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レベルダウン

「なんですか? それ」

「こいつは簡易鑑定機・・・っつーところか。ガルドナットからの帰りにサンパダの協力を得て、ワンダーゴーレムの瞳から削りだした石に鑑定のスキルを落とし込んだ魔法道具だな」

「ということは、それを持ってれば誰でも鑑定のスキルが使えるってこと? とんでもない道具だと思うんだけど、大丈夫かしら?」

「別に量産、販売するわけじゃねぇし、能力についても簡易的なもんだ。骨董品の価値を調べたり、嘘が暴けるほどじゃねぇ。精々ギルドカードの更新が出来るぐらいだ」

「なら、大丈夫・・・なのかな?」


「おい、待てよ。それがあれば俺達の更新料はかからねぇんだよな? だったらさっきの話は――」

「以前にも言ったと思うが、ギルドの資金繰りに深く関与してるのがカードの更新料だ。それを俺の勝手で踏み倒していいわけねぇだろ」

 ジェイドの言うことは確かだが、認めちまうとこいつらの旅立ちの妨げになるからな。尤もらしいことを言って納得させておくしない。


「ではなぜ、そんなものを作ったのでしょう?」

「・・・・・・」

 そう言われると、困ったな。


「あー・・・・・・作れると、思ったから?」


 いや! 本当はもっとちゃんと鑑定のスキルが使えると思ったんだよ。そうすりゃ嘘を見抜くのに表情だとか声色だとかを気にしないでも良くなるし、こんなものがあるって見せるだけでも抑止力になったんだ。

 ただ、いかんせん思ったほどの性能にならなかった。ワンダーゴーレムの瞳なんて最上級品質の素材を使えばあるいは・・・と、思ったんだけどな? 期待していた出来には届かず、なんとも使い道のねぇ道具になっちまったってのが真相だ。

 だからこそ、ついさっきまで忘れてたわけだしな。


「呆れますね。どれほど優れたものであっても、使い道がなければ意味がないでしょう」

「かといって、だ。さっきも言った通り、カードの更新料ってのはギルドの収入源だ。それをギルド職員の俺が減らしていいわけねぇだろ?」

「であれば、今回のことはなんなのでしょうか?」

「そうだな・・・今回は特別。まぁ餞別ってところか」

「それならばもっと別の、形に残るものの方がよほど嬉しいのですが?」

 思いつきの言動をリミアにガン詰めされるが、心配されなくともそういうのも用意してある。つっても、まだ内緒だが。


「検討しておく。今はとりあえずギルドカードを出せ」

 カードの更新自体は悪いことじゃない。

 B級になってから、まだ1度も更新をしてねぇこいつらは、自分のギルドカードにB級の文字を見てねぇわけだからな。それを見れば、自身の成長を実感し、果ては旅立ちについても理解できるだろう。


 各々がカードを取り出し、一番速かったのはヨハン。

 ヨハンが手に持つカードの上から、鑑定機をかざして魔力を通す。

 半透明な石の中に一瞬、照準のようなものが浮かび上がり、僅かな発光を見せたら更新完了だ。


「どうだ?」

「はい! ちゃんとB級になってます‼」

 思惑通り、目に見える成果に興奮している。

 気持ちはわかるなぁと昔を思い出すのも束の間。残りの面子も我先にとカードを突き出してくる。

 それを次々に鑑定してやって、全員が自分のカードを見つめる時間が訪れる。


 しかし、

「あら? おかしいですわね?」

 キューティーがなにかに疑問を持つ。


「どうした?」

「私のレベルが下がっているのですわ! この間まで80でしたのに、今は65になってますわ! どういうことですの?」


 その声を聞いた全員が。上げていた顔をもう一度、自分のギルドカードに向け、

「こっちもです」

「私の方も」

「俺様もだ!」

 確認の結果。目出度く全員が同じようにレベルが下がっていた。


 まさか全員にレベルダウンが起こるとは・・・それだけ成長速度が速かったってことか。エリックやフェリシアでさえ起きなかったってのに。

 俺を含めて、初めて見る現象に全員が動揺を隠せなかった。

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