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そんな馬鹿な1

 姿こそ見えなかったが、マッターと呼ばれた男が町の南側の森へと向かったのは間違いねぇ・・・ってことで、とりあえず様子を見に来た。

 ジェイド達の方も気になるが、あいつらはちゃんと6人揃って動くだろうし、こっちの男は普段は1人じゃねぇようだったからな。なにかある確率で言えばこっちの方が高いと判断した。


 冒険者マッターへの依頼は、名物:鉄の花の採取。

 注文では量を多くしてくれってことだったな。


 俺は、ここら特有の大きく成長した棘の生えた木の上から、依頼をこなす男を見守る。

 この棘の生えた木は枝までが地上からかなり遠く、さらには幹にも枝にも棘が生えてるおかげで、下から視認されることがほとんどねぇ。工夫も気苦労もなく隠れられるのは監視としてはありがたい。

 最も。奴の依頼は花の採取。地面により近い位置にしか生えてねぇ花を採取するのに、天を仰ぐ必要なんざねぇんだから普通の木でもバレなかっただろうがな。


 そしてその採取についてだが・・・。

 男は手際よく鉄の花を採取していく。この辺りが群生地と言われるだけあってその数は結構なもんだが、それでも1面刈り取るのにそれほどの時間はかかっていなかった。

 普段から似たような依頼があったのか、お手の物ってところだった。

 これならすぐに終わるだろうし、1人で森に長居することもねぇだろうから、その後はジェイド達の方でも見に行くか。


 にしても、片っ端から刈り取って。なににそんなに使うのか? って話だが、そうか。祭りか。

 鉄の花は荊棘の庭園の名物だ。少なくとも、この国では他に生息しているといった話は聞かない。

 そのため普段は観光客が買って帰る以外には、防具の意匠や装飾として使われるぐらいで、そんな100も200も一気に刈り上げることはねぇんだよな。


 花としての特徴は全体が鉄のように硬く、厳しい環境でも育つ薔薇って感じだ。客がその珍しさを好んで旅の記念だったり、特性で枯れにくく世話が簡単で虫が付かねぇってのを好んで、ガーデニングもどきをしたくて買っていく。魔法で色の点いた光を当て続けると花びらに色が定着するのも面白がられる要因だったりするが、まぁ祭りとは関係ねぇな。


 祭りってのは年越しの祭りのことで、俺の実家があるグラーニン辺境伯領では、その中でも特別な意味を持つ祭りが執り行われる。

 大量の鉄の花はそこに送られるんだろう。戦争で死んでいった英霊達を弔う慰霊の品って奴だ。

 そう。特別な意味ってのは戦争のことだ。


 グラーニン辺境伯領は過去に帝国の領土にされていたことがある。より正確に言えば、過去帝国に奪われた北のガルバリオ皇国領を奪い返した人物に功績として与えられたのがグラーニン辺境伯領とそれを管理する爵位だ。

 領土が奪われていた間はここ荊棘の庭園こそがガルバリオ皇国の国境線だった。そして、そうなった・・・なれた理由が、この棘を生やす硬い木々と花々。

 だから同じ功労者として、戦死者達に贈られるっつーわけだ。


 本当はそんな祭りになんざ参加したくねぇんだが・・・色々といい機会だしな。利用させてもらうさ。

 なんて考えていたところに下から、

「なんだ? お前らも鉄の花の採取を依頼されたのか? でも残念だったな‼ ここはもう俺のもんだ ! とっとと別の場所へ行くんだな!」

 と。まぁ大層アホな台詞が聞こえてくる。


 いや、そんなわけねぇだろ? そう思って覗き込む。

 すると、

「別に要らねぇよ‼ 勝手に決めんな‼」

 俺の予想に反して、ジェイドがバカな台詞で返していた。

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