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side――栄光ある騎士団:ケイト&リミア

―――ケイト


”軍人には手を出すな”

 ゼネスさんに言われた通り、そうした方がいいかも知れないと思ったのは、ゴルドラッセと呼ばれた人が来た時だ。

 だって、ゼネスさんがあんなに感情を表に出して対応するなんて、絶対になにかあるに違いないから。


 皆、おんなじことを考えたんだと思う。

 話が終わるまで。誰も声を出したりしなかった。

 軍の人達に背を向けて歩き出しても、静かな時間が流れていた。


 なにか話した方がいいかな?

 様子を窺ってみた・・・けれど。

 そういう雰囲気じゃなさそう。

 皆険しい顔で、なにかを考えているみたいだった。


 そこからしばらくして、

「さっきの戦闘はそれなりによかったぞ」

 ゼネスさんが沈黙を破った。



 ゼネスさんはニアラプターとの戦闘の評価を、町に戻る道すがら話してくれた。

 皆一喜一憂してる。

 そんな中で私の評価は”要努力”


 どうしたいか。自分の意見を声に出すこと。

 それが状況判断や作戦決定で必要になるから、まずはそこからだって言われてしまった。

 それはその通りだと思う・・・けれどそれは、一番早くに私が逃げたいと思ってしまったことがバレていたということ。ちょっと恥ずかしい。


 それに恥ずかしいと思ってしまうのもまた、恥ずかしい。

 だって、そう思ってしまうってことは。緊急の時にも同じように、声に出すことを恥ずかしいと思ってしまいそうだから。


 ゼネスさんは逃げることはおかしなことじゃないと言ってくれた。

 死なないことがなにより重要だと教えてくれた。

 なのに私はまだ、それを声に出すことが恥ずかしいと思ってしまっている。


 要努力。

 その通りだけど努力だけでどうにかできるか、私は不安だ。


 でも、嬉しいこともあった。

 魔法を褒められたのだ。


 単純な威力じゃなく、効果を意識した魔法の使い方を。

 私の考えそのものを、正しいと評価してくれた。

 憧れの、その先にいるような人が。間違ってないって太鼓判を押してくれたんだ。

 魔法の効率も良くなってるって。


 それは私にとっては憧れに近づくという意味で、どんなことよりも嬉しいことだった。

 だから、もっと話を聞いていたかった。

 どうすればもっと効率的で、どうすればもっと効果的なのか。


 けれど、気付けば町の中どころかギルドの前だ。

 ギルドの中に入ればたぶん、今後の話になる。

 ニアラプターをどうするのか、試験を続けるのか。

 それが必要で、大事なことはわかってる。


 でも、もっと。魔法の話がしたかったなぁ・・・。




―――リミア


 鉄の町のギルドに戻ってきました。

「それで、私達はどうすればいいのでしょうか?」

 思い切って私は先生に聞いてみます。


「お前らはどうしたいんだ?」

「どうしたいって! そんなの決まってんだろ‼」

 ジェイドさんが反射的に答えてしまいますが、構いません。

 私も、このまま引き下がりたいとは思いませんので。


「なら、やりゃぁいいじゃねぇか?」

「・・・・・でも!」

 好きにしろ。という先生にヨハンが、

「生態調査報告書には2匹以上いる場合は推奨等級が上がるって、書いてありますよ⁉」

 私達が持つ唯一の情報源を基に食い下がります。


 そう、問題はそこでしょう。

「今回のような場合はどうするのがいいのでしょうか? 依頼を受けた時点では1匹の予定でした。ですが、蓋を開けてみればニアラプターは2匹。私達では推奨等級には足りず、かといって援護もなしでは。やはり、依頼は破棄すべきでしょうか? それとも、私達には2匹同時でも倒せる実力があると・・・そう思っているのでしょうか?」


 この依頼が破棄になった場合、最早試験のクリアは不可能でしょう。

 いくら交渉を頑張ってみたところで、新しい依頼が来るとは思えません。

 逆に、2匹の討伐ということで依頼を新しく受ける。あるいは更新となれば、交渉によってさらに条件をよくすることも出来るでしょう。


 しかし、私達にその実力があるのか?

 1匹ならば間違いなく勝てたでしょう。

 森から帰ってくる途中に、同じようなことを先生も言っていましたから。

 ですが・・・・・・―――。


 私はその表情から一つとして情報を取り逃さないように、先生の顔を見ていましたが、

「生態調査報告書をよく読んだか?」

 少しだけ笑った後、

「生態調査報告書には2匹以上同時の場合って・・・書いてあったはずだがな?」

 先生は得意気にそう言った。


「だから‼ 2匹同時の今の状況はどうなんだって―――」

「違うわよジェイド‼」

「なにがだよ⁉」

「2匹同時じゃないのよ‼ 思い出してみて? 私達は最初、確かに。1匹としか闘ってなかったはずよ?」

 早とちりしたジェイドさんが先生に食って掛かろうしたところを、エイラさんの言葉で鎮める。


 そうだ。それはつまり―――。

「誘き寄せる方法がある・・・ということでしょうか?」

「ま、そういうことだ」

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