表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
291/960

帰る者2

「とりあえず、これ以上ここに居るとマジで豪華すぎる迎えが来そうだから、とっとと帰るよ」

「そうか。まぁそうかもしれんな。出来ることなら、つまらん結果にだけはしてくれるなよ」

「どちらにせよ、なにが変わるってこともねぇだろうが・・・俺に出来ることをやるだけだ」


 帝国の人間が壇上にあげられなくとも、他の誰かの首が飛ぶ。

 慣習が変わることはない。

 爺さんもそれがわかっているからか、過度に期待するようなことは言わず、致し方無しと言い残した。



 その後は文句をたれるジェイド達を連れて要塞を目指して歩いた。

 なんだかんだ爺さんのところを離れる辺りで日が傾き始め、町で腹ごしらえをしてからの出発。

 要塞へと辿り着くころには、茜の空に星が浮き始めていた。


「ここが・・・先生の実家・・・ですか?」

「そうなるな」


 見上げるは鉄と鋼により構築された厳めしい要塞。

 それを前に、あまりのものものしさから唾をのむヨハン。

 分厚く取り囲む高い塀と、重苦しいほどに大地に突き立つ硬い門が俺達を出迎える。


「これが人の住む建物かよ」

「軍の所有物・・・って考えれば納得は出来るわね」

「それにしても無骨すぎるのではありませんか?」

「実用を、重視してる・・・のかも」


 ジェイド達も似たような感想みてぇだな。

 まぁ確かに。明らかに軍事施設って見た目だ。ただの貴族が住むには厳つすぎる。

 だが、軍の宿舎や国境線の関所としてみれば、これほど頼もしいものは他にない。

 この国にも、他の国にもだ。


 一部には傭兵団”大障壁”の住処がいい勝負だという商人もいるが、俺はそっちを見たことねぇからな。

 ただ、役目は似たようなもんだし、見た目や中身も、もしかすりゃぁ似たようなもんなのかもしれねぇな。


「いつまでそうしているのでしょうか?」

 なんて。くだらねぇことを考えていたら、リミアに突っ込まれる。


「あれは人の手で開けられるもんじゃねぇからな。中の人間に開けてもらわねぇと」

「であれば、手早く連絡しては?」

「それについてはもう終わってる。どうせ、中でなんかもめてんだろうよ」

「なにか、とは?」


「実家から離れていた放蕩次男が、長男の領主代行就任直後に帰ってきた。お前ならどう思う?」

「・・・面倒なことになるかと」

「つまりはそういうことだ。ありもしねぇ家督争いが起きるかもしれねぇってんで、戦々恐々としてるんだろうさ。なんにも知らねぇ、関係ねぇはずの連中がな」

 こう言っといてなんだが、俺が相手の立場であれば少なくとも警戒はするし、それが上官の命令であっても一言ぐらいは物申すとは思うけどな。


 やることもなく突っ立ったまま。

 文字通りの黄昏時を経て、空が紫立ちたる頃―――。

 ギャリギャリという鉄がこすれる回転音と、ジャラジャラという鎖と巻き取る音。そして、ズゴゴゴゴッ! という腹に響く音を引き連れて、舗装された石畳を分断していた鉄塊が持ち上げられる。


「アレの下通んのかよ?」

 ビビるジェイドを置き去りに、

「気を付けろよ。挟まれたら即死だからな」

 脅かすように言い含めて先に行く。


「わざわざそういうこと言うなよ‼ っていうか、待てよ‼」

 ここで置いて行かれたら締め出されると思ったのか、慌てて俺の一歩前あたりまで出て、そこから徐々に速度を落として俺の横に並ぶ。

 俺と同時に門を潜れば潰されることもねぇはずだとか、そんなことでも考えてたんだろう。

 他全員は俺に続く形で、けどやっぱり速足で通り過ぎた。


 そこへ、

「久しぶりだな! 会いたかったぞ、ゼネス‼」

 両腕を広げて近付いてくる人影があった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ