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抑えねば

 1日の休息は・・・お固い女教師を放置することもできず、見張るような形で俺も宿で待機となった。


 軍学校の様子や貧民街での人の流動を確認しておきたかったんだがな。仕方ねぇ。

 宿屋の主人に聞いた感じではそれほど悪くねぇ状態にはなっているようだ。

 まとめ役から詳しく聞ければ、その後も移民は増えたのか。軍学校へ入ったやつらがどんな生活を送ってるのか。それが貧民街にとってどういう変化をもたらしたのかまでわかったんだろうがな。

 ここでは領主の機嫌を損ねてはいねぇことと、多少なりとも治安が良くなったって話ぐらいだった。


 俺は宿の入り口にある椅子に座り、暇を飽かして次元魔法の具合を確かめたり、持ち込んだいくつかの魔法道具の動作確認をしつつ時間をつぶす。

 昼になる前と日が傾くころに女教師が外へ出ようとやって来たが、俺の姿を見るなり悔しそうに戻っていったのが面白かった。

 他の出入り口からは通さないでくれと宿屋の主人に金を積んだ甲斐があったってもんだ。


 結局新しい発見こそなかったものの、次元魔法で時間を操ることができるのは確かだった。やはり時間を止めることはできなかったが、早くしたり遅くしたりなら問題なく使えた。

 それによる物質の変化も確かめることができた。


 適当に毟った草を流れを早くした次元魔法に突っ込むと彩を失い、遅くした次元魔法に突っ込むと青々としたまま。取り込んだ位置からは動かせないものの、取り出す角度を変えられることも知った。

 時間を遡る詳細な方法については未だ不明。

 空間の跳躍についても。自身ならまだしも物質を飛ばす方法はわからず。


 ただ、光や闇の魔法を使って、別次元にある物質の影を投影したり、その影を操ったりという二次的な使い方なら思いついた。

 魔力量の関係上、俺自身が積極的に使うことはねぇだろうが、仲間と一緒に――であれば、使い道もあるかもしれねぇ。

 ま、今の俺にそんな仲間は居ねぇわけだがな。


 そうやって時間を潰していると、夕暮れ。

 続々と子供達が帰ってくる。

 その顔は晴れやかなものから、曇ったもの、濡れているものも中には。

 しかし、これといった問題はなく。

 ついぞ駆け込んでくるものの姿は見られなかった。

 皆一様に今日の思い出を話していても、訴えかけてくることはなかった。


 見覚えのある面子で一番最初に帰ってきたのはジェーンだった。

 昼過ぎには宿へ帰ってきて、どこへ行っていたのか? と聞けば、

「折角なので食事へ・・・行っていました。それとこれ」

 その目的と手に入れたものまで見せてくれた。


 手に持っていたのは真新しい磨き布と薬品。

 装備の手入れに使うものだ。

 どうやら休みの日には、そういった物のを手入れをする習慣があるらしい。


 次に帰ってきたのはビューティーとエイラス。

 なぜその組み合わせなんだ? と思ったが、

「エイラスがこの町の店には詳しいとおっしゃいますので‼」

「そうだよ! だって私は商家の娘だもん‼」

 ということで一緒に回ったらしい。


 日が傾いたころに宿へ帰還。

 それぞれの両手には買いあさったであろう大量の商品がぶら下がっていた。

 そんなに買ってどうするつもりだ? と問えば、

「お土産ですわ‼」

 そう言って胸を張る。


 帰りに買えよと伝えてやると、

「盲点でしたわ‼」

 驚愕のあまり荷物を取り落してしまうほど。


 なにやってんだか・・・と思う隣で、

「そんな――・・・」

 エイラスも絶望したような表情で荷物を落とす。

 どうせ。なんの説明もなく買い漁ってたもんだから、帰りも同じ量を買ってもらえるとでも思ってたんだろう。おそらく見て回った店もマンサ商会の傘下か、個人的な付き合いのある店だったんだろうなと想像に難くない。


 そして大取を飾るのはライザードとバロン。

 気付けば、いつの間にかライザードのお付きみたいな存在になっている甥。

 それでいいのか? と思わなくもねぇが・・・口を出すことでもねぇ。


 遅かったな? と声を掛けるが、

「時間には間に合っているはずでしょう?」

 可愛げもなく突っぱねる。

 既に日は落ちる寸前。夕闇に飲まれる空を見ながら、それでも間に合ったと言える度胸は大したもんだ。


「なんでもないよ⁉ 本当だから‼」

 俺が視線を移して、見ていたことに気付いたバロンが咄嗟にはぐらかす。


「違反はなかったと自負しています。それとも、なにか報告でもありましたか?」

 そこまで自信満々に言われてしまっては返す言葉もない。

 なにせ、なんの報告も受けてねぇわけだからな。

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