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追手の狙い

「見つけた‼」

 本日2回目の魔力切れ寸前。

 ようやく蒸気の騎乗者の面々を捉えた。


「どこですか⁉」

「俺が直接行って来る! 馬車はすぐ出せる位置に止めといてくれ‼」

 動いている馬車から急ぎ飛び降りる。

 周囲では驚いたような悲鳴が小さく上がるが、知ったことじゃない。


「・・・ったく、手間かけさせやがって」

 そう言ってしまうのは何の約束もしてなかった以上、変な話なんだが・・・それでも。

 土産屋ばかりが揃う区画にいるのは流石に予想外もいいところだった。

 馬車の位置を確認しながらサン達に駆け寄る。


「探したぞ! こんなところでなにしてやがった⁉」

「そっちこそ! いきなりどうしたんだ⁉」

 食って掛かるように話しかけたせいだろう、サンが反発する。


 だが、

「話は後だ! 急げ‼」

 振り返れば、追いかけて来ていたうちの一台から、見るからに傭兵です! みたいな奴が降りてくる。


「いったいなんなんだ⁉」

「事情は馬車で説明してやるよ‼ そっちの先だ‼ 誰か、御者は出来るか?」

「そりゃ一応は出来ますがね? 元の御者はどうしたんで?」

「ここで降りてもらった。昨日言ってた通り、狙われてるんでな」

「なるほど。原因はアンタじゃないでしょうね?」

「どうだろうな? タイミングは最悪だったとは思うがな!」


 少なくとも、ホウやフッチの正体が割れれば利用はされていただろう。

 俺達は人混みをかき分けて進む。他の区画より人の数が少ないとはいえ、そこまでの差はない。

 通り過ぎる俺達への文句や怒号の後に、さらに悲鳴が続く。

 あんな見た目の奴らが必死の形相で突っ込んでくるんだから、気持ちはわからんでもないけどな。

 おかげで振り返らずとも距離がわかる。


 これなら、追いつかれる前に馬車を出せそうだ。

 そう思った通り、邪魔が入るより早く5人を連れて馬車に雪崩れ込む。


「追手はどうです⁉」

「ここで捕まることはねぇよ」

「サンパダさん⁉」


 フッチ、スイ、タン、サンの順に馬車に詰め込み、最後に俺が乗り込み扉を閉める。

 御者台に乗ったホウに合図を出して急発進。

 近くまで寄ってきていた傭兵を撒く。


「なんでサンパダさんが⁉」

「これは私の馬車ですよ? 私が乗っていてもなにもおかしくはないでしょう」

「いえ、そうじゃなくて⁉ どうして一緒にいるんですか⁉」

 サンとしては狙われている状況に守るべき対象がいるってのが理解できないらしい。


「御者の人と一緒に逃げて貰えば――」

「――で、捕まったらどうするんだ? 顔が割れてるどころか、予定まで丁寧に調べてきた相手だぞ? 人質に取られたらどうする? 一緒にいる方が安全なこともあるんだよ」

「そ、そうか・・・そう、だな」

「本来守るべき相手を差し置いて狙われることなんざねぇだろうから、無理もねぇけどな」


 実際、かなり特殊な状況と言える。

 俺達はダシにされようとしてる。

 奴隷狩りはカイオール商会が用意した茶番だった。

 ガルバリオ皇国との繋がり、冒険者と言う立場、なにより亜人という事実。それらが地固めにうってつけだからってんで、口封じのついでに都合よく使おうっつーわけだ。


「僕のせいだ・・・ッ‼ 僕が、油断しなければ・・・‼」


 俯くフッチが拳を握り、怒りのこもった声で自分を責めるが、

「いや。私はゼネスさんの責任だと聞いた」

「スイもです!」

 タンとスイの2人が言う。


「一応、誰に聞いたか確認してもいいか?」

 その問いに2人は御者台を指差す。

「・・・まぁ、そうだよな」

 ホウがなんて言ったかまではわからねぇが、別に嘘ってわけじゃない。


 もし、俺がいなけりゃ今日のことはなかったし、口封じまでは思わなかったかもしれねぇ。昨日も油断なんかしなかったかもしれねぇ。

 それなら亜人であることがバレることもなかった。

 冒険者にもしなんてねぇが、俺がここにいるのは個人的な理由で俺がサンパダに泣きついたからだ。

 そういう意味で責任というのなら俺にこそあるだろう。


「なら、責任者としてなにがあったか説明するからよく聞いてくれ」

 くだらないカイオール商会の企みについて話す間に、またもや後方には黒塗り2頭引きの馬車が。

 しかも、なんかどんどん増えてってねぇか?

 右や左にも。建物の隙間から、見るたびに現れる。

 これは、囲まれる前にどうにかした方がよさそうだ。

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