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side――バロン1

「それでやることがの覗きなの⁉」

 学園で意気込んでいた殿下の計画の概要を知った僕は思わず叫んじゃった。

 だって、それはあまりにも・・・あまりだったから。


「覗きとは人聞きの悪い。これは調査ですよ。今回の特別授業に裏がないのかの調査です」

「言い訳は立派だけど、要は叔父様のことを調べたいだけだよね⁉」

「この僕を教える人物の素行を知る――それは重要なことだと思うわけです。今までは好機がなかったので見送っていましたが、今回ばかりはそうではありません! 明らかに急遽決まった特別授業・・・これを生かさずして、どうするのです?」

「ダメだよ! バレるよ⁉ 叔父様はそういうのにすっごく敏感なんだから‼ バレたらなんていわれるか・・・・・・」

「その心配はありません。とっておきの人材を用意したので」


 自信満々な殿下に僕は嫌な予感を隠せないでいた。

 その人物がどんな人なのかは次の日にわかった。


「ライザード殿下。私を必要としていると聞き、馳せ参じました。いかがしましょう?」

「ああ。むこうのあの宿にいるゼネスという教師の様子が知りたい。お前のスキル:千里眼で見通してくれ」

「かしこまりました‼」


 とても忠実そうで精悍な男の人が殿下の前に跪く。

 それを当たり前のように振舞う姿は流石に皇族。


 今、僕らは南辺境伯領の領都セイルスルーまで来ていた。

 僕らの教室とその隣の教室の生徒を合わせた1年生全員で、だ。

 その引率をしていたのが叔父様と隣の教室を担当している女の先生。

 10日ばかり馬車旅で皇都から領都まで。


 慣れない集団行動と共同生活で皆が疲れているのを察してか、叔父様は御者の人と何度か話し合って移動を早めることで、この領都セイルスルーを見て回れる1日を作ってくれた。

 本当は叔父様か、女の先生が休みたかっただけなのかもしれないけれど、今日が休みだって聞いた時、僕は嬉しかったんだ。


 それなのに・・・、

「やっぱりやめようよ殿下! 折角なんだから領都を見て回ろうよ!」

「いかに栄えていようとここは領都。皇都には劣ります。皇族たるこの僕が見るべきものなど高が知れてますよ」

 殿下はどうしても辞めないつもりだ。


 バレたら僕まで怒られちゃうよ‼

 でも・・・放っておいても怒られそうだし・・・⁉


「心配には及びませんよ。バロン様。私のスキル:千里眼は、その名前ほど優れてはおりませんが、バレることもございません。数キロ先までならば、相手に悟られることなくその様子を知る事ができます。それより遠くなってしまうと正確性は下がってしまいますが、この距離であれば全く問題ありません」

「ほ、本当にバレないかな?」

「もちろんです。相手がドラゴンだったとしても、私のスキルに感づくことなどできないでしょう。ご安心を」


 本当のことを言うと、そんな言葉だけで安心はできないけれど、でも信じるしかない。なぜって、殿下が止まりそうにないから。

 これ以上は言っても仕方がないと覚悟を決めて。


「それじゃあ、バレた時の言い訳だけは考えてようね」

「なぜそこまで・・・案ずる必要はありませんよ。そうでしょう?」

「はっ‼ この命に懸けましても‼」


 その言葉を幕切りに、叔父様の様子を盗み見る時間が始まった。

 言い忘れていたけれど、僕らは宿の向かいにある、なにかわからないけど高そうな建物の中で集まっている。決して道端や路地裏で怪しい行動を取っているわけじゃないことだけは知っていて欲しい。

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