表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
198/945

三度目の過ち

 筋がいい。


 っていうのはこういうことを言うんだろうか?

 ちょっとばかり手本を見せて、馬車の中で短い説明をしただけだったが、蒸気の騎乗者の動きは目に見えてよくなっていた。

 特に、サン、タン、フッチの3人はお互いに相手の動きを見て、どうしたいのかを確実に受け取り、自分の出来る範囲で理想の共有が出来ていた。


 サンが敵の攻撃を阻み、相手の思い描く最高を崩し、イラつかせ。

 タンが支援に入ろうとする敵を牽制して分断。さらに絶妙に狙いたくなるような隙を見せる。

 そしてフッチがそこを塞いで閉塞感をあたえ、ついでとばかりに手足を削って追い返す。

 3人はお互いに2歩といった狭い距離で連携している。


 動きすぎれば仲間に干渉し、それを気にすれば縮こまってミスにつながる。

 そんな難しい連携をよくもまぁあれだけのことで出来るようになるもんだ。


 フッチの前にサンとタンが左右に開いて、タンがサンとフッチに敵を割り振るように引き付ける。

 不安が残るとするならサンフッチ間だが、そこはスイを背中に抱えたホウが見張っている。

 精々3歩といった距離でスイを守りながら前を見張るホウ。

 直接敵を倒せるほどの力量はなくとも、この距離なら確実に妨害には入れる。それならば、武を修めてなかろうとなんら問題はない。


 スイは条件の悪さが気になるのかなにも出来てはないが、むしろなにも考えずに魔法を使うよりはよほどいい判断だ。

 小規模魔法の制御は得意じゃないと言っていたし、魔法使用のその後を考えて、なにもしないことを選んだんだろう。ちょっとした話だったが、覚えてくれていたようだ。


 最初は挑発よろしく自由に動き回っていた獣人共も、次第に取れる行動がなくなっていき、足が止まり始める。

 その影響か。

 俺の周りに、いや。馬車の周りにあった気配も引きずられるようにして、そっちへ流れていく。

 近付いてきやがったら殺すつもりで殴ると決めてたんで、気が抜けるが・・・まぁ話をややこしくしねぇためにも。下手に手を出さずに済んだと思っておこう。


 そこまでは良かった。

 あからさまな成長を確認した。

 狙い通りに調子良く進展していく状況に確信した。

 だからこそ、油断があったんだろう。


「あ・・・・・・、」

 声の主はフッッチだったと思う。

 サンとの間を狙われ、通された。

 無理やりこじ開けるように突っ込んできた敵に急遽、身を翻すように対応した。


 その瞬間だ。

 その瞬間、フードがずり落ちた。

 影で半ば隠れていた顔と共に、黒い髪と角が露になる。


 隠している割には余りにも管理が杜撰過ぎるだろうと、思わなくもないが・・・隠しているのはガルドナットに亜人差別があるからであって、普段から隠しているわけではないというのはサンパダから聞いた話だ。

 町での露呈は危機感の欠如だと言わざるを得ないが、戦闘という緊急時にまで徹底できるほどの練度も経験もないんだ。こればっかりは仕方がない。


 それが、突っ込んできた獣人の目に飛び込む。


 はっきりと。

 くっきりと。

 間違いなく。


 もしかしたらさっきの、

「あ・・・・・・、」

 という声は、そいつのものだったのかもしれない。


 気付いた時にはフッチの握るナイフが、突っ込んできた獣人の腹に深々と突き刺さった後だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ