尋問と白状
「まぁ、そんなことはいいじゃないか! それより、今は他に聞くべきことがあるんじゃないのかい?」
「・・・それもそうだな」
既存魔法の事はコイツなら本当にどうにか出来そうだし、俺は俺に関係のあることを聞くべきか。
「じゃぁとりあえず、俺を襲うまでの経緯を説明してもらおうか。記憶の方がお前に聞けっつってたしな。俺が覚えたばかりの能力をいつ、どこで、どうやって知ったのか。そして襲うっつー判断をしたのは誰か。詳しく話せ」
《・・・・・・・・・》
しばらくドラゴンはどういったものかと、なにか言葉を発そうとしてはやめを繰り返し、やがて――
《汝の能力、魔力を奪う力に気付いたのは少し前だ。この山の麓にて、その力を確認した。確認したのは我自身であり、場所はここより南東にそびえる頂きの上だ。どうやったのか、などという問いには答えられぬ》
「答えられねぇ? それも世界の理か?」
《近いが・・・違う。節理と言えばそうかもしれぬがな。もっと感覚的な話なのだ。汝も風に吹かれれば気付くだろう? それと同じように、我らは魔力を肌で感じる事ができる。故に、魔力の流れや膨張・変化は察することができ、その中でも喪失については、とある理由で敏感になっているのだ》
確かにドラゴンは魔力で呼び出すことができるって話は多く残っているが、それが喪失? いや、だったら”とある理由”なんて言葉は使わねぇか。
「とある理由ってのは?」
《・・・・・・うむ。少し待て》
「あ?」
そういってからドラゴンは動きを止め、言葉も発さなくなった。
「よくはわからないけれど、誰かと会話しているようにも見えるね?」
「記憶の方と会話してるとか、そういうことか?」
「その可能性もあるね。もちろん、その可能性以外も。ドラゴン君自身では事情を話していいかを決めきれないのか・・・あるいは私達にわかりやすい言葉を選んでいるのか。どちらにせよ、待つしかなさそうだね」
やることもねぇんで周りを見渡す。
お互いに怪我はないか話し合うクライフ達とジェイド達。その関係は俺が思っているるよ親密そうだ。
まだこっちへ来て数えるほどの日数しかたってないはずだが・・・あるいは、今回一緒に死線を超えたからか? まぁ、険悪よりはいいんだろうがな。
その間に挟まるワイバーンも楽しそうで。ドラゴンに一矢報いたことがどうも嬉しいらしい。
気持ちはわかるが、あんまり自慢してると煙たがられそうだな。後でそれとなく釘を刺しておくこう。あれじゃ折角の活躍が台無しだ。
それに。台無しと言えば―――。
「・・・・・・」
「どうしたんだい?」
「いや、この惨状が俺のせいだと思えばな。申し訳なくもなるだろ?」
ここを離れて1年。
10年近くまともに訪れていなかった皇都へ帰ったときの感慨と比べれば大したことはなかったんだろうが、少しくらいは懐かしむ余地もあったはず。
それがこんなに荒らされて。
瓦礫が山を作っていれば、そんな気持ちも湧きやしねぇ。
「気にするなとは言わないけれど、君のせいだけではないよ。調子に乗ったのは私の責任もある。自分だけを責めず、少しは私のせいにしてくれてもいいんだよ? なにせ、私達はこれから――」
「じゃぁ全部調子に乗ったお前のせいだな」
「それはおかしいだろう⁉⁉」
なんつーか、いいことでも言いたそうな雰囲気だったので先手を打って潰しておいた。
これ以上調子に乗らせてドヤられても鬱陶しいからな。
そこからまたしばらく、どうでもいいやり取りの後。
《待たせたな。評議の結果が出た》
黙りこくっていたドラゴンが動き出した。
「評議? 内なる記憶と対話していたのではなく?」
《うむ。残念だが、我の意思で記憶の中から人格を呼び出すことはできぬ。その代わりではないが他の龍王達に現状を報告し、どうするべきかの採決を取った》
「離れた相手との会話・・・そんなことが可能なのかい?」
《我は次元龍。その程度、造作もない》
「もしかしなくとも、同じ方法で俺をどうするか決めたろ?」
《その通りだ。そして。なぜそうなったのかという原因について。汝らに話しても良いという方針に決まった。故に話そう。竜族に何があったのかを。なぜ、我らが排除という強硬な手段に出たのかを》
新たな魔法の可能性に目を光らせるジーナをよそに、ドラゴンはとある理由について語り始めた。




