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脈動

 垂れ幕が下りるが如く、闇はドラゴンを世界から隔絶するため滴るように空中を滑る。


 それが地面へ突き刺さるより早く、

《この期に及んで目隠しなど無意味‼ 我が息吹の露と消えよ‼》

 ドラゴンが天に喰らいつく。


 そうまでして、わかりやすく攻撃しますよと教えてくれるとは。なんとも有難い限りだ。

 俺は躊躇うことなく装置を起動させる。

 すると、ドラゴンの口元へと集まりつつあった魔力の反応が霧散する。


《なぁっ⁉ どういうことだ⁉》

 突如として魔力の制御を奪われたドラゴンは混乱し、それをさらに追い立てるヨハンの魔法。

 筒状へと変化した闇からは未だ空が望めたが、それを埋めつくすかのように弧を描く黒い手がドラゴンへと頭上から襲い来る。


《こ、コケ脅しが通づるものか‼‼》


 ベタベタと降り注ぐ黒い掌がドラゴンを守る壁へと張り付き、虹の光を汚す。

 美しく見える光すら、闇に浮かべば不気味に映る。

 その闇が蠢き、纏わり付き、這いまわるのなら尚更だ。


 だがここで、ドラゴンは安心したはずだ。

 竜の息吹こそ邪魔されたが、防御壁は問題なく使うことができたと。

 これがある限り、自らに死の恐怖はやってこないと。


 そう一息をついたはずだ。

 その心の隙間に光を差し込む。


 青白く、透き通るような、揺らめく光。

 張り付く闇を、爆ぜ、押しのける光。

 執念深くしがみ付く闇の隙間から、命をよこせと灼けつく光。


 それはエリックが威力のみを追い求めて作った魔法”イフリートファウスト”より高い温度の炎は赤ではなく青く燃え、その炎に包まれた生物はまるで、青き炎の魔人に握りつぶされたかのように跡形もなく燃え尽きる。

 それでも尚、光の壁を侵食しようとする闇と、それすらも焦がす炎の中で。あのドラゴンはどんな顔をしてるんだろうな?


 混乱は緊張を。緊張は恐怖を。恐怖は・・・いったいなにを呼ぶのか。

 俺がその答えを突き付ける。


 細く、長く、息を吐く。

 研ぎ澄ますように、削ぎ落すように。

 想像するんだ!

 その、壁の向こう側を‼

 そこに在る――自分の姿を‼‼


《なにが⁉ なにが起きている⁉ なぜ‼ 汝がここへ⁉ 我が守りは――っ⁉⁉》


 軽く。飛び上がるように地面を蹴った。

 仲間の力をその目に収めながら。

 だが今、俺の目の前にあるのは気に食わねぇトカゲモドキのその面。

 残された魔力のありったけを注ぎ、有り余る腕力に全霊を込める。


「なにが起きてるか? 気になんなら確かめてみりゃぁいいんじゃねぇか⁉ それが出来るもんならなぁ‼」


 ただ強く。強く。拳を振るう。

 1撃で頭は地に伏せ、続く2撃目で大地に埋まる。

 追撃の手を緩めることなく。言葉を発する猶予すら与えはしない。


 殴り、蹴り、叩き付け、踏み砕く。

 その度に。

 割れ、砕け、ひしゃげ、飛び散る。


 なにが・・・なんざ言うまでもねぇ。

 硬い岩盤を誇るアドレスの岩肌でさえ、そうなってるんだ。



 なのに―――。

《・・・・・・汝、なにをした? 答えよ》



 死にそうなやつの目じゃねぇだろ・・・それは。

 荒れた岩肌をものともせず起き上がるドラゴンの姿は悠然としていて。

 どこか風格や貫禄のようなものを感じた。

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