ディーノの目的
「俺達が狙われてる理由はわかった。けど、これからどうするんだ?」
人通りの多い街中を走っている都合上、どうしてもスピードは出せない。
そんな状況のまま、気付けば後ろに2台。さらに後ろにもう2台。そして左右にも。
「迎え撃とうにもこんな街中じゃ不可能だ。乱戦になれば正体がバレるかもしれねぇし、事情を知らねぇ一般人が傭兵に味方することもあるだろうからな」
俺達からしてみれば奴隷狩りは作りものだが、その他の人間にとっては大問題もいいところで、それに対応しているのがカイオール商会に雇われた傭兵だと広く知られている。
そんな中で見知らぬ俺達が傭兵に追われているのを見かければ、正義感から傭兵に味方してもおかしくはない。
一般人だから露骨に殴り掛かったりはないだろうが、通行妨害や足止めは十分あり得る。
「っつーわけで、逃げるぞ!」
「え⁉ 逃げるのか⁉ でも・・・」
サンパダに目を向けるサン。
「そうですな。私としては困ります。なにせ、オークションがありますので。ゼネス様のご厚意によって出品も明日ということになっていますしね」
「そうですよね・・・だからやっぱり――‼」
「――ですが、」
なにかを言おうとしたサンの言葉に被せて、
「オークションの会場に私がいる必要はありません。誰かほかのものを行かせればいいのです。それについても、先ほど御者に頼んでおきました。憂いはありませんよ?」
「でも、迷惑じゃ・・・ッ⁉」
「それは確かに。全く持って迷惑な話です」
「だったら‼」
「いえ。あなた達が、ではありませんよ。こんなことを企んでくれた誰かが、です。私は自信を持って言える。あなた達のやって来た仕事に文句などないと」
その言葉に面を喰らっているのはサンだけじゃない。
他の3人も同じように驚いた顔をしていた。
「始まりこそ、ギルドマスターであるブロンソンさんに持ちかけられたからでしたが、その仕事内容に満足していなければ、続けて依頼など出しやしませんよ。これでも私は商人ですからな」
なかなかいい顔でサンパダが決める。
「それに、今回の責任はあなた達にはありませんよ? そう言われたじゃありませんか! ねぇ、そうでしょう?」
その上で、したり顔でこっちを向くんじゃねぇよ・・・ったく。
「くどいぞ。色々と」
「それは失礼いたしました。ですが、受け取りには間に合わせていただけるのですよね?」
受け取りってのは商品が売れた後の金か。
「それは問題ねぇだろ。俺とアンタの2人だけで行きゃ、向こうも手の出しようはねぇはずだ」
俺達だけなら亜人との関係をこじつけることは出来ねぇだろうし、事前にキッチリ準備していけば襲われたところでどうってことはねぇ。
「ならば、逃げる目的というのは、」
「俺達を隠すため・・・か。クソッ‼」
「今回は運が悪かったと思うしかねぇよ。亜人を使っての奴隷狩りをやってる奴がいるなんざ、予想出来るわけもねぇ。証拠でも引っ張りだせりゃ、幾らでも状況を変えられるだろうが、そうじゃなきゃ亜人ってだけで袋叩きにされるからな」
「その証拠は出せないです?」
「現状じゃどうにもな」
「ゼネスさんの口ぶりからは確信が伺える。それでも証明は難しい?」
「渦中の俺達とそれ以外じゃ、伝わらねぇこともある。なにより、獲物だと思ったからだろうが向こうは隠そうともしてなかった。自信があるのかもしれねぇ」
「それなら、僕達で奴隷狩りを捕まえるのは⁉」
「どこにいるのかが分かればな。手がかりが少なすぎる。拠点を割り出すのは無理だ」
「そもそも、なんのために奴隷狩りなんか・・・」
「それは・・・・・・、」
「それはおそらく、選挙のため。でしょうな」
言葉に詰まった俺の代わりにサンパダが答えてくれた。