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切り替えて、前を見ろ

「おっと! すみませんね・・・」

 最後まで馬車の中に残っていたサンパダを引っ張り出しつつ、

「これは・・・・・・・・・」

 全員の様子を窺う。

 それで気になったのが切り替えの遅さだ。


 商人であるサンパダは仕方ないとしても、蒸気の騎乗者の面々までもが自分達の事故や後ろに転がるもう一台に意識を割かれ過ぎだ。幾らそれが見慣れねぇ光景だったとしても。

 前方で網を張っていた傭兵の連中が律儀にも己の足でこちらまで走ってきているおかげで今はこれだけの時間があるが、ちゃんと計画された襲撃だったりモンスターだった場合にはすでに戦闘が始まっていてもおかしくはない。というか、それが普通だ。


「どうだ、戦えるか?」

 一応確認してみるが、

「ちょ、ちょっと待ってくれ・・・なにがなんだか・・・」

「・・・そうか」

 駄目だな。心ここにあらずってところか。


 一手先まで読めとは言わねぇが、その判断の遅さが致命傷に繫がるってことを分かってねぇのか。

 昔の俺もこんなだったんだろうか? いや、こんなだったんだろうな。

 いつ、どうやって変わっていったんだか、振り返ってみてもピンとこないのは”自分一人で成長してきた”と思う、子供ながらの錯覚が原因か? 恥ずかしい限りだな。


 いつかを顧みる間に。振り向く間もなく傭兵共が駆けつける。

「よくもやってくれやがったな‼」

「いい加減、大人しくしやがれ‼」

「逃げられると思うなよ‼」

 そんな風に並び立つ2、4、6・・・12人の傭兵。


 2台の馬車に乗ってきたならこんなもんか? 息が上がらないようにして走ってきたのだけは褒めてやりたい。中にはバトルアックスを担いでいる奴もいるみたいだしな。

 だが・・・・・・まぁ、いいか。

 サンパダを守れだとか、背後に気を付けろだとか、言うべきことは幾らでもあったかと思うが・・・状況が頭に入らなかったり、周りの声が聞こえない時ってのは意外と集中出来てるもんなんだ。


 だから、

「よく見てろ」

 意識だけこちらに向けさせればいい。


 どうせ思い出せなくても俺は、なにかを始める時には誰かの真似をしていたんだ。

 なら俺も、手本になるような姿を見せておけばいい・・・って、あいつらの前でもねぇのにそんなことを考えてるのはどうなんだろうな? やることは変わらねぇんだけど。

 でもまぁ、こっちもこっちで色々口出しちまったしな。


 自分の言葉に価値を、説得力を持たせるためにも、せめていいところでも見せておこう。

 ここでなにか掴めれば、帰ってからあいつらの相手をするときに役立つも知れねぇしな。

 そう思って傭兵を睨む。


 ・・・つっても、頼りねぇ連中だな。

 統一感が微塵もねぇから寄せ集め感が否めねぇし、なにより数も多くねぇ。

 これじゃ見てる側を満足させられるかどうか。

 まぁ魔力切れのせいで魔法は使えねぇから、そっちを期待されたら最初から満足なんざさせられないんだが。

 さて、どうしたもんだろうな?

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