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side――栄光ある騎士団4

 わかる・・・?

 わかるぞ! なんだ? これ!

 俺様の中で言いようのない、変な感覚が広がっていく。なんというかこう、お互いを感じる・・・というか。


 いや、でもそれどころじゃない‼ これは⁉

 この感覚がなにか――は後回しだ。


 エイラがやばい!

 敵が仕切り直したのに気付いてねぇ! そのせいで囲まれるぞ⁉

 けど、どうする⁉ 俺様だけじゃ・・・‼

 目の前には3人と2人と1人。


 3人はずっと正面にいる槍持ち。特別強くもないし、抑えるだけなら言われた通りに左右の槍先にだけ注意して剣と盾を動かせばいい。

 真ん中の奴は見なくていいんじゃなくて、気にしなくていいんだ。何かしようとすれば盾の向こうからでも見える。対処するにしても、それからで間に合う。


 2人は正面の両脇にいる素手の前衛。槍がないのは直前にぶっ壊されてたからだろう。俺様か、それとも後ろの2人を狙ってるのかまではわからんが、どうにか俺様の後ろに回ろうとしている。

 といっても、しているだけで成功の兆しはないがな・・・俺様だけじゃなくケイトが牽制してるからだ。時折バチバチと光が爆ぜるのが見えてる。


 そして残りの1人が後衛。魔法での援護役なんだろうが、なにをしてるのかさっぱりだ。攻撃魔法が飛んでくるわけでもなく、目の前の奴らが強化されてるわけでもなさそうなんだよな。これもケイトがなにかやってるのか?


 とにかく、こいつらのせいでエイラの方に動けねぇ!

 風の魔法もまだ形には出来てねぇし、俺様にはどうしようもない‼


 ヨハンの周りに敵はそんなにいないが・・・遠いか? 全体的に敵の連携を抑制するために広がってたからな。

 キューティーの方は・・・逆に敵が密集しすぎてる。かく乱の意味もあったが、15人以上を振り払ってエイラの側に近寄れるか?


 くそ! 蟻の時みたいなのだけはごめんだぞ‼

 全部、誰かにただ助けられるなんてのは‼

 自分達で手に入れるのが失敗だけだなんてのは‼ 絶対に‼


 だが、そうは思っても時間は止まらない。エイラの逃げ場は順当に奪われていく。

 ただし――。


 ピクリと首筋を突き刺す感覚。

 またこれだ! さっきの! でも、これは・・・⁉

 ヨハンが動く‼

 黒いなにかが立ち上がる寸前、それがわかった。


 さらには。

 そんなに速く動けるのかよ⁉

 赤光一閃、軌跡を焼き付けるようにエイラの下へ飛び出すキューティーにも気付いた。

 ヨハンは俺様の後ろから回り込んでる。エイラとキューティーは合集合した。


 だったら、

「ここだぁああああああ‼‼」

 まだ全然不格好な風の魔法まで使ってでも、今敵を押し込む‼


 少しでも敵を密集させれば、大多数を魔法で倒せる!

 そうすれば、エイラ達も助けられるだろ‼




 ジェイドが怒る以外で大声を上げるなんて珍しい。

 でも、それだけ力が入る場面なのも理解できる。

 エイラが危なかった!


 山のようにそびえ、波のように流れる影をヨハン君が作ってなかったら、地上に倒れる火柱をキューティーが作ってなかったら、エイラは無事だった?

 エイラがやっきた事の代わりを、今日は私がやるんじゃなかったの⁉

 それなのに・・・‼


 ううん。不甲斐無いと思ってるのはたぶん、みんな一緒。

 ジェイドだって、キューティーだって、苦手なはずの魔法を使ってでもエイラを助けに行ったんだ。

 私だって! 私の方こそ魔法が得意なんだから! それしかないんだから‼ だから―――‼

 でも、今は私1人じゃない。


「リミアちゃん・・・悪いけど、合わせて」

 どうしても。確実に。

 変えようもない勝ちが欲しい‼




 戸惑ってしまいました。

 全てがいきなりすぎるでしょう!


 徐々に、ですが。相手の動きがよくなっていたのはわかっていました。

 それをどうするのでしょうか? と思って見ていたのですが、まさかあれほど力尽くで動くなんて・・・。

 しかも起点を作ったのがヨハンというのがまた驚きました。

 ああいった場面でそれほど思い切った行動をとれる印象がなかったので、意外でした。


 そして、さらに意外だったのがケイトさんからの”合わせて”という言葉。

 どちらかといえば、ケイトさんが率先して周りと合わせることの方が多かったのですが、心境の変化でしょうか?

 どちらも仲間の窮地がそうさせたのでしょうけれど、その一面には心強さを感じますね。いざという時に頼りに出来る気がします。


 しかし、合わせる・・・というのはどうすればいいのでしょうか? 表情からなにか読み取れないかと視線を送ってみたのですが、前しか見ていない様子。

 ふとその先を追うと、そこには雷雲が。

 ヨハンが作り出した闇から引っ張り出したような真っ黒い暗雲が、敵の頭上に立ち込めていました。


 なるほど。

 雷の特性は、力は強いが制御しにくい。そこへ、力は強くないが制御しやすい水の特性を合わせて、帯電した雨を降らせると。そういうことですね。

 であれば、私はより正確に狙いをつけられるように。特に仲間の位置には気を付けないとなりませんね。巻き込んではいけないので。


 ですが、今日は大丈夫でしょう。

 いつもなら、神経をすり減らして集中するところかもしれませんが、なぜか今日は仲間の位置が特によく分かるのです。だから大丈夫なはずです。

 なぜかはわかりませんが。

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