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魔法

「で、問題はこっからだ。なにせ、面倒な適性判断をしなきゃならねぇんだからな」

「・・・・・・悩め、と言っておきながら待つつもりもないと・・・そういうことでしょうか?」

 今にも噛みついてきそうな不満顔だ。

「別に今すぐ決めろ。なんて言った覚えはないが? 最悪、一生を左右する決断だぞ」

「それは・・・そうですね。確かに。失礼しました」

 ハッと納得したリミアだが、実際には進むべき道は決まっている。なぜなら、先に進むためには嫌でも全てをできなければならないからだ。まぁ今はまだ言わないが。

「適性判断は僕にも必要なんですか?」

「そりゃぁ、この先一切魔法を使わないつもりならいらないが、そうじゃないなら知ってて損はない」

「そうなんですね。よかったぁ」

 ホッと息を吐くヨハン見て、危機感を覚える。


 昨日はやりすぎた。だからこそ丁寧に、と思っていたが・・・明確に線引きをし過ぎたか? 自分には出来ないから関係ない。と、そう思い始めていたのかもしれない。

 これはよくない傾向だ。才能がないから出来ない。出来ないからやらない。一見、賢いように思えるが違う。重要なのは、必要なのは、それを理解した上で、自分になにが出来るか。自分がどうしたいのか、だ。

 初めから諦めてしまえばすぐに立ち行かなくなる。これは冒険者にかかわらず、すべてに等しく言えることだが、冒険者は状況によって立ち行かなくなった時点で死ぬことになる。

 それは避けたい。教育係としての責任もあるが、人としてそうあってほしくない。


 ならば、どうする?


「どうしましたか?」

 しばらく動きが止まったからか、リミアが話しかけてくる。

「言ったろ? 適性判断は面倒なんだよ。どうしたもんかと思ってな」

 などと言ってはみるが、そんなことは今一切考えてない。

「それなら私をせかした意味は・・・?」

 かすかに聞こえた文句も、悪いが聞いてる暇がない。

 離れた関心を戻すには、興味を持たせるにはどうする?

 簡単だ。楽しませればいい。

 では、楽しいとはなにか?

 この答えは人によるだろうが、理解できること、だと俺は思う。

 分からないもの。理解できないものは、目に入っても、耳に届いても、なんなら近くにあるだけで(わずら)わしいと感じるし、それらを知るためには相当な根気が必要になる。

 逆に、分かってしまえばもっと知りたいと思うし、実践してみたいと思う。それが楽しいってことじゃないのか?


 それならば。

「よし、分かりやすく・・・魔法の話でもするか」


 そう言って、10メートルほど離れた場所に魔法で的を作り上げる。

 ズゾゾゾッと魔法にって土塊(つちくれ)が集められ、人ほどの大きさになる。

「土魔法ですか?」

「あぁ。属性については流石に学園で習ったよな?」

「「はい」」

 二人がもちろんといった風に返す。

「今から見せるのは自然魔法だ。精神魔法はややこしい上に目に見えねぇし、回復魔法のためにわざわざ怪我するのもバカらしいからな」

 的に向けて手を広げ、火弾(かだん)を飛ばす。

 火弾は狙いを逸らさず土塊に飛び、()ぜる。

 残ったのは上半分が消し飛んだ土塊。


「今、俺が何をしたか・・・わかるか?」

「的を作って、的を撃った」

「それじゃぁ見たまんまだな。言ったはずだぜ? 魔法の話だ」

 ありのままを声に出すヨハンにそうじゃないなと思考を誘導する。

「これが適性の差・・・というものですか?」

「残念ながら、そこまでの話じゃない。今の二つの魔法は同じ条件で発動させた。その条件か、なんでそんなことをしたのか、当ててみろ」

 乗ってきたリミアだが、まだその段階じゃない。

 うーん・・・。と考え込む二人は真剣だ。

「ヒントはこいつだ」

 光らせた後は仕舞っていたナイフをもう一度見せる。

 そこで、

「魔力量!」

 アッと閃いたヨハンが叫ぶ。

「正解だ」

「やった!」

 喜ぶヨハン。


 いかにもわかりづらい問題を少しずつ紐解いて、ヒントを与えても最後には答えを当てさせる。

 学園時代に人気のあった教師の真似事(まねごと)だったが、意外とハマるもんだな。

「でも同じ魔力量なら、やっぱり適性の違いでああなったのではないのですか?」

 少しばかり悔しそうなリミアが言うが、

「それが間違いだって話を今からしようと思ってな」

 それより前に、話すべきことがあるんだよ。

「自然魔法ってのは、その名の通り自然界に存在するものを利用する魔法だ。火、水、土、風、木、雷、氷、光、闇・・・ほかにもあるが、わかりやすいのはこの辺りだろう」

 言いながら手のひらにそれぞれの魔法を一瞬だけ見せる。

「そして、その中にも明確な違いがある。さっきも言ったな? 自然魔法は存在するものを利用する・・・つまり」

 残った的を指差す。

「そっか。土は始めからあったから・・・」

 スッと理解して頷く。


「そういうことだ。火と水、水と雷、木と火みたいな相性もあるが、土や風みたいにどこにでもあるものを使うことで効率のいい魔法の使い方がある」

 それを聞いた二人は感心したような表情で自分だったら・・・? とでも考えているのか、少しだけそわそわしているように見える。

 にしても、ここまでコロコロ表情が変わるのは見てて中々飽きないな。

「そういう性質を知らないで魔法を使ってると、自分の適性をちゃんと理解出来ないままになることがあるからな」

 なんとか二人の興味を引けたようだし、適性の方もうまくいくといいんだが。

魔法談義はまだ続く・・・かもよ?

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― 新着の感想 ―
[一言] 先生って、大変だよね~ 教師は教科書を教えれば良いけど、先生は自らの生き様も教科書になるから
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