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模擬戦 解説

「・・・虚像か」

 自ら背中をさらした教官が振り向く。

「背後を取るには有効でしょう?」

「いつから狙ってやがった?」

「そりゃぁ、いきますよ! って言った瞬間からですよ」

「ということは一発目も・・・?」

「もちろん。わざと似たような構図にさせてもらいましたよ」

 ふーむ・・・と考え込む教官。

「あの雷撃はなんのためだ?」

「目くらましですよ。仕掛けを隠すための、ですけどね・・・」

「蔓と・・・光か?」

「後は火と土もですね」

「そぉだ、足元! 燃やす意味はあったのか⁉」

 ネタ晴らし的に答えると、気になっていたことを思い出したんだろう。ハッ! として食いつく。

「あれは足元を見え辛くして土魔法の仕掛けを隠すのと、その後の氷の壁を溶かすためですね」

「土魔法ってのは、ワシが最後に聞いた・・・?」

「ええ。足音替わりです」

「だが、氷を溶かす必要はあったのか?」

「流石に光と影だけじゃバレますよ。壁に映すわけですからね。その点、蜃気楼なら風魔法で動かしやすいし、氷の壁に影を走らせても違和感の正体までは分からないでしょう?」

「素直に土の壁でよかったんじゃないか?」

「土の壁でも壊してましたか?」

「・・・・・・回り込んだだろぉなぁ」


 思い返して、言う。

 俺も同じことを考えた。

 教官は左を前にして構えていた。最後の一撃は反時計回りに斜め下からの横薙ぎ。

 だが、回り込むとしたら?

 せっかく視界の端に影を見せることで気を引いたのに、壁に隠れたという情報で止まってしまう。

 そして、壁を正面に見据えるはずだ。

 そうなれば、すぐ隣にいる俺はしゃがんでるだけにマヌケでしかない。

「一回目は雑に対処して痛い目を見た。にもかかわらず、二回目も同じことはしないでしょう?」

「そぉだな。すまん」

「それでも、壁の向こう側が見えてるなら同じような行動になる。まぁ、見えてたのは幻だったわけですけど」

「・・・むぅ」

 それを聞いた教官は苦い顔をして息を漏らす。

 二度、同じようなことに引っ掛かる。

 これはまぁ・・・屈辱だ。

 それは戦場でも、あるいは子供の遊びでも。


「はぁ・・・教え子の成長を感じられて、ワシは幸せだよ」

 まったくそんなことを思っている顔ではない。

「なにか不満でも?」

「いいや? なんにも。しいていやぁ・・・ここまで出来んのになんで半端なまま帰って来やがったのか、ってことだが・・・」

 俺を見て、

「てめぇで決めたことだ。ワシが口出すようなもんでもねぇ・・・なにより、」

 笑う。

「いい顔になったじゃねぇか! 戻ってきた時のしけた(つら)は見れたもんじゃなかったからなぁ!」

「・・・・・・別に、顔なんざ変わりませんよ」

 心当たりがないわけでもない。

 だが、そんな顔をしてたのか?

 だとしたら・・・?

 いや、考えるな!

「んなこたねぇーよ! 朝一から呼び出しておいて、なぁんか考え込んだ顔で・・・その癖、戦い始めてからも迷ってばっかな顔してやがってよぉ!」

 そんなもんまでわかるもんかよ⁉

「お前さんは昔っからそうだ。いーっつもなんか考えてる。もっと楽にすりゃぁいいのによぉ」

 がはは、と笑う教官相手に、嫌味の一つでも言おうかと思ったが・・・今はなにを言っても、だろう。

 口寂しさに、用意だけはしていた魔力回復用の丸薬を放り込む。

「なんだ? そんなもんまで用意してたのかぁ?」

「まぁ一応」

「そんなもんがあるんなら魔法の威力ももっとあげりゃぁよかったじゃねぇか!」

「そんなことしたら、縛り破りだつって自分の勝ちだとか言い出す人を知ってるんでね!」

「そんな奴がいるのか!」

「アンタが昔、言ったんだろうが‼」


 と、くだらないことを話し始めたころ。

 アッ! と教官が、

「そんなことより、よかったのか?」

「なにが?」

「なにがって、そりゃぁ――」

 なにかを言おうとしたところに、

「すごいですね‼ すごかったですよ‼ 先生!」

 かなり興奮気味のヨハンに続けて、

「えぇ。大したものでした・・・。なにをやっていたのかは、わかりませんでしたけど」

 リミアが来るなり一刺しくれた。

 教官の顔を見ると、だろうなぁと目で語っていて・・・。


 わかりやすさって大事なんだな。

 と、気付かされることになった。

最後の二行は身に染みる。

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― 新着の感想 ―
[一言] そりゃあ、見えないよね 初心者だもん(//∇//)
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