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色々ある罠

 もうすぐ夕暮れか。

 雲の影に空を見れば、悠長に話す暇はなさそうだ。

 いくらすぐそばとは言え、外壁の外。日が暮れれば明かりも乏しく何かを見せるどころではなくなる。

「手っ取り早くいくぞ。暗くなる前に戻りたいからな」

 二人はなにを? といった表情だが気にしない。

 まずは風から。

 装置に設定を入れて投げる。

 先ほどと同じように罠は爪を開いて待つ。

「ヨハン。さっき俺がやったように起動させてみろ」

「え? あ、はい!」

 いわれて、ヨハンは辺りを見回し、ちょうどいい石を・・・いや、それだと小さいな。あぁ。そんなもんだろう。手に取り、投げる。

 石は放物線を描いて装置に当たる。が、反応なしだ。

「あれ?」

「どういうことでしょう?」

「面白いだろ?」

「いえ。まったく」

 即答するリミアの目はわからないものが面白いわけないだろ! とでも言いたげだ。

「効果範囲の違いって奴だ。さっきは内側、今度は外側!」

 先に拾っておいた石を、手前の地面に投げつける。

 石は地面を跳ね、転がり、罠へと近づく。

 するとどうだ。罠まではまだ距離があるにもかかわらず、ビュオ! っと風が吹き、石を飲み込みながら穴を開けた。

「吸い込んだ⁉」

「これは・・・・・・」

「自分はもちろんだが、仲間とも打ち合わせておけば、敵にとっては得体のしれない罠でも、味方にとっては目印になる」

 見てくれからわかりやすい罠だからな。

 これ見よがしでも、あれば警戒しないわけにはいかない。

 そこに味方との連携。

 それだけでも十分な武器になる。

 どういうものか知っていれば使い道は多く、携帯性にも優れていて、単純に魔法を撃つよりは効率的な代物だ。


「他にも色々出来るぜ? 例えば・・・」

 次は火にするか。

 また罠を仕掛けて、内側に石を投げる。

 最初と同じく穴が開き、その後にゴォウ! と火が周りを包む。

「こうやって檻を作ったり」

 さらに木だ。

 やることは変わらず、今度は外側。

 転がる石を蔓が捕らえて、その真下に穴が開く。と同時に、罠は爪を閉じて地面に転がる。

 発現場所が動く変わり種だ。

「罠が当たりに行くこともある」

 2つ3つと見せるうち、二人は驚いたり感心したりと楽しんでくれたようだ。

「基本が落とし穴だから土の魔法を使ってると思われがちだが、あれは純粋な魔力で地面の土を押しのけてるだけで属性云々は関係ない」

 こういう勘違いも初期設定のミスにつながり、だからこそあまり使われてないのかもしれないが、

「逆に、魔力の方向性を変えれば、落とし穴以外にすることも出来る」

 主に落とし穴以外で使われているのは、せりあがる壁や飛び出す杭なんかが多いか・・・もっと単純に爆発するだけの地雷なんかもあるが、あれは趣味だな獲物が傷つく。


「確かに面白いです! ・・・・・・でも、なんで使われてないんですかね?」

「そうですね。今見せていただいたのは表向きで、他に使われない理由があるのでは? と思ってしまいます」

 どうにも話がうますぎる、と思ったのかそんなことを言う。

 いい面だけを切り取って話す。は、商売にはよくある話だしな。

「使われない理由は幾つかあるが、主に二つ。一つは使用するまでの過程が複雑で面倒だってこと。今回俺は簡単に扱って見せたが、それは俺が過去に罠を使ってたことがあるからだ」

 ほとんどはここで放り投げる。

 なぜなら、

「もう一つは・・・、見てろ」

 何度も罠に嵌った石を今度は何もない地面に投げる。

 二人の視線が集まる中、数秒。グワッ! っと石を中心に地面が押し広げられる。

「これって⁉」

「と、まぁこんな感じで、やろうと思えば装置に頼らなくても出来るんだよなぁ。これが」

「であれば、その装置を使う意味とは?」

「魔法の発動を意識せずに済むことと、この装置には魔力を溜めておける。だから、魔力量の少なさを補填できるってわけだ」

 それが過去に俺が好んで使っていた理由であり、今なおハンターが好んで使っている理由でもある。

「戦闘中にこういった小技を入れるのは難しい。特に仲間と合わせるのは至難の業だ。だが、最初からものとしてあったなら、作戦として使えるだろう? ついでに、当日までに仕込んでおけば魔力の消費も減らせる。それに対しての費用が常に荷物として持ち歩くってことだが・・・それほどかさばるもんでもないし、それぐらいの価値はある」

「不足を補う苦肉の策でもあるのですね」

「まぁな。溜めておけるのはせいぜい2回分程度だが、あるのとないのじゃ大違いだ。特に、俺達みたいな奴にはな」

 ふんふんとヨハンが大きく頷く。

「そろそろ戻るか。丁度いい頃合いだろ」

 その後ろに一番星を見つけたところで、話を切り上げて鍛冶屋に戻ることにした。

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