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餞別1

「まぁいい。どうするにしても、今すぐ決めろってわけでもねぇ。迷ってるならしばらく休んでから決めればいい」

 悩むな! 迷うな! ってのは大人のエゴだ。

 そうした方がいいのは間違いないが、悩むことや迷うことにも意味はある。大人にはその時間が惜しいってだけなんだ。


「お前ら2人が今後もこのパーティーでやっていくのかも含めてな」

 ヨハンとリミアは元々ソロ志望だったはずだ。

 いつまでパーティーとして活動するのか、あるいはソロを諦めるのか。

 その辺りも先行きついでに見定めてみるのもいいだろう。

 言われた当人達はそういえば・・・と、今思い出したみてぇだけどな。


「じゃぁ今日はこれで解散――といきたかったところだが、一人前になったってことで餞別を用意した。名前を呼ぶから順番に取りに来い」


 これもよくある儀式だ。

 親元から手を離れる子供へ・・・ってな感じで、卒業時にはこれからに役立つなにかが送られる。

 普通ならもっと早く、C級の頃には行われるべき儀式だが、期間的にはむしろ早い。普通は1年も経たずにB級まで駆け上がることはほとんどねぇからな。

 だから、このタイミングでもおかしくはねぇだろう。


 問題はC級とB級じゃ送る”なにか”に大きな違いが出ること。必要になるものが違うからな。

 だがまぁ幸いなことに、俺は引退して日が浅い。

 なにより、使わなくなった道具類も売らずに残しておいたしな。それなりのものを用意できたと思う。


「ヨハン!」

「あ、はい‼」

 地面に置いていた幾つかの背嚢の中からヨハンに渡す道具を取り出す。


「こいつは俺が昔使ってた罠だ。お前が使ってるのより容量がデカくて2,3回連続で魔法を発動させることが出来る。使いやすそうな魔法を適当に設定しておいたから、色々試してみろ。ただ、容量がデカいってことは充填にそれだけ魔力が必要になるってことだけは忘れるなよ」

「これを実際に先生が使ってたんですか?」


「あぁ。俺が使ってた設定も中に残ってる。実家を出る前にしっかり整備は済ませてるから不具合なんかはねぇはずだ」

「先生と一緒に戦ってきた道具なんですね・・・大事にします‼」

「今までのと一緒に使うつもりなら、咄嗟の時に間違えねぇように工夫しておけよ? 魔力の補充についても、全部自分でやる必要はないからな」

 その他、持ち運び用の袋だったり、魔力回復の薬を入れておくジャケットだったり、細々とした装備もまとめて渡した。


「次! リミア!」

「はい」

 荷物を両手に抱えたヨハンと入れ替わるようにして前に出る。


「お前にはこれだ」

「ネックレス・・・でしょうか?」

「そうだな。アミュレットっつーかタリスマンっつーかは微妙なところだが」

「なるほど、お守りということですね」


「そうだ。そいつには俺のギフトがねじ込んである。つっても、完全な能力じゃねぇ。精々、装着者とその周囲の加護を底上げする程度の力しか持っちゃいない。だが、そんなもんでも教会関係者にとっちゃ垂涎の代物だ。もし、お前が教会についてなにか知りたいと思った時、調べたいと思った時には、そいつを餌にすれば上手く行くかもしれねぇ」


 下っ端は見向きもしねぇかもしれねぇが、教会で偉くなるには加護のレベルが必要だ。少しでも上に立っているなら、この首飾りの価値を理解するだろう。

 後はそこを糸口に交渉するだけ。

 リミアの交渉力については、これからも磨き続ければいいとこまで行けるはずだ。

 まぁそれ以外じゃちょっと運が良くなる程度の効果しかないが、役に立たねぇってこともねぇだろ。


「わかりました。いざという時にはこれを囮に願いを叶えて見せましょう。譲渡しなくても見せるだけで効果がありそうですし、交渉についても少し考えてみます」


 本気で餌にした上で、その餌すらもやらねぇつもりとは・・・随分太く育ったな。

 これなら本当に心配は要らねぇのかもしえれねぇな。


 とかなんとか考えながら、空になった背嚢を片付ける。

 2人はそれなりに嬉しそうな顔をしてくれたが、残るは4人。どんな顔をするのやら・・・。

暑い。しんどい。

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