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便りなきは届かぬ言葉

 そこからはあっという間だった。

 リミアは先生の名前を聞かれ、戸惑いながらもゼネスの名を出すと、おっさんを含めた全員がワッと盛り上がった。

 その後はそれぞれが自己紹介をはじめ、あれよあれよと宴の様相を呈し。


 ジェイド達はサルベージに到着した初日の昼過ぎから、ゼネスの元パーティーメンバー。”進歩の歯車”のクライフ・アンナ・エリック・フェリシアの4人と、工房主を名乗ったおっさんアルガムに囲まれて、酒盛りに巻き込まれるのだった。


「まさか・・・たった足らず1年で教え子がここまで来るなんて、考えても無かったな。やっぱりアイツは凄いな」

「それならそれで、ギルドの位置くらいはちゃんと教えておきなさいよね。それとも当てつけなの? アタシ達がここにいるって知ってて・・・なんて。ありえないわね。最近は手紙すら寄こさないし」

 クライフの感嘆に水を差すようなアンナの言葉。

 ありえない妄想であるはずだが、ゼネスならもしかするか・・・? と思わせる信頼がそこにはあった。


「流石に忙しかったんじゃないですか? なにしろ、教え子がこうして目の前にいるんですから。この短期間で育てたなら、他に気が回らなくても仕方ないと思いますよ?」

「それでも近況の報告くらいは欲しいかと。教え子をここへ送り込むのならなおさらです。なにか一言くらいあってもいいと思うのですが・・・」

 2人のやり取りにエリックが納得出来そうな線引きをし、フェリシアはそれでも不満だと述べる。


 これだけで。傍から見ているだけのジェイド達にも、この4人がゼネスを大切に思っていたことが見て取れる。

 そして、そこには自分達が知らなかったゼネスの姿があるんだなという実感が、少しばかり胸に刺さる。


「おめぇさんら。気になるんなら、自分達だけで話さずに新入りに聞きゃいいじゃねぇか」

 そんな気持ちを知ってか知らずか、工房主アルガムが橋渡しをする。


「それもそうか。じゃあ聞きたいんだけど・・・俺達について。アイツから、なにか聞いてたりしないか? それと、ここへ来る前のゼネスはどうしてた?」

「進歩の歯車のことはちょっと聞いたぐらいで個人の話は別に・・・アイツ自身はギルド本部からの呼び出しだって言って、途中で山を降りたぞ」

「ハァ⁉⁉」

 ジェイドの返答にアンナが叫ぶ。


「本部ってチャード集合国よね⁉ そんなすぐ近くまで来てるなら顔ぐらい見せにきないさよ⁉ しかも、連絡すら無しって‼」

「これは許せませんね。抗議しましょう。私は教皇様から、ある程度の事情はお聞かせいただいてましたが、今回のことは知りませんでした。ゼネスさんにも、教皇様にも、どういうことかご説明頂かないと・・・」


「待って? なんでその教皇様? からの連絡のことをアタシ達に話さないのよ?」

「教皇様から連絡があること自体が機密事項ですので」

「だったら今! 漏らしてんじゃないわよ‼」

「それはついうっかりです」

 憤慨する2人? を、まぁまぁとエリックが宥める。


「それにしてもなんの呼び出しだろう? ゼネスさんならなにをやっててもそれほど驚かないけど、僕らにも関わることかな? なにか知らない?」

「申し訳ありませんが召集の理由までは存じ上げませんわ! ですが、以前から催促はされていたみたいですわ!」

「そっか・・・ありがとう」

「いえいえですわ!」

 エリックは質問に答えてくれたキューティーへお礼を言いながら、変わった話し方だなぁという。さも当然の感想を抱いた。


「おめぇらも。折角の機会だ。気になることや聞いときたいことがあれば、今の内だぞ?」

「であれば、まずギルドの場所を――」

 アルガムの提案にリミアが正直な質問をするが、


「そんなもんは後でいくらでも教えてやる! なんなら連れてってやるから、もっとベテランの先輩に聞いておきたいこととかあんだろうが‼」

 残念ながらお眼鏡に敵ず。

 早いところ今日の予定を済ませておきたかったジェイド達一行の願いも叶わず。


 足りないなにかを補うために。質問合戦へと発展していくことになる。

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