはなく。

 そして―――!

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