質問攻め2
「まぁいい。この際だ。気になることは全部聞け。答えられる範囲で教えてやるよ」
これが最後の機会。
そう思うと、俺自身の粗も目立つ。
ヨハンに感じた認識の甘さは、つまり俺の教え忘れ。怠慢の結果とも言われるわけだからな。
こいつらが無知でかく恥は俺の恥。だから、そう提案したんだが・・・――。
全員が考えるようなそぶりを見せた後、
「私はさっきの一匹怒り熊の毛皮が気になったわね。ジェイドの解体の仕方が悪かったものあるかもしれないけれど、ゼネスさんが処理したものを隊商の人達が絶賛していたのはどうして?」
「私は魔力操作のコツをお聞きしたいですわ! 一気に開放だけではすぐに魔力が切れてしまうのです! どうすればあのような細々とした魔法を使えますの⁉」
「ジーナ様と、どういう関係? 今、どこにいるか知ってる? 出来るなら紹介して欲しい・・・」
「この鎧を着た状態で魔法を使おうとすると、どうやっても身体が重くなるんだが、なんかコツとかあんだろ⁉ そういうのは最初から俺様に教えておけよ‼ おかげでタイミング逃したじゃねぇか‼」
「ああ~‼ え~っと、僕は・・・・・・」
ドッ! と押し寄せるようにジェイド達が前のめりに質問する中、ヨハンは直前に質問をしていたから遠慮したのか、あるいは咄嗟で出てこなかったのか曖昧に言葉を濁す。
一泊遅れて、
「私は南の霊峰について知りたいですね。冒険者の間では特別な呼び方があると聞いたはずですが・・・未だにそれすら教えていただけてないので」
リミアがその場の全員に言い聞かせるように、ハッキリとした口調で話す。
自然。視線が一度集まり、今度はこっちに集まり、同じくとでもいうように一同頷く。
そういえば、こいつらが出発する前にはそこらの話もしておくか・・・なんて考えていたが、本部招集が急展開過ぎてすっかり忘れてたな。
「じゃぁまず、南の霊峰について・・・からでいいか?」
「是非」
さっきみたいに一気に聞かれても、全部同時には応えられないからな。一応確認を取って、リミアが促すのでそのまま話を続ける。
「南の霊峰。チャード集合国を囲む山々の一角。北側に存在する一際大きな火山を中心とした地域を指す。貴重な鉱石類や結晶体の他、希少な樹木や花々、そこにしか生息してねぇモンスターもいると言われる場所で、冒険者たちからは神聖な領域だと認識されている。我らが皇国はそれより北に存在するため、こっちでは南の霊峰と呼ばれている」
「そこまでは以前に聞いた気がします」
「そうかもな。それで、一部冒険者の間でなんて呼ばれてるか・・・だが。その名も《アドレス》意味はいくつかある」
「アドレス・・・・・・」
「元は所在地って意味だったらしい」
「所在地って・・・”なんの”ですか?」
ヨハンが素直な疑問を口にする。
「あの山を神聖たらしめる存在・・・人より長く生き、人より多く知り、人より強く成る存在。つまりは”ドラゴン”だ」
「「「ドラゴン⁉⁉」」」
ジェイド達の声が重なり響き、その声に驚いたのか御者が振り返って、こちらの様子を窺っていた。
いや、ドラゴンなんて名前が出る話の内容が気になったのかもな。
「ドラゴンって! あの、ドラゴンか⁉ 作り話じゃねぇのか⁉」
「人より高次元に存在するっていう、あの⁉」
「魔法の元素を司る・・・ドラゴンは存在、する・・・?」
「人語を話すというのは本当ですの⁉ 何語ですの⁉」
「先生はドラゴンと戦ったことあるんですか⁉」
「ドラゴンですか。教会の教えにも出てきてましたね、確か・・・・・・。ですが、まさか実在するとは。嘘ではないのでしょうか?」
「だから‼ そんな口々に言われたって全部同時に答えられるわけねぇだろ‼」
後、ドラゴンに出会ってはねぇから人語を話すかは知らねぇし、戦ってたらここにいねぇんだよ‼ 心の中だけでそう突っ込んだ。




