繋がりと呼ぶにはまだ遠い?
《なんだ? それは》
「宗教、宗派の1つだね。君達が神様を信じているように、神様なんていないという理念を信仰している団体の名前が望福教というんだ」
「ついでにそいつらは加護信仰を否定してて、全ての人間が平等になる方法を説いてるらしい。どっかで聞いた話と繋がる気がしねぇか?」
《わからぬとは言わぬが・・・だが奴は神になるつもりなのだぞ?》
「その後、人間の上に君臨するつもりがあると思うか?」
《なぜそのような話になる?》
「簡単に言うとだね。望福教の掲げる無神論は、加護を司る存在は神なんかじゃない! という主張の変換なんだよ。今の信仰を否定しているだけで、未来を見据えて言っているわけではないんだ。人の思いで全てが叶うと言っておきながら、信仰を集め人の上に立とうとしている集団だよ? 表向きだけを取り繕っているに過ぎないね」
「言ってることは確かだが、それじゃ省略しすぎだ。要はそのドラゴンが神として、どこまで影響を及ぼそうとするかっつー話だ。ドラゴンに対してだけ神のように振舞うんなら人間にはなんの関係もねぇだろ? そんな神は居ようが居まいが知らなきゃ一緒だ」
元来、信仰とはそういうものだ。
実際にいるかいないかは関係ねぇ。そう思って行動することに意義を見出し、価値をつけることこそを信仰と呼ぶ。
だから、そのドラゴンが出張ってこねぇんなら、実際に居ようが居まいがどっちだっていい。
《つまり、奴はいいように使われていると?》
「その逆もありうると思うよ? もしくはお互いに利用しあっている可能性もある」
「だが現状において、加護信仰は世界全体で見ても普及率が高い。それ以前に信仰を集めてたっつー精霊信仰は辺境に残ると聞く程度。対抗出来そうなのはお前が言う加護を奪うそいつぐらいだ。全くの無関係だとは思えねぇ」
《ならば、先ほど汝が言った”今は”というのは、その件が片付いたら・・・ということか?》
「惜しいな。その件の辿り着く先が恐らくそこなんだよ」
《・・・?》
意味が分からぬと首をかしげるドラゴン。
まぁ、コイツは俺達の事情を知らねぇんだから仕方ねぇ。
「その望福教ってのがここ最近、俺達の国にも手を伸ばしてきてるんだよ。そのせいで迷惑を被っててな。それを動かそうとすりゃ核心に迫るだろ?」
《我がこういうのもなんだが、トカゲのしっぽ斬りにならぬのか?》
「可能性がないとは言い切れねぇが・・・これから神を名乗ろうってやつが、そんな態度で誰から認められるってんだ?」
「けれど、一方的に利用されていた場合ならどうだい? 我関せずとなるかもしれないよ?」
「その時はその時で改めて出向けばいいだけだ。その線は限りなく薄いけどな」
《根拠はあるのか?》
「ただの人間がそのドラゴンのことをどうやって知る事ができる? 冒険者である俺達ですら、ドラゴンと対面したのは今日が初めてだ。これでも15年以上やってきたんだぜ? しかも加護を奪うっつー能力まで知ってるんだ。たまたまはあり得ねぇよ」
「確かに。それに普通はドラゴンなんて危険な存在に興味本位だけで近付こうとは思わないはずだ。そういった意味でも、ドラゴン君の側から持ちかけていると考えてもよさそうだね」
《なるほど。では、どのぐらいかかる?》
問題はそこだ。
きな臭せぇのは間違いねぇが、すぐに行動を起こしてくるとも言い辛い。
かといって、長く見積もって早まりましたじゃ対応できねぇかもしれねぇ。
「逆に聞くが、どの程度あればお前らは強くなれる?」
《ハッキリとは言えぬが、意識して記憶を呼び起せばそれなりに早く戦闘に必要な知識は得られるだろう。それを実践できるまでにかかる時間は予想がつかぬが・・・》
「そいつが居るのは北の大陸っつったよな? だったら、長引かせることはできるかもな。大陸を渡るには色々と必要になる上、幸い皇都は内陸にある。最低限の時間を確保できれば、後は時期を見て仕掛ける。それでどうだ?」
《ということは、我らの出来次第では素早く解決に至ることができると?》
「こっちを早めることは出来ねぇからそうとは言い切れねぇが、その認識でも構わねぇ。ただし、どれだけ長くても1年か2年が限界だ。お前らほど長生きは出来ねぇからな」
《良かろう》
頷き合う俺達へ向けてジーナが水を差す。
「まだ問題があるだろう? ドラゴン君・・・。君達の準備ができたとして、それをどうやって彼に伝えるつもりだい?」




