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餞別の前に

 それから数日後。

 特別問題も発生せず、俺達は皇都へと帰り着いた。


 途中、荊棘の庭園で冒険者マッターやその妻モォーリーとも会ったが、別段これといったような出来事はなかった。年末年始ってことで、なにかと忙しそうではあったな。

 ジェイド達は町の住人達に覚えられていたようで、世話になった人達に囲まれてたな。


 それはさておき、

「ここで解散だ。今回の旅では予定になかったことばっか起こったが、結果としてはいいものになったはずだ。俺が抱いていた目標は少々的外れだったらしいが、B級への昇格など。得られたものはあったと思う」

 皇都の北門近くにある広場でジェイド達を解放する。


「B級昇格に際して、これからの活動をどうするのかは自分達で決めるんだ。説明しておいた通り、皇都に残ったところで実入りはほとんどねぇ。とはいえ俺がお前らに、南の霊峰を目指せ! っつーのも、おかしいからな。東西に用があるってんなら行ってみるのもいいだろう」

 北だけ除外したのは今回行ったからってのもあるが、あんまり冒険者自体に需要がないからだ。


「ただ、以前にも言ったはずだが東西の冒険者は質が良くない。特にC級以下には気をつけること。国を跨げばまた話は違うが・・・国境越えは面倒事も多い。するつもりなら事前の情報集めはしっかりな。南へ向かうなら、商隊に相乗りさせてもらうと楽だぞ。そこでコネを作っておけば、特別依頼にも繋がるかもしれねぇから、出来るだけ愛想よくしておくのがいいだろう」


「本当に・・・皇都に残るのは無しなのかよ?」

 この間からそればっかだな? しかもジェイドが。

 最初は俺から教わることなんてねぇ! って感じだったし、その後も早く俺様を認めろ! そうしたらさっさと冒険に行くんだ! って言動だった気がするんだけどな?


「それを決めるのは俺じゃねぇ・・・が、考えてもみろ。冒険の最前線たる南の霊峰で過ごす1年と、この皇都で過ごす1年。危険なのは霊峰だが、その周りには多くの冒険者。強いモンスターとの戦闘。珍しい素材や見たことねぇ宝だってあるかもな。かたや皇都はどうか? 安全ではあるが、依頼すら満足に受けられず、かといってモンスターの素材が高く売れるわけでもなければ、ベテランに囲まれて得られる技術や情報があるわけでもない」


 同じ1年を過ごすなら、どちらが自分達の為だろうか?


「でも、先生はいますよね? 色んな人から話を聞いても、それが正しいかはわかりませんし、別の人から全く違う答えを出されて戸惑うことだって、あるんじゃないですか?」

「答えが違うのは当然だ。その中から自分に合った答えを探すんだ。俺だけからしか聞けねぇのと、他の誰かの答えも聞いた上で俺の答えを選ぶのとじゃ全然違うだろ? なにより、つい数か月前のことを忘れたのか? 俺だって、ずっと皇都にはいねぇんだぞ?」


 サンパダの護衛としてガルドナットへと同行していた折りには、長いこと皇都を留守にしていた。

 その間は教官達がこいつらを見てくれたらしいが、俺がこいつらを放置していたことに変わりはない。


「そうよね。理由はどうあれ、私達だけの相手なんて不可能だもの。でもそれって、人数が居れば空いてる人に対応してもらえばいいだけの話なのよね」

「ですわね! 私も師範がお忙しい時には姉弟子にお話を聞いていただきましたわ!」

「人材不足は・・・ギルドの怠慢、かな?」

「否定は出来ねぇ。ギルドの人員が不足してたから俺が教育係なんてもんに任命されたぐらいだからな。とはいえ、それを怠慢っつーのは教官が可哀想だからやめてやってくれ。出来るだけのことはやってるはずなんだ」


 忘れがちだが今の冒険者ギルド皇都支部は、誰かからの圧力を受けて規模が縮小気味なんだ。

 それを怠慢と言われちゃギルドマスターたる教官の立つ瀬がない。


「では力不足ということでしょうか?」

「より酷くなってるじゃねぇか」

 事実が過ぎる故、リミアの的確な指摘は訂正出来そうになかった。

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