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重ならず者

 後ろのことを気にしなくていい・・・ってのは楽なもんだ。

 虚勢を張ってるだけなら注意深く意識を裂かなきゃならなかったが、あいつらのあの態度。自信に満ちたその声を聞けば、勝算があるかどうかぐらいはわかる。

 なにを基にそう判断したのかは知らねぇが、俺のやるべきは目の前の連中を抑えること。

 ただまぁ、それがそれがそう簡単にはいかねぇのが厄介なところだ。


「止めなくともよろしいので?」

「ああ。お前の後ろにいるような腰抜け共しかいねぇなら心配ねぇからな」

 なにをっ⁉ と反射的に現れる怒気を。小さく手を上げるだけで黙らせられる辺り流石は軍団長。


 だが、

「だってそうだろ? あの処刑の時。口に手を当てて目を逸らす奴がどれだけ居た? 吐いた奴は? 後ろにいるガキ共ですら、そんな醜態さらさなかったぜ?」

 豊富な実戦経験があれば、必然的に生物の死には多く触れているはずだ。国教を守る軍人なのだから。


「耳の痛い話ですな。最近ではモンスターの解体すら業者に取られているので中々・・・。ですから、今一度。戦争というものを知らしめなければならないのですよ」

「そんなくだらねぇ理由で、全国民を巻き込むつもりか? 勝てるかどうかさえわかりゃしねぇのに?」

「そうですな。勝てるかどうかまではわかりません。しかし、負けることもないでしょう?」

 例え戦端が開かれようとも。傷口が燃え広がるより先に、今と同じで鎮火すると。そう言いたいらしい。


「そんな保証がどこにある?」

「そうでなければ、今の状況はありえません」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」


「これ以上は話しても無駄か」

「最初からわかっていたはずでは? それに、戦争を望んでいるのはゼネス様もでしょう?」

「なんで俺が―――」

「―――なぜなら、あなた様は。この地の民に痛みを理解させたいのですから」

 知ったような口ぶりに、眉が動く。


「そうだな。俺は知りもしないことをわかったふりする奴らが嫌いだ。だがそれは・・・」

「同じですよ。想像が出来ないなら体験させればいい。人間、いざというほどに迫られれば決断するものです。覚悟を決めさせるのに必要なのは情報ではなく状況ですよ」

 だから全てを巻き込むことを許容しろと? ふざけるなよ!


「てめぇで責任取れねぇようなことを。俺はやらねぇんだよ‼」

「総員、配置に着け‼ 隊列を乱すな‼ 連携を意識しろ‼」

 俺が走り出すのを見て、ゴルドラッセが指揮を執る。


 3歩と踏み出すころには、ズラリと目の前に制服の壁が出来上がる。

 皆一様に槍を携え、前列は穂先を突き出して構え、後列は手のひらを見せつけ魔法の構えだ。

 横一列・・・だったら良かったんだけどな。前列と後列って言ってる時点ですでに2列。それがもう一組。計4列。

 人数はざっと40人ってところか? 後ろの10倍ってのはおかしいだろ。


 正面突破には分厚すぎる。取り囲まれねぇよう、斜めに切り込む。

 狙うは見て右端。


 全員が槍を右に持って構える以上、右端の奴は外に薙ぎ払えねぇ。そうしようとすると、振りかぶりが隣の奴に当たっちまうからな。

 それでいて背後は取られたくない。そうなると、俺を正面に捉えるために体の向きを合わせてくる。

 だが、そうすると隊列が崩れる。


 理由はそれが上官の指示だからだ。

 一列横隊。隊を横一列に並べる陣形のことだ。

 その状況で端の奴が体の向きを変えるとどうなるか?


 他の連中はそれに合わせて前へ後ろへと動かなければならなくなる。そうじゃねぇと隊列を維持出来ないからな。

 つまり、体の向きを変えた奴の1つとなりは1歩前へ。さらにその隣は2歩。左端の奴はどこまで前へ出ることになるだろうな?


 なんて、流石に机上の空論が過ぎるが・・・それでも。今までやってきたであろう訓練の大半は意味がなくなる。

 軍隊同士、軍勢同士の戦いは想定してきただろうが、個人を取り囲んで袋叩きにするような戦術はねぇんだろ? だったら派手に。かき回させてもらおうか‼

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