覚え無し
「な――――‼」
ジェイドがなにかを言うより先に、俺が間に入る。
「こいつらはギルドの人間だ。俺が保証する」
「なんだお前は⁉」
急な登場に驚いたのか目を白黒させながら、仲間と目を合わせ状況を確認しているようだ。
にしても、こんなところで軍の連中と会うとはな。隊章を見る限り、間違いなくゴルドラッセの部下だ。
「グラーニン辺境伯が次男。ゼネス・C・グラーニンだ」
「はぁ⁉⁉」
一番前にいた奴の声がデカい。
若いのが見て分かることもあって、おそらく俺のことなんざ知らねぇんだろう。
後ろの連中にしてみても、同じような年齢と反応。
どうやら若手を集めた部隊みたいだ。
「やっぱどっかから見てたのかよ」
「当然だろ? それが俺の仕事だからな」
「チッ!」
俺の登場にジェイドが舌打ちをするが、まぁそう邪険にすんなよ。こいつらの相手は面倒なんだからな。
「なにか証拠はあるのか⁉ 身分を証明できるものは‼」
言葉だけでは信じられるわけがない! とばかりに言ってくれるが、俺は実家とは距離を置いてる都合上、紋章すら携帯してねぇから証拠だなんだと言われてもな。
「嘘だと思うんならゴルドラッセの奴を呼んで来い」
「な⁉ 軍団長を呼び捨てに⁉⁉」
「一々言驚いてねぇでさっさとしやがれ」
「ッ⁉ おい! 誰か! 報告だ‼」
先頭の男が振り返ってそう叫ぶと、後ろにいた連中が数名、慌ただしく走り去った。
「任務の邪魔になられては困る・・・と、そうお話させていただいたと思うのですが・・・・・・?」
「その任務とやらは特秘事項で俺は内容を知らねぇわけだが・・・どうやって邪魔するってんだ?」
顔を見るなり嫌味を言ってくるゴルドラッセ。
こっちも負けてらんねぇってんで嫌味を返しておくが、
「まぁいいでしょう。本日はまだ調査の段階ですので」
手応えはなく肩透かしにされた。
「それで、そちらの方々のことでしたか?」
「ああ。こいつらは俺が皇都から連れてきた冒険者達だ。顔を覚えておけ。下手に巻き込んだら容赦しねぇぞ?」
「身分証の提示をお願いしても?」
「お前ら。ギルドカードを見せてやれ」
それを聞いた全員が懐からギルドカードを取り出して見せる。
「満足か?」
「本当であれば、そのカードをこちらにお渡し頂いた上で、幾つか質問をしなければいけないのですが・・・ゼネス様が保証するというのならば、信じましょう。いくらあなた様とはいえ、つまらない嘘でグラン様の顔に泥は塗らないはずなので」
その言葉には引っ掛かるものがある。
「今回の任務は兄上が?」
「当然でしょう? グラン様は現在、領主代行なのですから」
御父上が現役を退いた? あの御父上が?
いや、代行ってんだからまだ領主ではあるのか。
だが、それにしても兄上が領主代行か。
「そうか・・・・・・」
「お判りいただけたのであればご協力を。決して! 邪魔など致しませんように」
「さっきも言ったが、こっちはてめぇらの任務の内容なんざ知らねぇんだよ‼ 邪魔も糞もあるか‼」
「わからないのであれば、単純に森への侵入を控えていただければ、それで結構なのですが・・・?」
「そいつは無理な相談だ。こっちにも都合ってもんがあるんでな」
無言のまま睨み合い―――。
「くれぐれもグラーニンの名を汚さぬよう。お願い致します」
「そっちこそ。冒険者には手ぇだすなよ? 冒険者を名乗る奴にどれだけ抵抗されようとも、拘束しろ。今ここの冒険者を預かってるのは俺だからな」
お互いに背を向け、別れる。
あの調子じゃ目的は探れそうにねぇな。
ゴルドラッセは厳格の化身みてぇな性格だ。秘密を漏らしたりはしねぇだろうし、部下連中にも教えてねぇ可能性がある。結局、任務ってのはなんなんだ? なにをしようとしてやがる?
兄上が領主代行になったのは目出度いが・・・どうにも、気になることばっかりだ。
だがまずは、目の前のことからだな。




