side―ホウ&フッチ
――ホウ
意見がぶつかるのは当たり前?
そんなのわかってるんすけどねぇ‼
それが出来ねぇから、目を瞑ってやってきたんですよ‼
正論なんてのはどんな時だって役に立たねぇもんなんすよ‼
これは俺達の問題なんだ。
だから、知らない誰かに割って入られたくなんかない。
けど・・・。
なにもかも、全てを許せたら?
そう考えないわけじゃない。
我慢も、秘密もなく、思うことをそのままぶつけ合って、その上でわかり合えたなら・・・。
いいや、そんなのは幻想だ。
実際そうだっただろう?
心の中にいるもう一人の俺が囁く。
このパーティーに入るまで。信用も、信頼もしなかったし、させようなんて思わなかったはずだ。
なぜ?
それは・・・・・・。
耳をなぞりながら過去を振り返る。
碌なもんじゃなかった。
誰にも必要とされず。何者にもなれず。行く宛ても、帰るべき場所もなかった。
毎日を生きるのに必死で、明日のことなど考えないようにしていた。
盗めるものを盗めるだけ盗んだ。
金、物、技術に、知識さえ。
そうやって流れ着いた先で、ようやく・・・迎え入れてくれる仲間に出会った。
なにも聞かずに手を差し伸べてくれた。
俺の秘密を知っても、何も言わないでくれた。
仲間であり続けてくれた。
そんな仲間の手に縋りついてなにが悪い⁉
遠からず破綻する?
させねぇよ‼ そんなこと‼
俺が、なんとかして見せるさ‼
この今の、今までのパーティーを守って見せる‼
すまねぇな・・・スイ。
あの人はわかってくれる。仲間だ! って力説してくれたが・・・。
どうやら俺にとっちゃそうじゃないらしい。
ぶつかることがすべてじゃない。
逃げることだって・・・。
だから、上手くやれなくっても目を瞑ってやってくれ。
――フッチ
見られた⁉
顔を・・・いや、角を見られたかもしれない‼
それは駄目だ‼
僕が亜人だということは知られちゃいけないんだ‼
ああ⁉ どうして・・・・・・。
違う。
理由はわかってる。
『君は本当に真っ直ぐだねぇ。もっと遊んでみたらいいのに・・・。じゃないと、いつか捕まっちゃうよ?』
これは僕の師匠の言葉。
どうやって生きていけばいいか、わからなかった僕に。
短剣の使い方や色んな知識をくれた師匠の言葉だ。
それと同じようなことをあの人が言うから・・・。
だから呆けてしまったんだ。
最悪だ‼
ここガルドナットは亜人差別のある国。
街でも大きな騒ぎになってた。
もし僕のことを告げ口されたら、パーティーの皆も・・・⁉
ならいっそのこと‼‼
いや・・・駄目だ。
たぶんあの人には気付かれる。
襲っても返り討ちに合うだけだ。
さっきのだって、気取られるつもりはなかった。
なのに、こっちを見ることもないまま声をかけられた。
もしかしたら、僕だってことも初めからわかっていたのかもしれない。
じゃぁどうすればいいんだ⁉
このままなにもしなかったら僕は⁉
――でも、スイは言ってたな・・・。
味方になってくれる。いい人だ! って。
本当かな?
本当だったら・・・って、駄目だ‼
スイはまだ小さい。
誰にでも優しくしてもらえるんだ!
僕だって身長こそ似たようなもだけど、生きてきた時間はもっと長い。
甘く見てもらえるわけがないんだ。
それどころか‼ もしかしたら、スイを使って僕らのことを調べようとしている可能性も⁉
やっぱり駄目だ‼
油断できない!
こうなったら・・・僕自身で確かめよう‼
それに、最後に言ってたことも気になる。
だって、あんなの。
『いいのかい? コレはもっともっと、奥の深いものなんだぜ?』
師匠が諦めそうになっていた僕に言い放った言葉と、あまりにも似すぎているから。




