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変わった心境

 その場にいた全員の表情が変わる。

 ハッとした。

 囲んでいたはずの5人は退き、基本の隊列へと帰順する。

 その顔には恐怖の影が潜み、流れる汗は戸惑いを宿していた。


「なにを――ッ⁉」

 遠間から声をあげようとした教官へ、気にしないでくれ。と開いた手を示す。

 なにも、起こったりしねぇ。

 あの時止めていればなんて、後悔させるような真似はしねぇ。

 そのためにも、俺は籠手を外し、教官へと放り投げる。


「・・・・・・どういうつもりだ?」

 それを受け取った教官が、悩んだ末に聞いてくる。

「ただ。腹が立っただけですよ」

 それでも、俺にはちゃんとした答えがなかった。

 理解を得られるような言葉が思いつかなかった。



 ハッとしたのは他の誰でもない。俺自身だ。

 腹が立ったのは他の誰かにじゃなく、俺自身にだ。



 俺はいったい何様だ?

 仲間の足を引っ張って、実力不足を理由にすごすごと帰ってきた分際で。

 昔の馴染みで居場所をもらって。

 家の力を頼られて。

 導いてやってくれと頭を下げられた。

 だから勘違いしたのか?

 俺にはそれだけの実力があると。あって当然だと。

 そう思ったのか?


 自分の弱さなんざ、とっくの昔に理解してたはずだろう⁉

 認められなかったのは遠い昔で‼

 そういうもんだと飲み込んだはずだ‼

 それが・・・。


 ここに帰ってきたからか?

 自分が強くなったとでも?


 違うだろ⁉

 ワンダーゴーレムには手も足も出なかったじゃねぇか‼

 わけもわからねぇうちに! あいつが勝手に死んでただけだ‼

 あんなもんは! 奇跡的にワンダーゴーレムに殺されなかっただけだ‼

 勝った記憶も! 倒した記憶もないくせに! それが自分の力だと⁉

 偶発的に手に入れた勝利になんの価値がある⁉


 それとも、魔力の回復量が増えて舞い上がったのか?

 いずれ自分だけのものじゃなくなるであろう、ただの技術で?

 そんな馬鹿がいるかよ⁉


 なにより、どっちの時も。

 俺は最後には寝転がってたじゃねぇか‼

 なにかを成し遂げることもなく、途中ですべてを投げ出した!

 力の限り遊んでぶっ倒れるなんて、そこらのガキじゃあるまいし。


 それが誰より上なんだ?

 それで何より上なんだ?

 ふざけるなよ‼


 俺は最早、仲間もいねぇ。その意味すら歪めちまってた引退者だ。

 同等ですらねぇんだよ‼


 俺は拳を握り、魔力で固める。

 この素手の感覚は、それこそ駆け出しの頃以来だ。

 だからきっと。

 全力で殴りつけても。

 大した違いなんざ、ねぇはずだ。



「来るぞ⁉」

 盾を構えるジェイドが叫ぶ。

 自分が受け止めると言わんがばかりに。

 それをきっと、全員が期待していた。


 だが、

「ぐぁ⁉⁉」

 ジェイドは盾を構えたまま、その体が宙に浮く。

「「な――ッ⁉」」

 誰からの驚愕が重なる。


 そのまま、浮き上がるジェイドに追撃を狙うが、

「させませんわよ‼」

 いつもの調子でキューティーが割り込もうとする。

「きゃあああぁぁ⁉」

 しかし、その動きはもう何度も見た。

 身体を回転させて蹴り飛ばすことでジェイドへの追撃とする。


「いきなり、どうしたんですか⁉」

 そう言って背後に回り込むヨハンを置き去りに、

「ッ⁉ 雷槍――‼」

 慌てるケイトへ叩き込む。


「ぇうぁあ⁉」

 それを庇ったエイラが吹き飛び、

「わっ⁉ ぃやぁああああ⁉」

 ケイトもそれに巻き込まれる。


 その時、光が瞬く。

 小さな水の球が中空を漂う。

 それは音も聞かせぬうちに、針となり、降り注ぐ。


「あたったでしょうか・・・?」

 呟くリミアの眼前に闇の初級魔法が。

「――ッ⁉」

 その意味をすぐに理解したリミアが飛び退くが、

「え? きゃあっ‼」

「うわああぁぁあ⁉」

 破裂した初級魔法の中から出てきた別の魔法をまで突き破って飛んできたヨハンを避けることは出来ず、巻き添えを喰らった。


 吹き飛ばされ、盾を取り落とし、それでも尚、立ち上がろうとするジェイドを狙ったあたりで、

「そこまでだ‼」

 ガツン! と預けていた籠手で教官に、頭を殴られ止められた。

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― 新着の感想 ―
[一言] トラウマ発生器になっちゃあかん(笑)
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