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魔法実技の授業:序

 準備中にあらかじめ設置しておいた的を起動して空中へ浮かせる。


「アレが攻撃目標だ。あの的は魔法道具であり、生半可な魔法攻撃なら直撃しても吸収される。壊す心配はねぇから手加減の必要はない。この学園に通うような連中は、入学前から魔法訓練を受けてる奴も多いだろう。やり方は自由だが、わからねぇなら只管に初級魔法を撃ち込め。的を落とせりゃ合格だ」

 1から説明するのも面倒なので、手短に述べる。


「的は人数分より多いから遠慮せずに好きな場所のを使え。屋根のある範囲から出て的に近づくと誤射の危険があるから注意しろ。それじゃ、始めていけ。やり方の分からねぇ奴と質問のある奴だけこっちに集合しろ。適性判断すら受けてねぇ奴は一番奥に並べ」

 こういえば、もっとバラけるもんだと・・・俺は思っていたんだが。


 結論から言おう。

 誰も俺から離れない。

 いや、何人かは適性判断のために奥の壁際に並んだが、自主的に的へ魔法を撃つような奴は居なかった。


「・・・どういうことだ?」

 つい口走った言葉に答えたのはライザードだ。どんな形でもコイツが長になるのは変わらねぇようだ。


「どういうもなにもないでしょう? さっきので説明したと・・・そういうつもりですか?」

「なにがわからねぇ?」

「なにもわかりませんね。あんな説明じゃ・・・まず、あの的は魔法を吸収するのでしょう? それを落とすとはどういうことです?」

「アレは魔法道具だといっただろ。当然限界がある。魔力蓄積量の限界になるまで魔法を当て続けるか、別の手段でアレを地面に叩き落とせばそれでいい。方法は問わねぇよ」

「では、壊しても良いと?」

「ああ。どうせ修理はすぐできるしな」


 別に俺が直すわけではないが、修理自体は簡単だ。

 ジーナにやらせればいい。

 アイツはあれでも学園長が。断るわけにはいかねぇだろう。

 最悪。仲間にやらせるかもしれねぇが、それは俺の知ったことじゃねぇ。


「初級魔法以外の使用は?」

「出来ると思うなら使えばいいが、周りに被害を出した場合、成績がどうなるかは覚悟しておけよ?」

「・・・まぁ、いいでしょう。であれば、あの的を落とせるという証明を。疑うわけではありませんが、自身にできないことをやれという教師の言葉ほど、役に立たないものはないと。この僕は思うのでね」

「手本が欲しいって?」

「ありていに言えば」


 どうしたもんかな・・・と、ライザードの後ろまで見渡す。

 どいつもこいつも不安そうな表情で、まるで頼りないというか。

 どこか貴族らしさにも欠ける。そんな印象を受ける子供達。


 つっても、正直な話。

 俺は最初から正解を見せるやり方があんまり好きじゃねぇ。

 特に魔法についてはやりたくねぇとさえ思っている。更に複数人がいる前では更に、だ。

 なぜなら、発想が貧困になるからな。


 魔法は想像力が全て。

 その可能性を奪うような行為をしたくはない。


 だからこそ、リミアやヨハンに教える時にはアイツらの感情だけを刺激するような方法を取った。

 とはいえ――そう、とはいえだ。

 なにをすればいいかもわからないという子供に、大人としての考えや、やり方なんかを押し付けるのも違うんだろうな。


「はぁ・・・仕方ねぇ。だが先に適性判断をやるぞ。その方が効率がいい」

「それだけが理由ですか? 本当はなにか準備が必要だからとかじゃ?」

「ああ、お前らの心の準備とかな?」

 皮肉っぽく笑って見せるが、内心・・・俺は焦っていた。


 まさか、リミアやヨハンの時のように。

 逐一丁寧に、それこそ昔の教師を真似てまで基礎から教え込まなければならないのか? ―――と。

 あの時は2人だったから出来たが、この数となると骨が折れるぞ?

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