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嬉々、解回

「やぁ! 初めての授業はどうだったかな?」

「なんでお前がいる?」

 教員室へ戻るとなぜか俺の椅子に陣取り帰りを待っていたジーナに出くわす。


「ん? 言っていなかったかい? 今この学園の代表は私だからね! ここにいても問題はないんだよ‼」

「はぁ⁉⁉」

「学園長代理というやつさ‼」

 ふふん! と悪戯でも成功させたみたいに笑いやがる。


「教師として声を掛けられたんじゃなかったのか?」

「学園長代理も兼任して・・・ね。責任者として統括するだけならまだしも、研究時間を考えれば授業は不可能。という結論に至っただけさ。けれど、そのおかげで君はこの学園の教師という立場にありつけた。悪い話ではなかっただろう? それとも、私がいることを知っていれば取りやめたかい?」

「・・・・・・いいや」

「そうだろう? そうだろうとも! 君がそういうことぐらいはお見通しさ‼ けど、そうだね。少しは驚かせてやろうという気持ちがあったのも事実。そのことは謝ろうじゃないか。すまなかったね」


「だが、これで1つ疑問が晴れた」

「どんな疑問だい?」

「生徒のことだ。お前、面倒な連中を一纏めにして俺に押し付けたな?」

「なんのことだかわからないなぁ? なんて、とぼけてはダメかな?」


「好きにしろよ。お前がそうするなら俺もそうするだけだ」

「くっ・・・この石のことだね。―――って! ちょっと待っておくれよ? ということは、君は・・・私と、その・・・っ‼」

「変な勘違いしてんじゃねぇよ‼ 事実は事実だ。それ以上でもそれ以下でもねぇ! 否定はしねぇってだけの話だ」

「なんだ・・・そういうことか。うん、まぁ・・・それでもいいさ。見合い話はもうこりごりだからね。それで、面倒ごとを押し付けたかどうか・・・だったね? 答えを言えば”その通り”だよ。他に適任がいなかった・・・というのもあるけれど」


「人員不足のせいで、か?」

「どちらとも言えないね。人手がないというのもそうだし、経験もないんだ。だから、任せられる人物が居ない」

「在籍年数の長い教師は少ないんだったか・・・」

「いや、その認識は間違っているね」

「どういうことだ?」


「恐らくはベル君から聞いたんだろうけれど、この幼少部に限っては違う。少ないんじゃない。居ないんだよ」

「居ない? って、まさか‼」

「君や私だけじゃない。どの学年どの教室も全員が新人。そう言えるレベルで経験がないんだよ。そのせいで―――見てみたまえ」

 ジーナが横に手を広げ、部屋の中へと視線を誘う。


「この部屋には君と私以外に誰もいないだろう? 皆、慣れない仕事に追われているんだよ」


 その言葉の通り。

 十数人が机を並べて仕事をするはずのこの部屋には、俺とジーナ以外の姿はない。

 既に授業終わりの鐘は鳴った後だというのに、だ。


 120分の授業を終えて、30分の休憩。

 これを幼少部では2度から3度、日に行う。

 今日は1回目の授業日ってことで、授業も1度のみ。


 本来なら多数の教師がこの部屋へ戻ってきて、明日以降の授業に備えた資料作りなんかをやっているはずの時間。

 にもかかわらず誰もいないんだ。ジーナの言う、全員が新人のようなものってのは本当のことなんだろう。


「去年度まで勤めてた教師は?」

「残っていた人員は中等部に取られたよ。それ以外は行方知れずさ」

「行方知れずって・・・全員か?」

「残っていた人物を除けばね」

「何人⁉」

「学園長も含めると15人だそうだよ。中等部、高等部を含めずにね」

「・・・・・・・・・」

 学園からの失踪者も多いとは聞いちゃいたが、ほぼ全員とは思ってなかったな。


「ちなみに、中等部からも10人。高等部からは7人の教員が消えたようだ。そこへ生徒を足すと倍以上の数が行方知れずになっているらしい」

「共通点は?」

 そう聞いてもジーナは首を振るだけだった。


「なら、そんな中で俺に面倒を押し付けた理由は?」

「信頼しているから・・・で納得してはくれないかな?」

「・・・・・・・・・・・・」

「そんな目で見ないでおくれよ。決して嘘ではないんだけれどね。一言で言ってしまえば格だよ。なにせ、大慌てでかき集めた人員だ。皇族の教育者として相応しいかどうか・・・までは、気にしていられなかったんだろう。君より家格が上の者が居なかったんだよ」


「だからって、ごった煮みてぇに上から下まで。全部詰め込む必要があったか? なんで商会の娘やら騎士爵の息子やら、果ては兄上の息子まで」

「君ならそれらをうまく使って差別を抑止してくれるんじゃないかと思ってね。聞いた話だけれど、最近この学園ではそういうことを助長する雰囲気が蔓延っていたようでね。最年少である彼らが、そういう行為を否定する姿勢を貫いてくれれば、自然とそういった雰囲気はなくなるんじゃないかと考えたわけだ」


 そんなことを言いながら、ジーナは入り口を見るように促してくる。

 振り返ってみればそこには、件のお偉い子供達が立っていた。

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