協力
「・・・・・・簡単に言ってくれますねぇ。それを俺が信用出来るとでも? それになにより。奴らの言ってたことは、狙われるとかそんな大層な話じゃねぇでしょ?」
「別に信用なんざしてくれなくていい。利益を取って協力しろって言ってんだよ」
「だとしても、すよ。奴隷狩りが俺達になんの関係があるってんですか? 確かにこの国にとっちゃ大問題かも知れねぇすよ。戦争になるかもしれない。けど、それで俺達が狙われるなんてことにはならねぇはずだ‼」
奴隷狩り。
あの傭兵もどき共はその対策として、この国の豪商に雇われたと言っていた。
行っているのは亜人。標的はガルドナットの国民だ。
だから、あの傭兵もどき共はフッチを見て”敵”と呼んだ。
亜人連合や帝国のような大国には奴隷制度が残っている。そのせいで、この手の問題はよく出るんだが・・・ガルドナットでは珍しい。
理由はとある傭兵団のおかげだ。
名は”大障壁”
ガルドナット建国の時に連合との間に馬鹿デカい砦を作った大傭兵団。
南の霊峰を含めた山脈ハードラインの麓から海沿いまでの狭い陸地に通じる道だけが、連合とガルドナットを繋いでいた。
大障壁はそこに砦を作って、ガルドナットと取引をした。
何人たりともこの道は通さん。代わりに金を寄こせ、と。
ガルドナットは今まで貿易国家としてその代金を稼ぎ続け、大障壁もまた、仕事を全うしてきたはずだ。
だってのに、ここにきて奴隷狩りが横行してる?
しかも、その対応に使われてんのが冒険者じゃなく傭兵なのはなんでだ?
元から大勢いるはずの冒険者を使わず、わざわざ傭兵を集めることに意味があるのか?
どうにも引っかかる。
「あいつらの言ってた事に嘘はねぇだろうが、全部でもねぇだろ。それに、狙われる理由はわかってるはずだ」
「わかりませんねぇ! 俺達が狙われる理由なんて・・・」
「亜人だから」
「それだけで狙われるってんですか? ましてや、まだバレてもねぇってのに――」
「もうバレただろ?」
あの場ではうまくごまかせた。
だがそれは表面だけ見れば、だ。
一部始終をきっちり見てた奴には通用しない。
「なにを根拠に・・・」
「勘だ。けど、考えてもみろ。あの程度の傭兵が雇われてるってことは、数だけは揃ってるってことだ。他の傭兵があの場に居てもおかしくはねぇ」
「勘だけでそんな言われても、ねぇ?」
「だがそうだった場合、確実に狙われる」
「なぜです?」
「言っただろ? 亜人だからだ」
「それだけで?」
「差別や迫害なんてのは、そんなもんだろ?」
「・・・・・・」
なにをやったとか、どんな人物なのか・・・なんてのは関係ない。
どんな存在か、なにを信じるか、どんな見た目か、なにを願うか。
ありとあらゆる一面をあげつらって、そのうちの1つでも該当すれば悪になる。
差別、迫害、排除、根絶。
それらは・・・場が整っていて条件さえ合えば、それだけでいいんだ。
ホウにだってそれはわかるはず。
「途中の町での反応も、こことそう変わらねぇもんだった。っつーことは、奴隷狩りの規模は相当デカい可能性がある。その関係者だ、なんてことにされれば・・・」
「生きて帰れる保証はねぇ・・・すね。ああ‼ クソッ‼ なんでこんなことに⁉」
「さぁな。たまたまか・・・あるいは・・・」
誰かの指金か。
「・・・はぁ。わかりましたよ‼ 仕方ないんで協力もします‼ けど、信用はしませんからね‼」
「それでいい。必要なのは協調だ」
「それで? 俺は、俺達はなにをすればいいんで?」
「そうだな。まずは・・・・・・情報だ」