意外な適性
「それで・・・どうする? あれの後じゃやりずらいだろうが、試してみるか?」
「いえ、やめときます。それより僕は効率のいい魔法の使い方の方が知りたいですね」
「わかった」
準備不足だとか、そもそも時間が足りてないだとか、言い訳はある・・・が、上手くいかないことばかりヨハンに負担を強いている気がする。
「なら、初級魔法でいい。水、木、土、風を撃ってみろ」
「わかりました!」
そう言って目をつぶって集中しだす。
リミアもそうだったが、目をつぶるのはそう教えられたからか? それとも何も教えられなかったからか?
目をつぶれば想像しやすい。それは確かにそうなんだが、ただ妄想するのとはわけが違う。
「いきます!」
魔法は想像の具現化だ。現実にしなければ意味がない。
瞼の裏の暗闇に思い描くのではなく、目の前に広がる現実に描き殴る必要がある・・・んだが、これは今教えるべきか? それとも後で教えるべきか?
間違いを正すなら早い方がいい。それは当然だ。
だが、一度に言ってすべてを理解できるか? なにより、お前たちは間違っていると、すでに何回そういう態度をとった?
何かを言うたびに、やるたびに、それは違うと一々言われてやる気をなくさないか? 昨日のようになるんじゃないのか?
などと、ゴチャゴチャ考えてる間にヨハンが4つの魔法を撃ち終わる。
「どうでしたか?」
「木、土、水、風の順だな。木と土の差はそれほどなかったが、土と水にはそこそこ差があった。水と風も多少差があったから、より実体がある属性の方が合ってるみたいだな」
「なるほど・・・他の属性は調べなくてもいいんですか?」
「そうだな・・・」
魔法を撃ち終わった後のヨハンは丸薬を飴玉のようになめながらも、未だに座り込んでいるリミアのように息を切らしていたりはしない。まぁ、あれは俺のせいだが・・・それにしてもヨハンが元気だ。
「余裕があるならやっておくか? 知ってて損はないしな」
「わかりました!」
スッと離れて、また魔法の構えだ。
「・・・・・・」
どうする?
さっきのことをいつ言うべきか。
決めきれないまま、火、雷、光の弾が飛んでくる。
威力は風より弱い。
先の4属性でわかっていたが、やはり実体を持たない魔法には向いていない。
下手に希望を残すよりはいいか。
と、そう思っていたところに変化が起きる。
「――うわ!」
「大丈夫か⁉」
ヨハンの闇魔法が暴発した。
まず気にしなければいけないのはリミアだ。一番近くにいたからな。
魔法の暴発は基本的に術者を傷付けない。
暴発と言えど元は自分の魔力で作ったものだ。
自分を強く傷つける想像で持って魔法を使っていなければ自爆にはならないし、そんな想像で魔法を使ったんならもはや自爆でもない。
だから、一番被害を受けるのは近くにいたもの・・・なんだが、見たところ問題はなさそうだ。悲鳴も上げてなかったしな。驚いてはいたみたいだが。
悲鳴を上げる間もなく消し飛んだ! なんてことは、そもそも初級魔法の暴発では考えられないが、まさか・・・なんてことになってなくて安心した。
それにしても、
「なにをしたんだ?」
他の属性はとても安定していた。にもかかわらず、急な暴発。
なにより、
「す、すみません・・・」
そういうヨハンは地面に寝っ転がったまま立ち上がろうとせず、空を見上げて息を荒げていた。
「さっき・・・、リミアに言っていた・・・ハァ・・・影を伸ばすイメージで、やってみたんですけど」
その結果が暴発・・・。
普通は、すでに使えていた魔法ならば多少強度が上がったり、威力が上がったりするもんだが・・・。
暴発というのは、簡単に言えば術者の想像を超えた魔法が制御を離れた結果だ。
ということは、ヨハンは闇の適性が最も高い可能性がある。
だとすれば、
「こいつはちょっと面白いかもな」
一風変わった存在に化けるかもしれない。
書いてたら予定と違うコースに走っていった話になります。
ヨハンが闇属性になりました。
そんな予定はなかったぞ?




