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進行

 ここ、首都ガルドナットは広い。

 そして、どこも見た目が同じように作られている。


 広場を中心に背の高い建物が敷き詰められ、その眼前に各種の店や屋台が並び立つ。

 それらの奥に構える建物も1階はほとんどが店になっていて、ここに集まる連中はいったいどこで寝てるんだかという程だ。


 そんな中、迷わないための目印は建物から建物へと渡された紐とそこに結ばれ垂れ下がった旗。その傍の色によって区画を判断出来るようになっているらしい。

 広場同士を繋ぐメインストリートには2つの色の旗が交互に吊られていて、案内板にはご丁寧に行先の情報以外にも、色による特色の違いが書いてあった。


 見世物ばかりだったあそこは赤。食事処は黄色で歓楽街はピンクのようだ。わかりやすいな。

 俺達は赤からピンクへ、そこから黄色へ移動して気になるものをそれぞれ買って回った。


「これ・・・なんなんです⁉ とてもおいしいです‼ でも謎です‼」

「よくそんなの食べれるね?」

「あんまりわけのわからんもんを食べて腹壊すのは勘弁すよ? 治療はしないんで」

「うぅ・・・でも、止められないです! おいしいです‼」


 謎の揚げたものを頬張るスイは笑顔だったり悩まし気だったり。抱えてる箱のシルエットとにらめっこしながらも食べるのをやめない。

 フッチもホウも、それを見て苦言を唱えるが・・・その手にはしっかり謎の食い物を握っていて。


「ほら、こっちにしたらどうだい? おいしいよ?」

「こっちも悪くないと思うんすけどね? どうすか?」

「2人のも謎です‼ それならスイのも食べるです‼」

 そんなことを言い合いながら、手に持ったものを押し付け合う。

 おいしいだのおいしくないだの。


 だが、気付いてるか?

 これも、意見のぶつけ合いだぜ?

 それをそんなに楽しそうにしておいて・・・なにがそんなに怖いんだか。


 ふっと、周りを見渡す。

 溢れかえる程の人波。けれど、人種も性別も統一感などまるでない。


 この国の人間もいれば、俺達の国の人間もいる。他の国の人間も、西の大陸人も、北大陸からの奴も探せば見つかるだろう。

 周りの屋台だってそうだ。どこの国のなんて食い物かもわからねぇが、好き勝手に主張して、それでも。

 ちゃんと一つの町になっている。

 だから・・・。


「そんなところでなにしてるです? 次はさっき通ったところにいってみるです‼」

「ちょっと⁉ そんな先に言ったらはぐれますって‼」

「早く行くです‼」

 走り出すスイはピンクの旗を指差していた。

 腹を満たして、どうやら今度は歓楽街に目を付けたらしい。通った時になにか気になるもんでも見つけてたか?


 途中に歓楽街に寄ったのは、直接食事処には行けそうもなかったからだ。

 いや、メインストリートから外れて路地を行けば辿りついたかもしれねぇが・・・やめておいた。はぐれる確率の方が高そうだったんでな。

 まぁ、歓楽街も昼間ならそこまで教育に悪いもんもなかったし、大丈夫だろう。あからさまなのもないわけじゃなかったが。


 先走るスイとそれを追いかけるホウ。

 気付けば再び、隣にはフッチが。

「それで? 一人離れてそんなところでどうしたんだい?」


 いつの間に・・・ってほどじゃねぇな。人の流れに沿って左前から通り過ぎる人の後ろにピッタリ張り付いて、俺を通り過ぎた瞬間に後ろをまわって右側に。

 それだけだが大したもんだ。

 通り過ぎる人間、俺の後ろの空間、右側に同じ方向への流れがあること。これらを全部一瞬で判断したってんだからな。


「なんの用だ?」

「君はそればっかりだね?」

「余計なことはするなって言われててな」

 少し前を行くホウを顎で示す。あんまり離れないようにしながら。

「なるほどね・・・それでも、知りたいことがあるんだ。いいかな?」

 上目遣いで、試すように。


「君は初めから、ナイフの扱いがうまかったのかい?」

「そんなわけねぇだろ? ま、下手ではなかったけどな」

「だったら、君はナイフの扱いを・・・・・・誰に習ったんだい?」


 なんだ。聞きたいのはそんなことか。

 凄みを出すからもっと別のことかと思ったじゃねぇか。

 それこそ、ホウが恐れるような重要なことかと。


「誰って・・・」

 答えようとして、

「そういや、名前は知らなかったな」


「・・・ふざけてるのかな?」

「いや? 本当に名前を聞いた覚えがねぇんだよ。俺は通り名で呼んでたしな」

「通り名?」

「ああ。個人S級の一人。通称”ヒドゥンソード”。そいつが俺にナイフの扱い方を教えた」

「・・・聞いたことないな。どんな人なんだい?」

「どんな・・・って言われてもな」


 パッと見じゃ男か女かわからない端麗な見た目で、その癖随分と長く生きてて、人をおちょくるのが生きがいで、捉えどころがなくて・・・あぁ、でも。


「ちょっとだけお前に似てるな」

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